@bk__at
2/28(日曜)20時すぎ
目が覚めたらそこは、いつもの天井だった。
驚いたように飛んできた家主が語るには丸二日寝込んでいたらしい。
体は激しく怠く、所々から激痛が走る。
ハッとして詰め寄った。
半居候先の家主、樒は依頼の件については知らされていないのか多くは語らず、安心したようにキッチンに戻る。樒の得意料理…得意材料の白滝の香りがする。
残された白髪は咄嗟にスマホの画面を開き、依頼人へ通話を掛けた。
コールの直後、相手の声に被せた第一声。
「……どうなった!?」
何一つ報告しなくとも全て知っていそうな通話先の男が、ゆっくりと話し出した。
『…なんのことだろう?』
優しくも強かな響き。
バレて、いるのか…?己にとってはよくないトーンである気がする。
でも、もしも何も知らなければ…。
『何か、やらかしたのかなァ。全部話してごらん?』
「……っ、…おぼえて、ない…」
思ったよりも声が詰まる。
サクッと潰そうとした犯罪グループに容易に拉致され、何があっても絶対に食べるなと言われた飴を食べさせられ、法に触れる年齢の少女を生ハメレイプさせられそうになり、挙句殴る蹴るの大暴れが異常に楽しかったことだけは、正直覚えている。
その後を覚えていないのは本当だ。
『じゃあ、どこまでなら覚えてる?』
「…ん゛…っ……」
変な音が漏れてしまった。
この男は人の心でも読めるのだろうか。
居心地が悪く視線を逸らすように逃がすも、通話では何の効果もなかった。
スピーカーから柔らかな笑気。
怒って、……ないのか………?
『久しぶりに会って話そうか。君の顔も見たいしね?』
会って話すほどのことがあるのか…。………まぁ、…あるか………。
「わかった…、いく」
どこがどうバレたのかは分からない。しかし、こっちにだって言い分はある。
証拠だって………、証拠!?
予想外の流れにバクバクと心臓が鳴る。
犯罪グループを程々に潰した後、完全にその場に相手を呼び出せばどうにかなると、どうにかしてくれると思っていた。
『おっけー、じゃあ、君の都合の良い日に』
まずい。非常にまずい気がする。これは腹を据えるしかないのか…。
「…わかった」
逃げるわけにもいかず、答えてから通話を切る。
何が待ち受けているのか己には想像もつかない。
殴られた男たちが警察に…行けるはずがない。しかし依頼人にバレるとまずい事は山ほどある。
いやでも怒ってはいなかった…?…いや……。
…俺の功績はどうなったんだ。少しは称えられていい筈では。
暫く考えた後、メッセージにて「翌日、月曜の夜」に会う約束を取り付ける。
通話でこれほど声が詰まるなら、場合によっては息が止まってしまうかもしれない。
しかしまだ決着のつかない一件を競い合っている情報屋に零すことも出来ず。
悶々とベッドに伏し、どうしようもない心地を「痛い」と表現しスマホに打ち込んだ。
秋月視点へ続く>>
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