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赤い石

全体公開 その他色々二次創作 2047文字
2021-03-21 21:12:16

宝石とヴィクトルと十四代目
1時間ぐらいで「宝石」というキーワードで書いたやつです おそまつさま

Posted by @syuu_29

「おお、ガーネットの――クズ石ではないか。これでは結果を保証できんぞ」
新月、ゾロ目の合体回数――魔力の高まる条件を満たした結果、おかしなテンションで宝石を要求してきたヴィクトルにガーネットを渡したというのに浮かれた熱は一瞬で冷えてしまったらしい。
『おい待て合体は――
ゴウトの声などまるで無視だ。ヴィクトルはやめだやめだと機械の電源を落としてしまい、悪魔を入れた檻を釣り上げる鎖を引き下ろし始めた。
「まったく葛葉――どこでこのようなものを掴まされたというのだ。悪魔にもらった? は、舐められたものだな。これでは二束三文にもならん。だいたい魔力だってほとんど蓄えられておらんではないか。他にない? おい、宝石の一つや二つ、余分に持っておくべきであろう。デビルサマナーであろう?」
『くず石とは聞き捨てならんな。れっきとした宝石だろう』
「宝石ならすべて価値があると? 馬鹿な。宝石は媒介なのだぞ。不純物が多くていいわけがあるか。お目付け役ならお主が気をつけてやれ。そのうち模造品を掴むことになるぞ」
物を知らん奴らだなとヴィクトルはたいそう呆れた様子で檻の鍵を開ける。中にいたライジュウとイッポンダタラも顔を付き合わせて困惑しているが、鍵を開けた男に説明する気はまるでなさそうだった。
つい先ほど今生の別れと信じて別れの言葉を伝えてくれた仲魔への言い訳は後回しに、ライドウは長くなりそうなヴィクトルの説教を優先することにして二体を管に呼び戻した。呆れ返ったように作業台側にある引き出しを漁り始めた業魔殿の主人へ向き直るが、ヴィクトルはなかなか顔をあげない。何を探しているのかは想像もつかなかった。だいたいその引き出しから物を出すところを見るのははじめてだ。何が入っているのかあてることなどできるわけもない。
「まあいい。お主らはあまり宝石と縁がなさそうだ――いや、この国ではあまり魔術に馴染ませておらぬからしかたがあるまい。だが我が輩もこのようなことが繰り返されるのは困るので教えてやる――うむ。これだ。いいか、葛葉。悪魔というのはいつだって狡猾なのだ。それに皆が優れた審美眼があるわけでもない。あまり鵜呑みにせず鑑定眼を養え――おぬしのところならリャナンシーにでも聞いてみろ。模造品なら見抜くであろうよ。価値のあるものがわかる悪魔だ。それか雷電属の――神性のある者を選ぶといい」
『ほう。お主ずいぶん自信があるのだな。ルーペで見てもいないだろう』
「見るまでもない」
ヴィクトルが作業台の上に取り出したのは天鵞絨貼りの平たいケースだった。開かれた蓋の内側には光沢のある柔らかな布地。絹であろう。そこに納められているのはいくつかの宝石で、ライドウが渡した柘榴石とそっくりのものも並んでいた。どれも業魔殿のあやしくも薄暗い光源のなかで複雑に輝いて見える。
「我が輩のストックだ。お主のよこしたものとはまるで違うであろう」
「悪いがわからない」
「輝きをみろ。色味もまるで――ええい、手にとって比べて見るがいい」
くず石だと言い捨てられた石を雑に放られてライドウは咄嗟に掴んだが、手のひらの石と、天鵞絨の上から取り上げた石の違いはじっと見比べたところでいまひとつわからない。どちらも深い赤で、美しくカッティングされているようにしか見えない。大きさは違うが、大きさの問題ではなさそうでもある。だいたい、本物だというほうがすこしばかり大きい。
しかし同じに見える、と繰り返し言うのも憚られてライドウは、作業台に飛び乗ってもっとまじまじと宝石を見つめる目付け役をじっと見た。だが黒猫はマグネタイトの輝きを漏らす緑の瞳でそれらを胡乱げに見つめてから『どれもマグネタイトより暗いことしかオレにはわからんな』と不愉快げに言うばかりだ。ふんふんと鼻先を近づけてはいるが、とくにこれといった収穫はなさそうだった。
生命創造と不死――それ意外の興味はないと言うわりに、業魔殿の主人は知識の幅が広い。だが自信がなければ大事な研究成果であり飯の種とも言えるはずの悪魔合体で扱うこともないのだろうと思うと、宝石に関してもいい加減なことを言うわけもないだろう。であれば、自分が悪魔にもらった石はヴィクトルの望みに満たないことだけが確かなことだ。
納得していないような目付け役をライドウは「ゴウト」と名を囁いてから腕の中に抱え込み、代わりに区別のつかない赤い石をふたつとも作業台の上に返却した。
「わかった――今度は仲魔に見てもらってから寄る」
「おいクズ石はいらんぞ」
「もう見分けがつかない」
ライドウは「出直す」と背を向けた。
あの赤い石をヴィクトルがあのゴム手袋でつまみ上げるのを見るのを想像するのはなんとも言えず興味深く思えたが、かといって振り返るまでもない。まるで血の雫を鑑定するようだと薄く頭によぎりはしたけれども。
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おまけ:雨の日の客 https://privatter.net/p/7215589


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