レゴSWホリデースペシャルがおれに見せた幻 アナオビです
@syuu_29
初対面だというのに、カウンターの向こうの客には妙な親しみを覚えた。ちょっとした仕草や言い回しに愛嬌を感じるのだろう。この老人と話していると、妙に胸の内が穏やかになったような気さえする。胸の内に生じた疑問を、照れくさい話をしたからかもしれないと頭の脇に追いやる。
修理を頼まれたのは携帯用の録画再生端末だ。二十年ほど前の、それも簡易版といっていいようなモデル。買い換えたらどうだと言えば、移したデータが引き出せないからと断られた。
とにかく電源が入るようになればよいと言うのでその場で開ければ、内部には砂埃が入り込んでいて、そのせいか電源部まわりの線が焼け焦げていた。
修理の確認に再生はしなくていいと言うので何が入っているのかは知らないが、線をつけ直しただけで金を払うというのだから割りのいい仕事だった(なにしろ要件を聞いてノークレーム・ノーリターンだと繰り返せば、先払いにしようかとクレジットを出してきたぐらいだ)。
大した時間はかからないと言うとその場で待つというので道具を並べ、雑談をした。それだけ簡単なことだと言えばなぜか微笑まれた。
「しかし仕事道具をプレゼントとは、親孝行な息子さんだ」
「まあ、否定はしない。店も手伝ってよく働いている。昔に比べれば随分大人になったよ」
もっとちびの頃は肩たたき券だったがと言えば「どこも同じようだな」と老人も笑った。
老人といっても顔は目深にかぶったフードの影が色濃く落ちて、目より下しか見えない。指先にも思いの外皺がない。口元の髭が白髪混じりなので老人であろうと思ったのだが、こうして声を聞いているとそれほど年嵩でもないのかもしれなかった。
「あんたはどんなものをもらった事が?」
聞けば髭面はクレジットを取り出して静かに礼だけを述べた。
「――修理をありがとう」
言葉にしようか悩んだのかもしれない、と後になって思うような、そんな間があった。
いつの間にか、ライフデーという文化が広まっていた。銀河中のあちこちで家族などの親しい人とのんびり過ごし、日頃の感謝を伝え合う一日。
日々戒律を重んじるジェダイ聖堂でも、似たようなイベントはあった。
ベアクランたちにはマスターたちからささやかな贈り物を。パダワンなら自分のマスターに。
もっとも、物への執着を良しとしないことから物の贈り物は珍しかったが、皆無ではなかった。知識を贈る、花を贈る、景色を贈る――一人前に近づくほど仕事の補佐のような事柄に変わり、プレゼントらしさを失っていくのが彼らの常だったけれど。
彼自身も様々な贈り物をした。日頃の感謝など贈っても送り足りないぐらいに持っていた。そして与えられもした。
あるとき贈られたマグカップにはなかなかこそばゆい事が印刷されていた。それから文字に囲まれているのは自分の横顔で、その見慣れた筆致はパダワンの絵だ。銀河でこれ一つしかないことは明らかだった。
デザインセンスがある、などと照れがわずかに意識を逸らしたが、プリントされたメッセージは“銀河で一番のマスター”。
それは思い出す度にこそばゆく、しかし誇らしい言葉だった。自分がそうありたいという祈りのような願いが、物質となってそこにあった。
そういう思い出があった――かつての銀河の中心の、もはやない小さな一室に。
今やジェダイは滅ぼされ、ほとんど伝説扱いの今でさえ帝国の懸賞金がかかっている。
呪わしいことに、かつての弟子がその引き金を引いた。
それでも、かつては銀河で一番のパダワンだったのだ。それは覆せない。その手が犯した罪でさえ覆い隠せないほど、眩しく遠い確かな過去だった。
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MayThe4thDay2021!で何か書きたくて書きあぐねて遅刻しました
でもレゴ ホリデースペシャルが悪いんだよ。ベイダー卿が「銀河で一番の皇帝」マグカップを贈るセンスならパダワン時代に「銀河で一番のマスター」だって贈ってると思う。そういう話です。おそまつさまでした。
なお移せないデータはLetter From Homeという同人誌で書いたアナキンからのメッセージというつもりで書きました 重ねておそまつさまです…