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瓶詰めの魔法使い

全体公開 3 1005文字
2022-07-23 20:41:25

遠い未来のモブが、古い小さな施設で見つけた小瓶と、
小瓶の中身を口にした時、見えたものたちについての短文。
それぞれ、誰についてのものかは明記されていません。

(賢まほ全員分がある設定でもないのですが、
 4枚しかアップできなかったのは準備不足です、すみません)


短い螺旋階段の先は、小さな地下書庫だった。
ずいぶん昔にはこの建物はもっと大きく、立派な図書室をも備えていたらしい。が、今や往時をしのばせるものは、外壁の遺構くらいである。何せ、年に一度の祭祀のための資料が収められているだけだ。半ば伝説に足を突っ込んだような場所なのだった。
手持ちのライトで照らし出せば、壁一面に造りつけられた書棚はすっかり埃をかぶっている。ほとんど出入りのない場所なのに、どこから埃が発生するのかとぼんやり思う。
祭で使用される「賢者の書」という古書を持ち出すのが目的なのだが、スコープに映し出される配架図は、微妙に現状と食い違っている。ざっくりとあたりをつけて、あとはもうとにかく探すしかないだろう。
ふと、仰々しいかんぬきのついた箱が目にとまった。全集ものがおさめられているとして全10巻ほどかと思われるサイズだ。何の気なしにつまみを引いて蓋を開けた。
書物ではなかった。並べられていたのはガラスの小瓶だ。光にあたってキラキラするのは、ガラスの質だろうか、中身だろうか。興味を惹かれて顔を近づけたその時だった。箱のどこかからするりと姿を現した手帳が、目の前にぱたりと開かれた。まるで、読んでくれという意思をもって身を晒したかのように見えた。……本当に?
目に映ったのは、ずいぶん古い手書きの文字だった。とはいえ、読めないほどには古くはない。学生時代、古典は得意だったのだ。
レシピのようなものがいくつか記されている。瓶の中身を使うように読めた。しばらく迷ってから、数本見つくろって、先程の手帳と一緒に鞄に入れた。
くだんの祭祀は千年以上も続くものだが、もうすっかり原型は失われていると聞いている。ほんの一部分でも古いかたちを取り戻す手がかりになれば、という一心だった。
祭祀用の特別なレシピかもしれない。瓶の中身がハーブやスパイスの類なら劣化しきっているだろうが、塩のようなものであれば、まだ使える可能性もある。

実際には、レシピはありふれた菓子や飲み物のものだったし、瓶の中身は甘く、ひと瓶ごとに異なる不思議な情景を見ることになるのだが。まだそんなことを知る由もなかったのだ。







とある手記(小瓶と一緒にしまわれていた手帳の最後のページ)
https://privatter.net/p/9099335


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