@KouSyuuka
《ローゼマイン》
パチ、と目覚めるように目を開ける。
「おめでとう、ローゼマイン。これで君は正式にカルステッドの娘として認められた。エーレンフェストに新しい子供が誕生したのである」
「我が娘として、神と皆に認められたローゼマインに指輪を贈る」
「ローゼマインに、火の神ライデンシャフトの祝福を」
「恐れ入ります、神官長」
もう何度目になるだろう、貴族としての洗礼式の日―
私はホールの方へ向き直り、ハルトムートと目を合わせる。
『もう大丈夫です、また頑張りましょう、ローゼマイン様』と言うかのように、ハルトムートはニコリと笑った。
「それにしても、前の織地の最後では、どうせすぐやり直しが起こるのに、何をあんなに取り乱したのですか?」
ハルトムートの心の休息も充足したようだったから、私はちょっと気になっていたことを聞いてみた。流石にあの織地の直後には聞けなかったけど、今なら聞いても大丈夫かな?
一応ハルトムートの表情を伺い見るけど、ハルトムートは怪訝な表情をするでも、傷ついた表情をするでも、キョトンと不思議そうな表情をするでもなく、とても凪いだ表情で、まるで今日の予定とか事務報告をするような表情で口を開いた。
「ではローゼマイン様は、シャルロッテ様やトゥーリ、ギュンター、エーファ、カミル、フェルディナンド様、フランたちが目の前で害されそうになっていても『次があるから』と静かに見過ごせるのですか?」
……聞かれて、想像してみて、私が何もせず見過ごすとは思えなくて、納得した。どうせやり直しが起こるなら、むしろ派手に反撃するだろう。それはまぁ、納得した。すんなり納得するくらい、ハルトムートの回答は優秀だった。でも、
「ハルトムートがわたくしに向けるような忠誠心が、わたくしには無いから、喩えが難しかったのかもしれませんが……そのように列挙されると、改めてわたくしはハルトムートの何なのか、ハルトムートの気持ちが何なのかと思ってしまいますね。恋愛感情がないことは判っていますが……」
可愛い義妹、慕う姉、大切な両親、愛しい弟、かけがえのない恩師、大事な部下……私にとって大切な人たちをこぞって列挙されたけど、妹で姉で弟、上司で部下、そんな矛盾めいた喩えで忠誠心を説明された気がして目眩がした。
軽く額を抑える私に対して、ハルトムートは今度こそにこやかに笑顔を浮かべて、いつものように胸に手をあてて意見を述べる。
「えぇそうですね、強いて言うなら、貴女は私の世界の全てですよ、ローゼマイン様」
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