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目が覚めたらエツィオに生まれ変わっていたので、家族生存目指します!

全体公開 5049文字
2020-05-20 15:04:07

第19話「テンプル騎士の会合」

Posted by @acbh_dmc4

唇の傷はまた縫う程のものでもなく、血を洗い流せば止まった。
少しばかり痛々しいが、これ以上の治療は必要ないだろう。
そして俺は午後にメディチ邸に呼ばれて赴くと、そこには父上とロレンツォ殿が揃って出迎えた。
恐らく近くあるテンプル騎士団の会合について何か情報を掴んだのだろう。

「やぁ、エツィオ。随分ヤンチャしているようだね。顔の傷は大丈夫かな?」
「大丈夫です。問題ありません」
「その様子だと、関係はうまく切れたという事だな」
「ええ。今後俺に関わってくる事はないでしょう」

父上は複雑そうな顔をして俺の話に頷くと、ロレンツォ殿に向かい、騎士団の会合について説明した。
恐らく狐からの情報だろう。既に会合の日程も突き止めているようで、俺の初任務まであと3日と言う所だった。

「今回はジョバンニ単独ではなく、彼も同伴させると?」
「はい。我が息子は既にマスターアサシンの称号を与えても良い程の実力を持っております。また、今回騎士団の指揮を執っていると思われるロドリゴ・ボルジアの参加の情報が入っておりますので、戦力の強化の為にもこの子が必要です」
「うむ。それ程とはな。分かった、初任務とのことだが、気をつけるのだぞ?」
「はい」

ロレンツォ殿との話し合いを終え、父上と揃ってメディチ邸を後にする。
すると、いくらも行かない内に何者かが俺たちをつけている気配を感じた。
背後の者に気付かれないように父上に目配せをする。

「父上
「ああ、着いて来ているなお前は家に真っ直ぐ帰りなさい」
「はい」

父上と別れれば、その気配は俺の方にだけついて来た。偵察にしてはお粗末な尾行だが、この間の晩餐の事もある。
テンプル騎士団が俺に接触しようとしているのだろうか?
わざとではないが、人通りのない通りに出て暫く行った時に、背後から声を掛けられた。
振り向けば、いつぞやヴィエリにより雇われたゴロツキ達が他に人数を集め、ずらりと道を塞ぐように立ち塞がった。

「俺一人に随分人数を集めたもんだな。それで?また誰かに雇われたのか?」
「うるせぇ!お前のせいで俺たちの面目丸つぶれだ!パッツィ家からの依頼が無くなっちまった責任を取らせてやる!」

成程。テンプル騎士団とは関係のないところで恨みを買ってしまったらしい。
恐らくヴィエリの手駒だったのだろうが、俺がヴィエリと行動を共にしていた為に暫くお払い箱状態だったのだろう。

「俺の予想だと、そろそろパッツィ家から頼りにされると思うんだけどな」
「ハッ!だったらなんだ?今までお声がかからなかったことは帳消しにならないぜ!」
「大人しく俺たちに殺されるんだな!」

わっと男たちがこちらに走り寄ってくる。
図体ばかりでかいゴロツキとはいえ、それなりの人数相手にするには少々分が悪い。負けはしないが、任務前に怪我をする訳にはいかない。
俺は全速力で男たちから逃げる事にした。背後からヤジが飛ぶが振り返る事もなく駆け抜ける。
あっという間に引き離して、見えて来た自宅に飛び込む。
あと数日とは言え、一々絡まれたり、ましてや家族に危害を加えられるようなことがあってはいけない。
あのゴロツキどもに暫く絡まれないよう、闇討ちでもしておくか。腕の1本でも折ってやれば、二度と手を出しては来ないだろう。
おそらく盗賊が俺の護衛代わりに後をつけていた筈だから、あの男たちの素性も分かる。手分けして潰すとしよう。



空に猫の爪ほどの月が主張を始めた頃、俺は音もなく夜の街を屋根の上から見下ろしていた。
盗賊たちの情報網から俺を強襲したゴロツキ共の居所を聞き、静かに張り込みをしていた。
ある酒場を注意深く見下ろし、ターゲットを待つ。
俺を逃がした苛立ちを酒場で晴らしてきたのだろう。ゴロツキ3人程がほろ酔いで酒場から出て来た。
つい数時間前に絡まれた路地へと入ると、俺は音もなく奴らの前に着地した。
いきなり何者かが降ってわいて泡を喰っているゴロツキに向かって素早く近寄り、先制して顔面に一撃をくれてやった。
やはり手応えの無い相手だ。直ぐに痛みに蹲って、致命的な隙を披露してくれている。
遠慮なく蹲った男の頭部を軽く蹴りつけてやれば完全に意識を失った。
素人相手に随分卑怯な真似をしているとは思うが、暫く俺に関わってほしくないのだから仕方ない。
他の二人も間髪入れずに鳩尾に一発ずつくれてやる。蹲る男を一人また蹴り技で倒すと、地に伸びた腕の関節に向かって思い切り蹴り折ってやった。
もう二人も同様に無力化し、俺はひっそりとその場を後にした。

狐に頼み、数人の傭兵と盗賊を借りて今日俺に絡んできた者どもは揃って無力化させてある。
一応全て完了したかを確認すべく、移動の為屋根へと上がると、協力してくれている盗賊が俺の元に現れた。
どうやら無事全員の無力化は完了したようだ。
しかし、盗賊は神妙な顔をして声を潜めると、辺りを少しだけ警戒してから俺に耳打ちをした。

「坊ちゃん、報告したいことがある」
「何だ?」
「どうやらあのゴロツキ共はパッツィ家に雇われたらしい」
「雇い主はヴィエリか?」
「いいや、フランチェスコだ」
「そうか、報告有難う。もう戻っていいぞ」

何故フランチェスコが俺を?ヴィエリと仲違いをしたから、ヴィエリに代わって俺に報復をしたというのことだろうか?
何にせよ、俺があの一家にとって『裏切り者』として、恨みを買っている事は間違いない。
3日後の初任務までに何事もなければ良いのだが。今一度、自分の身の回りには気を配る事としよう。





「エツィオ。準備は良いな?」
「はい。父上」

3日後の夜、俺はモンテリジョーニで作成した父上のアサシン装束と似たデザインのローブに袖を通し、腰に投げナイフと軽めの長剣、伯父上に誕生日に貰った短剣を差して準備を整えた。
隠し通路からモンテリジョーニの街へと出て、父上の後ろを周囲を警戒しながらついて行く。
月のない夜は、俺たちの姿を綺麗に隠してくれる。父上の姿も、少しでも離れてしまえば見失ってしまうだろう。

今日このフィレンツェに全ての元凶であるロドリゴ・ボルジアが居る。早くもその怨敵に対峙するからだろうか。酷く落ち着かない。
狐から齎された情報通り、4人の人影が教会から出て来た。
暫く人気のない通路に入るのを認め、父上が屋根から飛び降り、そのフードを被った集団の前に着地した。
投げナイフを素早く放ち、それが赤フードの右隣の者に突き刺さると、戦闘の合図と言わんばかりに激しい剣劇が繰り広げられた。
恐らく、ボルジアだろう、赤いフードの男に父上が鋭く剣を振るうが、寸での所で交わし、一人素早く物陰へと隠れた。
父上は一人取り逃がしたことには気づいたようだが、それでも残りの3人の猛攻に手を離せず、激しく打ち合っていた。
その様子を氷のように冷たく鋭い視線が、来襲者の正体を見破ろうと、ひたと見据えられている。
ここで父上の正体を知られる訳にはいかない。俺はボルジアの退路を塞ぐように、父上が戦う反対側に着地をして剣を抜いた。
俺の存在にすぐさま気がついたボルジアは、既に抜いていた長剣を俺に向けると少しも驚いた様子もなく口を開いた。

「これはこれはまさかもう一人アサシンが潜んでいるとはな。お前は随分若そうに見えるが、新入りか?」

挑発などには乗らない。俺は黙って男に向かい、同じ長剣を構えると、すぐさま躍り掛かった。
だが俊敏なボルジアは、俺の剣を弾くように滑らせると、距離を取るようにその場から飛び退いた。

「番兵!今だ!アサシンを取り押さえよ!」

左右の通路から大勢の番兵が雪崩れ込んでくる。
何処に控えていたのか、そしていつの間に俺たちの襲撃が読まれていたのか、2人に対して随分多い人数がここに集まって来た。
しかし、大将の首を取ってしまえば指揮も混乱するだろう。テンプル騎士団の兵を減らすより、ボルジアの命を取る事が俺の使命だ。
構わずボルジアに向かい手元の投げナイフを放ち、また自身も突進して剣を振るうが、奴の驚くべき身体能力で全て防がれた。
重い剣劇を受け、やはり俺には力が足りない事を痛感する。あれだけ鍛えはしたが、まだ体の完成しきらない10代の筋力では互角にやり合うしかできない。
これでは折角の機会を取り逃してしまう!

「アサシン、いや、エツィオ・アウディトーレ。一つ、取引をしないか?」

ボルジアの口から信じられない言葉が漏れ出た。それに咄嗟に反応をしないよう剣を振るうが、ボルジアの一声で集まった番兵にも邪魔されて距離が開く。
黙って俺に向かって来る番兵を片付けていれば、手の届かない距離まで避難した奴が、声を上げた。

「大方、後ろで戦っているのはジョバンニ・アウディトーレだろう?お前の事は早くから目をつけていたから、ここフィレンツェで誰が裏社会を支配しているかは直ぐに分かった」

父上が背後でボルジアの援軍との戦いを始めている。そして、何かに反応して合図を送ると、近くの番兵を踊るように切り伏せ続ける。
ボルジアが俺に語りかけるのを気にして少しだけ剣筋が乱れていた。

「予言者よ。こちら側につかないか?大いに歓迎しよう。我が騎士団に参画するならば家族の命は助けてやる。どうだ?こんなところで命を落とすよりも、もっと有意義な事にお前の力を奮うべきではないか?お前のような者を葬るのは惜しい。何だったら、お前が騎士団を導けばいいのだ。それだけの資質がある事は、モンテリジョーニで既に示したであろう?」

奴の言う『予言者』が何を意味しているのかは知らないが、なおもボルジアは悪魔のような笑みを張り付けて俺に呼び掛ける。
動揺を誘い、俺を捕らえるつもりだろうか。

「我々は人々を導くために、平和を作り出すために存在している。それはアサシンとて同じであろう?ならば、互いに手を取り合い、平和の実現の為に共に進もうではないか。今のお前たちはただ闇雲に混乱を広げているだけだ。違うか?」

ボルジアが番兵達を一度下がらせたのを機に、俺も一時剣を下げた。
目を細め、値踏みするように見やって俺の答えを待つ。父上が俺の方へと駆け出し、そして何も答えるなと耳打ちした。
だが、俺は真っ直ぐロドリゴ・ボルジアを睨みつけ、覚め切った声で一つだけ問うた。

「何が目的だ」
「お前が、お前こそが写本に書かれた予言者なのだろう?そう確信するものがお前にはある。ならば、私はお前に仕えても良い」
「っ!おい、取り合うのではない!」
「お前がこの戦いの鍵だと認識している。本当なら今回の会合にお前を招待する筈だったのだが、フランチェスコがしくじりおったのでな。強引に食事になど誘わず、ヴィエリにやらせておけばよかったものを
「ゴロツキ共を嗾けたのはお前の指示か?」
「ふん、全く。要らぬ事しかせんのだな奴は。優秀過ぎる者は敵を作るものだ。騎士団に来るなら、私がお前を護ろう。勿論ジョバンニ、お前の優秀さも私は買っているのだ。世界は大きく変わるんだぞ。共に、それを見ようじゃないか」

暫し無言のにらみ合いが続いた。
沈黙を破るように、空から投げナイフの雨が番兵達を襲った。それを合図に俺と父上は再び手の長剣を振るう。
屋根の上から他のアサシンや盗賊たちが援護の為姿を現し、一気に形成を立て直した。
その姿を失望したように見やったボルジアは、大きく溜息をつくと、番兵に指示をしてその場を立ち去った。
これは、明らかな罠であった。もう一刻の猶予もない。いつ奴の魔手が、家族を、いいや俺自身を襲うか分からないのだ。
全ての番兵を始末し、俺たちは急いでアウディトーレ邸まで帰り、フィレンツェのアサシンを呼び出した。


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