主にキャラの深掘り。
@KurashikiRyo
CoC6「かいぶつたちとマホラカルト」にて作成した探索者「マーシャ・メイリー」に関連する深掘り投稿まとめ。
関連:かいぶつたちとマホラカルト関係まとめ ( https://privatter.net/p/9742457 )
※作成時の設定は「かいぶつたちとマホラカルト関係まとめ」にあります。事前に読んでおくのがおすすめ※
■マーシャ・メイリー

■シナリオのネタバレなし
・マーシャ・メイリーの表の顔について 2≫
・???「これは愚痴なんだけど、ある父親の話をさせてくれ。」 3≫
・マーシャの性自認について 4≫
・投資家と魔女の会話、そして投資家の思い 5≫
・マーシャの小さい頃をイメージした画像 7≫
・AIと加筆修正で作った画像 9≫
■シナリオのネタバレあり
・マーシャが仲間たちのことを思う話 6≫
・父の日の話 8≫
マーシャの表の顔は「会社勤めのWEBコンサルタント」。会社自体は実在している。ただし、森という人間が働いてることになってるのは投資家の根回し(違法)によるもので、実際のマーシャとは一切関係が無い。
これは愚痴なんだけど、ある父親の話をさせてくれ。
あぁ、父親と言っても私のではないよ。実業家「M」の話だ。彼は日本においてかなり有名人で、実に40年以上も大企業の社長としてビジネス界に生きる剛腕な人物だ。
彼には息子が3人居る。そのうちの長男と次男もまた、極めて優秀な経営能力を持っていて、父親と連携して事業を拡大し続けている。彼らに関してすごい点を述べれば1日では語り尽くせないだろう。
ん、では三男は……? そう、三男が問題なんだ。
言ってしまえば、兄2人が優秀だった時点で「M」とその奥様にとってもう子供は要らなかった。なら子作りするなよと、このあいだ私は言ってやったが……何はともあれ、大変迷惑なことに、彼らは三男を産んだんだ。
この三男は、ただ生かされたようなものでね。何をしても許されたけど、両親には全く愛されなかった。特に奥様なんかは、三男をほぼ居ない存在として扱っていたようだ。
あぁ、兄たちは彼らなりに気にかけてはいたけれど、父親の厳しい教育の中で三男に構える余裕は少なかった。
必然、三男は孤独に生きることになってしまった。酷い話だろう? ところが、人情というやつは不思議なものでね。
三男が成人した頃、「M」は私に、なんと三男の面倒を見るように依頼してきた。それも、依頼で接触してると悟られないようにしろって、大金を積んで言ってきたんだ。
何言ってんだこいつ。正直そう思ったし、口にもしていた。
「あなたが見ればいいじゃないか、なんで私に依頼するのさ」
当然の疑問をぶつけたけれど、彼は、イエスかノーしか聞く耳を持たなかった。私は憤慨したね。ふざけるなよと。面倒を押し付ける気かと。
まぁ、金額が金額だったんで迷わずイエスで答えたのだけど。
インターネット越しに三男と接触してみたのだけど、想像以上に“酷かった”。恐ろしかったよ。成人した人間が、あんなに素直で、悪意に疎くて、人との関わりが下手で。優れた実力があるのに、良いように安値で利用されて、悲惨なものだった。
頭を抱えたものさ。なんてものを押し付けたんだ、と。
それはそれとして私は大変優秀なので、“彼女”を一流に引き上げてみせた。見る見るうちに大金を稼ぐようになり、いずれ、「M」の元から離れる夢を叶えてみせた。
……あまりにも社会の常識を知らなくて、大半の手続きを私が代理でやってあげたけどね。どう育てればあそこまで“檻の中のお姫様”になるんだ??? ありとあらゆる地獄を知ってる私でも、あんなお姫様は初めてだったよ。
本人も危機感を覚えたようでいろいろ勉強はしているけれど、努力ではカバーできない範囲が大きすぎた。だから、大部分を私が管理してあげている。
サービスが手厚すぎるように見える? ははは、私も彼女を利用してたくさん工作してるから大丈夫だよ。お釣りが山ほど来ている。便利なんだ、彼女。
ま、それはそれとしてさ。
一通り三男の話はできたから、父親の話に戻そう。
彼が私に「三男の面倒を見ろ」と依頼したのは、育成方針への後悔からだろうか? いやいや、彼はそんなことで後悔なんてしない。むしろ自分の育成には誇りさえ持っているような人間だ。罪の意識さえ欠片も無い。
じゃあ実は三男を愛していた? これはちょっと難しい。1ミリも愛していなければこんな依頼はしてこなかったかもしれない。
だけどさ、今の今まで一度も自分では面倒見なかったんだよ。なんなら彼女が“彼女”であることを否定さえした。そんな彼が「実は愛していたんだ」なんて口にしても、誰がそれを信じるかな。私も彼からそんな言葉を吐かれようものなら、虚しさに風邪を引きそうになるだろうね。
……と、意地悪なことを言うのはここまでにしてあげようか。実のところ理由については、彼本人が一番わかっていないのさ。
人情とは不思議なもので、今まで全く愛さなかったはずの相手に、ふと、情をかけてしまう時がある。気の迷いとか、魔が差したとか、そういうやつさ。
1ミリも自分の正しさを疑っていないクセに、彼によって生み出された被害者に情を抱いた。酷い話だろう? 彼こそが加害者であるのにね。
まぁしかし彼は、自分を正しいと確信しているような人間なので、三男の面倒を見るという“間違った選択”をとれない。でも、無自覚な情が湧いて、どうしても気になってしまった。
悩んだだろうさ。自分勝手な悩みだけど、彼なりに苦しんだだろうさ。その末に、私という便利な人間を使うことにしたわけだ。
……さて、彼という人間が、いかに酷い父親だったかは理解してもらえたと思う。
だが結果として、三男は私によって救われ、今や彼女なりの幸せを掴むまでに至っている。そうさせたのは紛れもなく、父親の「M」なんだ。
彼の醜さが無くなるわけではない。私だって彼に大変憤る部分がある。三男は……両親を恨んではいないようだけど、普通に可哀想な話だろう?
さすがにね、10年以上も面倒見てれば私だって情が湧く。幸せになってほしいと願うし、幸せになってくれて嬉しいのさ。同時に、この父親に対してのヘイトもすごいものさ。
……複雑なのさ。私もね。だから、これは愚痴なんだ。すまないね、ここまで聞いてくれて助かったよ。お礼がしたい。私にできることがあれば遠慮なく言ってくれ。
私かい? 私は、そうだな、あなたには「佐藤利夫(さとうとしお)」あたりの偽名を名乗っておこうかな。
ただの、しがない投資家さ。
マーシャ、自認は女性ながら服装は男物選ぶ人(本人曰く“楽”)だし、肌見られることに抵抗無さそうなんで、水着も普通に男物選ぶんやろな。
かっこいいものや可愛いものを見るのは好きだけど、自分がそれになりたいってわけではない。
変わりたいのではなく、ありのままいたい、って感じか。
マーシャにとっての「女性」とは?
結構曖昧だったりする。
少なくとも、女性らしく振る舞うことではない。体も女性である必要は感じない。
恋愛対象は男性に寄ってるものの、女性も視野に入る。
好きな動画配信者の影響で一人称が「あたし」になり、これは自分にしっくり来ていて好んでいる。
マーシャは若い頃から人との交流経験をろくに積めなかった分、普通は通過してておかしくない苦悩とは縁が薄かった。
そこに、動画配信者VVVや投資家という「強い人たち」からの影響を受けたことで、独特な形で確立した価値観が形成されている。
“普通の分け方”をしないし、あんまできない。
マーシャは、なぜか自分を「女性」だと確信していて、だから自分は「女性」なのだと考えている。
マーシャにとって、女性とは何なのだろうな。女性のアイデンティティとは。
なんか、ふと疑問に思ったことが思いのほか深くなってしもた。
「お友達は電子機器」みたいに育ってきた子が、自分を女性と確信する理由かー。
俺がわからないってことは、俺が見つけてない“きっかけ”があるのか……
と思ってたけど、一因になりそうな要素ならあったな。
「父親似である兄2人と違い、自分の姿は母親によく似てる」。
若い頃のマーシャにとって「女性」とはほぼ「母親」である。そして、母親に似ている自分は「女性的である」。そういう無意識が働いていた可能性はある。
とはいえ、母親と話す機会は全くといっていいほど無かったから、内面的な女性らしさを知ることはできなかった。
そこら辺が影響してるのかも。
それにしても、マーシャの人生において直接的な関わりを持った「女性」がほんとに居ないな。母親には無視され、友達もできず、大人になってもはっきりした「女性」は周りに居ない。
「女性らしさ」に関心を持たない性格になった一因はそこにもありそうね。
「こないださ、仲間と町に出た時に一緒にクレープ食べたんだー。外でクレープ食べるのも誰かとクレープ食べるのも初めてだったけど、すごく楽しかった。
あとね! よく、あたしにご飯リクエストしてくれるの。最近それが楽しくなってきちゃって、いろいろレシピとか調べてるんだー」
マーシャとの通話で珍しいことを聞いた。まるで一般的な女性が過ごすような日常を、貴重な体験として楽しそうに教えてくれる。
……「仲間」。彼女が属する組織の結成当時、マーシャにとって仲間とはビジネス上のものだった。一時的な付き合いでしかなく、友好関係ではない。人との関わりのほとんどがビジネスに偏っていた彼女は、非常に冷めた認識を持っていた。
「マーシャ、貴方にとって今の仲間はどういう存在なんだい? 友人? 家族? それとも、恋愛対象?」
悪戯な質問をしてみる。以前のマーシャなら、この質問には「わからない」としか答えられない。
「んー? なんか……友達ってこんな感じかな、って思う。でも、仲の良い家族ならこういう会話するのかな、とも思う。恋……恋なのかなぁ。あたしがわからないだけで、恋なのかもしれない。わかんないや」
正直に言うと、私は大変驚いた。マーシャの言う「わからない」の深みがまるで変わった。それは、彼女が体験してる彩りの豊かさを示している。
そうか、そんな彩りをくれる人に囲まれているのか。ようやく、巡り会えたんだね。
「その感情に名前を付けるのは貴方自身だよ、マーシャ。好きに呼ぶといい。仲間でも、友人でも、家族でも、好きな人でも、なんでもいいのさ」
どうあれ、マーシャにとって大切な人間であることには変わりない。
「なら、仲間! とっても大好きな仲間だね! いつか変わるのかもしれないけど、今はそう思ってる。でもそっかぁ、友達とか、恋人とか……そっかぁ」
マーシャは今、これまでぼんやりとしか考えてなかったことに思いを巡らせているようだ。それでいい。貴方には決定的に「関わりを想う経験」が欠けている。これからゆっくりと考えてほしい。
それが、人生をさらに豊かにしてくれる。マーシャが、ただのハッカーではなく「人間」として生きていける。素敵なことだ。感謝しなければね、彼女の仲間に。
……それはそれとして。
「マーシャ、仕事の依頼があるんだ。期限は今日中だが、やってくれるね?」
「え。相変わらず急だなぁ……いいけどさ」
私は遠慮なくマーシャを利用させてもらおう。使える駒は使わないとね。
私は“人でなし”の類だ。マーシャの親代わりみたいなものでありながら、私にとっては「マーシャがどうなろうと構わない」。死にかけたとしても依頼が無ければ助けないし、死んだとしても何もしない。
マーシャの人生に彩りを与える気も一切無い。私はただ、依頼されたからマーシャを自立させ、利用価値があるから面倒を見ている。私はあくまでマーシャを「駒」としか認識していないし、駒が幸せでなくとも何も不都合は無いのさ。
ただ、「それはそれとして」。人は幸せに生きるのが一番良い。マーシャが幸せに生きることは喜ばしく思う。長い間、面倒を見た相手だしね。
だから、彼女自身で幸せを掴むのは嬉しい。つい微笑んでしまう。私にとっては珍しい感情なのだけど、良いものだ。
そのまま幸せに生きれるといいね、愛しいマーシャ。何もしてやる気は無いが、人情として、気にはかけてるよ。
「……MMさ」
MM(えむえむ)。マーシャに対して名乗ってる偽名だ。彼女が「マーシャ・メイリー」という偽名を名乗ってるので、そのイニシャルからいただいた。
「なんだい?」
「MMこそ、あたしのことどう思ってるの?」
おや。予期せぬ質問が来た。こういう質問ができるようになったのも、彼女に生まれた深みだね。
「優秀なハッカーだよ」
「……やっぱそうだよね。わかってた」
私がどういう人間かは隠してないからね。マーシャは私をよく理解している。しかし、その上で、マーシャは思わぬことを言ってきた。
「でもあたしは、MMのことも大好きだよ。どんな相手かは、よくわかんないけど」
呆れてしまった。私が“人でなし”なのは知っているだろうに。
「馬鹿だな、マーシャは」
そう答えながら、声がやや弾んだことに気付いた。……まさか、嬉しかったのか。
いや、仕方ない。この「子」は、そうなんだ。いつも真っ直ぐだ。私と真逆で、素直さで生きてる「子」だ。だから、こんな私の心にさえ思いが届く。
「むー」
あからさまに不満そうなこの「子」に、生まれて初めて口にする言葉を返すことにした。いいだろう、“君”になら。
「だけど、私も“君”が好きだよ」
……マーシャが沈黙した。これは照れてるな。顔を真っ赤にして言葉が出ないのだろう。マーシャは話せばどういう人間かわかりやすい。目に浮かぶ。
「さて、では仕事は頼んだよ」
「あ、うん……」
調子が戻らないマーシャに構わず、私は通話を切った。やれやれ、自分で言い出したのに、言われるのには弱いんだから不思議なものだ。
まぁ、しかし……やっぱり、彼女の仲間には感謝しなければいけないな。こんな「幸せ」は、これまで感じたことが無かった。
ありがとう。マーシャに彩りを与えた貴方たち。
※シナリオ「かいぶつたちとマホラカルト」のネタバレがあります※
※一部のPCやNPCとの過去を勝手に捏造してるんで、そういうの嫌な人は注意。あと、だいぶ長文です※
MMから、変な質問をされた。
「マーシャ、貴方にとって今の仲間はどういう存在なんだい? 友人? 家族? それとも、恋愛対象?」
全部……あるような、ないような。仲間なのは間違いないけど、ちゃんと考えたことはなかった。
……みんなをどう思ってるのか、かぁ。あたしは……みんなをどう思ってるんだろう。あたしはなんとなく、組織に入った頃のことを思い出した。
あたしがまだ狼さんたちと出会ってなかった頃。電子ドラッグの件で気になって調べてた“マホラバ”。でも、ガードが固くてなかなか情報が集まらなくて困ってた。そんな時、マホラバに探りを入れてる人たちが居るのを見つけた。
それが、狼さんと悪魔さん。あと、幽霊さん。
欲しいものは違ったけど、マホラバから取りたいものがあるのはみんな同じだった。だから、利害カンケーの一致で、協力した。長期戦になりそうだったから、狼さんの提案で「Persona Tailor」って組織が作られることになった。
あたし、しばらく「ペルソナテーナー」って呼んでたな。よく狼さんと悪魔さんに訂正されてたのを思い出す。
最初は……組織のことはどうでもよかった。利用して利用されて、マホラバのことが終わったら、いつもの仕事みたいにおしまい。そんなつもりでいた。
だけど、そんなつもりは、すぐにどこかに飛んでいっちゃった。
みんなでさ。協力して、調べて、作戦立てたり……合間に雑談して、一緒にご飯食べて……
全部。全部、初めてのことだった。こんなに誰かと一緒の日々を過ごすの、初めてだった。
慣れない仕事振られてめっちゃ大変だったこともあるけど、でも、みんなが労ったり褒めたりしてくれて。
あたしはいつの間にか、マホラバから技術を盗むって最初の目的のためよりも、「Persona Tailor」に居たくて、そこに居た。
狼さんは、頼もしい人だ。あたし、最初は本当に話せなくて。すごく迷惑かけた自覚がある。だけど、狼さんはそんなあたしを、組織の一員としてちゃんと見て、話してくれた。だから、頑張ろうって思えた。
優しい人なのに、みんなを守って戦ってくれる。かっこいいし、キレイだなって思えるのがずるいと思う。あたしも、戦いたくはないけど、頑張らなきゃいけない時はちゃんと戦おうって、思えた。
悪魔さんや幽霊さんも、そんなあたしを見守っていてくれた気がする。
「あたし、いっそこのアジトに住みたいなぁ」
冗談っぽく言ってみた。無理だろうなぁ、って思ってた。でも、狼さんが「汚さないなら住んでいいよ」って答えてくれた。
なんか、舞い上がっちゃって。何を言ってたとかよく覚えてないんだけど、MMにいろいろなんとかしてもらって、狼さんのアトリエに引っ越した。なんか、すっごくワクワクしてたのだけ覚えてる。あんなにワクワクしたの、初めてだった。
みんなの欲しかったものが手に入った時。悪魔さんが連絡付かなくなった。狼さんがすごく取り乱していたのを、覚えてる。合間合間に探したけど、結局、こないだまで見つからなかった。なんか、悪魔さんはマホラバに捕まって大変だったみたいだ。
悪魔さん……捕まる前はずっと狼さんと一緒に居て、あたしは狼さんと話すことが多かったから、どういう人なのかあんまりよく知らない。今でもあんまりわかってない。
こないだは、すっごくダメダメな時もあったけど、すごく頑張ってくれた。自分が危なくても、前に出て戦ってくれた。なんとなく、ちょっとだけ、「お父さん」って感じがした。全然違うけど、なんとなく……ちょっとだけ。
……あと、狼さんとの「コンビ感」は、ずっと羨ましい。いいなぁ。なんかかっこいいじゃん。
なに話してたっけ。あ、悪魔さんが捕まったところだ。
それから1年後くらいに、幽霊さんが「人を助け出してほしいんだ」って言い出した。詳しく聞いたら、ターゲットは、しけいしゅう。死刑囚!? なんで?? ってなったけど、幽霊さんはあまりはっきりと教えてくれない。
幽霊さんはいつもこう。ぜったいいろいろ知ってて考えてるのに、最低限のことしか教えてくれない。あたしは幽霊さんのことがよくわからない。
でも、なんとなく、あたしを利用はしても裏切ったりはしないってわかる。……なんかMMと似てるから……たぶんそう。
確信ぜんっぜん無いけど。でも、「Persona Tailor」の居心地の良さは、狼さんと幽霊さんのおかげだから。あたしは、信じるし、信じきっていいと思ってる。
死刑囚の話に戻すけど、助けてほしい死刑囚っていうのが今で言う鬼さんだった。すっっっごくこわかった。死刑囚だもん。めっっっちゃ怖く見えた。でも、助けたら終わりだし。仕事だし。あたしはそう言いながらみんなと一緒に助けた。
そしたら、なんか、いつの間にか「鬼」としてメンバーになってた。
一生部屋から出ないでこもろう。あたしはそう決心した。
…………最初はそんな感じだったけど、何回かびくびく仕事するうちに、あたしとそこまで変わらない人だってわかった。話してみたら、むしろ、なんかよかった。「あれ? 楽しいな」って感じで。
それからは、すぐに仲良くなった。……狼さんは頼れる人で、幽霊さんやMMはよくわからない人で……。うまく言えないけど、一緒のところで話せる人が、鬼さんだった。
鬼さんって戦ってる時がとってもかっこいいんだ。あたしは戦いとか血とか好きじゃないし怖いけど、鬼さんの戦い方は見ていたくなる、すごさがある。
なのに、こないだ一緒にクレープ食べたりしたし、あたしの作ったご飯を美味しそうにいっぱい食べてくれる。ぎゃっぷってやつがかわいすぎる。最近ご飯作るのがちょっと楽しくなってきちゃった。
鬼さんが来てから、あたしは「Persona Tailor」がもっと好きになった。
そして、半年前。幽霊さんが天使さんを連れてきた。
いよいよ、何も無いところから仲間が生えた感覚だった。
幽霊さん、信じてるけどさ、こう……あたしの気持ちも考えてほしいな。ってすごく怒って言ったのだけど、幽霊さんはいつものまま。むぅー。
幽霊さんのやることはいつも、あたしのためにもなってるから、きっとこれもそうなる。だけど。もうちょっと、なんていうか……そう、仲間! 仲間の気持ちを考えてほしい!
でも幽霊さんはこれからもあんな風なんだろうな。もぅ。
天使さんは、他のみんなとはまた違った雰囲気があった。あたしはあの雰囲気をなんて言えばいいのか、今もわからない。コードネームの「天使」がとても似合うな、って思う。
かわいい。とってもかわいい。なんていうか……見た目も中身もふわっとしてて……おいしそう……は、なんか違う……。なんか、なんとなく見ていたくなる感じがある。食べてる姿もかわいい。ご飯あげたくなるあの感じ、なんて言うんだろう……。
天使さんは、あたしに勇気をくれた人でもある。自分が持つ力はどんどん使ってけ!って思えるようになったのは、天使さんがみんなの前で治す力を使ったからだった。
あたしは、自分の力が嫌だった。言葉にできない気持ち悪さがあって。こういう……“人じゃない力”は、なるべく使っちゃいけないものだと思ってた。
でも天使さんは、鬼さんのために……みんなのために、みんなの前で力を使ってくれた。あの時、あたしはすごくびっくりした。
あたしなら、絶対隠した。力が気持ち悪いから。天使さんが力を使う少し前、あたしも悪魔さんのせいで力を使ったけど、絶対に自分が使ったことは言いたくなかった。
でも、あたしの力も、天使さんみたいに使えば誰かを助けられる。“人じゃない力”かもしれないけど、使うのは人の自分なんだ。
力を気持ち悪いなんて言ったら、天使さんのこともそう言ってしまうようで、嫌だった。だから。あたしも、天使さんみたいになろう。力を、みんなのために堂々と使えるようになろう。そう、思わせてくれた。
だから、あたしにとって天使さんは尊敬する人でもある。
それで、あの事件があって……最近はマナちゃんが仲間になった。かわいい……けど、怖い。あんなことがあったから。みんな死んじゃうところだったんだから。
……うーん。なのに、「まぁなんとかなるでしょ、きっと」って言えちゃうのは、自分でもどうかと思う。“ハライタタワー”で最後に出したぱんちが気分良すぎて、なんかすごくかっこつけた気がする。でも、ぜんぶ本当のことだしなぁ。
怖いけどさ、でもマナちゃん見てると、やっぱりとにかくかわいい。この子を殺したくないのは、あたしも同じだ。……うん、そうだ。何かあったら、頑張ってなんとかしよう。あたしたちなら大丈夫。たぶん。
それに、何があっても後悔はしないって言える。「Persona Tailor」の今は、天使さんが望んだことで、みんなが受け入れたことで、あたしが叶えてあげたいことだから。
……いろんなことを思い出した。なんでこんなこと考えてたんだっけ。……あ、みんなをどう思うかだ。……うん、でもやっぱり今の答えは。
「仲間」。
今は、みんなのことをそう呼びたい。友達も、家族も、恋も、よくわからないけど。
「仲間」ならここに居るって、はっきり言えるから。
みんなみんな、あたしの大好きな仲間だ。
お父様と最後に会話したのは、いつだろう。一緒に暮らしていた頃でさえ、ほとんど言葉を交わす機会は無かった。
「父の日」なんてものは、ただその日の名前というだけ。あたしには関係ない。あたしはお父様と関係してはいけない。そう思うようになって、もう何年が経ったのだろう。
「珍しい用件で連絡してきたね」
通話越しに、MMがからかうような声で返事をした。
「別にいーじゃん。あたしだって人の子だよ」
「良いことさ。貴方に『彼』を想う余裕が生まれたのはね」
「……ちょっと気になっただけだよ」
鬼さんの父親が幽霊さんだって知ってから、初めての父の日。鬼さん何かしたのかな、って少し気になると同時に、ふと……ほんとうになんとなく、お父様のことを思い出した。
厳しくて、目が冷たくて、口数が少なくて。あたしに話しかける時はほとんど、注意か、命令だけ。あたしは“要らない子”だったから、仕方ないんだって考えて、親とは関わらないようにした。
今思えば、酷い父親、だったのかな。
……だけど、あたしはお父様のことが嫌いじゃない。ショックなこともあったし、楽しい思い出は無いけれど。あたしがしたいことは、ほとんど自由にさせてくれたから。
あたしは今のあたしが好き。今のあたしがあるのは、あの自由があったから。だから、感謝もしてる。
……お父様、元気なのかな。MMなら、知ってるかな? そう思って、通話をかけた。
「壮健さ。今も衰えを知らず、最前線で活躍している」
……まぁ、そうだよね。お父様が元気じゃないところを、あたしは知らない。なんていうか……「鉄」みたいな人だから。
「何か伝言があるのなら、私から伝えておくよ?」
「ううん。言いたいことも無いし、きっと、言ってほしいことも無いだろうし」
「そうだろうね」
「……でも」
「うん?」
「元気でよかったなって、思った」
「……そうか」
その後、てきとうな雑談と、相変わらず急なお仕事の話をして、通話が終わった。なんだろう。すごくほっとした。お父様が元気だから、というのもあるけど……それだけじゃなくて……うーん。
しばらく悩んで、わからなくて、寝て、起きて。朝、ご飯の支度をしている時に、ふと気付いた。
「あ……あはは、そっか」
理由がわかったら、気分良くなってきた。思わず鼻歌を歌った。そうだ、そうだね。
MMが元気そうで、よかった。
昨日は、それが何より嬉しかったんだ。