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② ζ枚目の織地

全体公開 1 1938文字
2026-06-07 21:24:48

ハルトムートと恋人のふりをしてみる織地

Posted by @KouSyuuka

《ローゼマイン》

隠し部屋でフェルディナンド様の激マズ回復薬を二本、三本と飲み下し、ぎゅっぎゅと無理に魔力を箱の中へ押し込んでいく。正直、今にも倒れそうなほど気持ちが悪い。それでもそんなことは微塵も感じさせない笑顔を浮かべて、隠し部屋の外に出た。
都合が良い恋物語の新刊が届いたから、それを片手に階段を下りていく。

「ハルトムート、わたくしこの恋物語のように東屋へ行ってみたいですわ!エスコートをお願いできて?」
「は……はぁ!?」

やっぱり大声を上げるのはコルネリウスだ。毎回毎回記憶はリセットされているのに、毎回毎回ご苦労なことだ。コルネリウスは「外聞が悪い!」「護衛騎士は連れて行きなさい!」と言い募るけど、私はプンッと顔を背ける。

「ハルトムートは側近で騎士コースも取っているのですからハルトムートがいれば十分です!恋人の逢瀬に第三者を付けようなんて野暮なことは仰らないで!」

このあたりのワガママっぷりは、ディートリンデを少し参考にしている。と思うとストレスが半端ないけど、お手本が何もないよりはマシだった。
まだ食い下がる側近たちは、ハルトムートが一人ずつ耳打ちすると何故か顔色を変えて黙った。一体どんな弱みを握っているんだろう?最終的には、既にハルトムートの名を受け取っている私がハルトムートの名を縛って「破廉恥なことをしてはいけませんよ」といったようなことをみんなの前で命じることで、お許しが出た。

「それでは参りましょうか、ローゼマイン様」

でもエスコートしてくれようとハルトムートが私に手を差し出すと、コルネリウスは「それぞれの騎獣で行きなさい!」と最後の足掻きをみせた。まぁいいんだけどね。
そういうわけで、私はその場でレッサーくんを出し、そのままハルトムートと東屋へ向かった。といっても、正直ハルトムートと二人で寮の外に出る口実がほしかっただけで、東屋には用はない。申し訳程度に一度東屋に着陸してから、そのまますぐに飛び立った。
目指すはアダルジーザ離宮と大神の祠だ。
アーレンスバッハと繋がっているアダルジーザ離宮はエントヴィッケルンでとっとと砂に変えてしまおう。
それと、色々と面倒になった今回は、早々にグルトリスハイトをゲットしてしまおうと考えている。そのためにはまずは祠の石版を集めなければならない。
本当は私以外の正当な誰かにグルトリスハイトを得てほしかったけど、どうにもこうにも上手くいかないんだもん。それにいざとなれば、グルトリスハイトを出せば交渉なり脅迫なり出来るかもしれないし。
とりあえずグルトリスハイトがあれば国境門には魔力を注げるから、少しは国の魔力枯渇のタイムリミットを先延ばしできる。それでも国の礎に魔力を奉納するためには中央神殿の聖典と、貴族院の図書館に出入り出来る権利が必要になる。
将来的には私が中央神殿の神殿長にさせられてしまうようなルートを辿るように仕向け、交渉次第で貴族院図書館への出入りの権利を勝ち取れるように、本好きの設定はそのままにすることにした。

「ローゼマイン様、無理な圧縮をしていませんか?お部屋にいらっしゃる頃でしょうか?不安定な魔力の揺らぎを感じました」

騎獣で併走しながら、ハルトムートが不意に気遣わしげな声をかけてきた。

「ハルトムートはわたくしの魔力を感知出来るのですか?」
「ローゼマイン様に釣り合うほどの魔力は私にはありません。ですが、ローゼマイン様の魔力で縛られておりますので、その魔力の変化はわかります」

そう言えば一回目の時も、アーンヴァックスに成長させられていた時の魔力の変化をハルトムートは感じ取っていたっけ。……気持ち悪い、と思ったけど、触れも見もせずに私の体調管理が出来ると思えば何かと便利だ。

「自由に動ける回数は多くはないでしょうから、一度に多くを済ませる必要があるのです」
「ご無理はなさらぬように……と申し上げたいのですが、それは無理なのですね?」
「そのためにもハルトムートが居るのでしょう?帰りはお願いいたしますね」

正直、今日のうちに注げるだけ大神の祠に魔力を奉納していきたいし、回復薬を一日に何本も飲んだら体調も悪くなる。帰りはハルトムートの騎獣で送ってもらうことになるかもしれない。そんなことを暗に伝えれば、ハルトムートは「コルネリウスに斬られぬように気をつけなければ」と言って肩をすくめた。





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