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Ezio's -Memory 2- shock

全体公開 4536文字
2018-09-10 12:57:06
Posted by @acbh_dmc4

得体の知れない男より幾許かの金と、旅に必要な最低限の荷を貰い、全力で馬を駆ける。
馬で駆けながら昨夜の不思議な出来事を思い起こす。
俺は確かに昨夜、モンテリジョーニのヴィラ・アウディトーレの前に居た筈だ。
それが瞬き一つであの男に、ローマへと連れ去られた。
よくよく思い起こしてみれば、あの男は何もかもが不自然だ。
何より、髭を蓄え年を重ねた深みのある顔ではあるが、あの男の顔は、まるで鏡でも見ているように俺にそっくりだ。

そしてなにより、モンテリジョーニの垣の前に、いつの間に姿を現したのか。
それこそ、瞬きの間にあの男は急に姿を現したのではないか。
だがそんな事が現実に起こりえるのだろうか。
御伽噺の世界じゃあるまいし、あの男は本当に魔術でこの距離を移動したのだろうか。

「そんな魔術が使えるなら、俺をモンテリジョーニに戻してくれれば良いのに

思わず零すように愚痴を言う。
しかしあの男はモンテリジョーニが陥落したと、確かにそう俺に話した。
あの一晩のうちに、俺がのうのうとあの男に捕らわれ、あの宿で眠っているうちに陥落したというのか?
それとも、俺が一瞬と思っているだけで、本当は何日も経っていたのだろうか?

「そいいえば、アイツ今は1501年だとか言っていたな

優に23年も先の話だ。
では何か?俺はそんな長い間昏睡していたとでも言うのか?バカバカしい。
日が暮れ、民家を訊ねる。
宿がないか農夫に聞くが、この辺りは農夫達の家が点在する位で宿は無いと言われた。
幸い親切な農夫が客室を貸してくれると申し出てくれた。
礼を良い、招かれた家へと入る。
調度食事時で夕飯までご馳走になった。
上等なワインを飲み、ほろ酔い気分になってから、道中に気になっていたことを農夫に聞いてみた。

「この先のモンテリジョーニが陥落したと聞いたんだが、本当なのか?」
「ああ、ずいぶん前ボルジア兵に攻め込まれ、町民も皆逃げ出したそうだ。町を護っていた傭兵や総隊長も散り散りになったって話だったな」

農夫の言葉に一気に心が凍り付く。
いつか味わった絶望感がじっとりと背中を撫でる。
俺は信じたくなくて、縋るように農夫を見つめ、震える声で確認をした。

「総隊長マリオアウディトーレ?」
「ああ、そんな名前だったかなそれで噂によると、エツィオという旦那がローマへと向かったって話だ」
「エ、エツィオローマに?」
「ああ。そのエツィオという旦那はギリギリまで戦って、町民を逃がして、その足でローマに発ったんだと」

ジワリと手に汗が滲む。
エツィオ・アウディトーレが最後まで戦い、町民を逃がした
頭の中で、あの得体のしれない男の言葉が木霊する。
壊れたように心臓が早鐘を打つ。
農夫はずいぶん前の出来事だと言ったあの男も

「そ、その今は今は何年になる?」
「どうしたんだい?今年は1501年だが

あの男が告げた年。
いいや、きっと何かの間違いだもしかしたら、この農夫もあの男の手の者なのかもしれない。
いや、だが俺にこんな嘘を吹き込んで何になるというのか。
テンプル騎士団への復讐を阻止するためか?
時間稼ぎをして、俺の家族を、アウディトーレ家を滅ぼすためか?

「大丈夫かな?顔色が悪いようだが

人の良さそうな農夫が、本当に心配そうに顔を覗き込む。
農夫の妻は俺に水を次いで、飲むようにと勧めてくれた。

その、大分酔ってしまったのかも知れません俺は、これで

農夫に休む事を告げると、彼に案内された部屋のベッドへと倒れこんだ。


***


一晩ゆっくり眠り、翌朝はずいぶんと気分もしゃんとした。
どの道、モンテリジョーニの姿を、自らの目で見なければ今後の判断は出来ない。
農夫に事情を話し、馬を預けてここからは徒歩でモンテリジョーニへと向かう。
親切な彼らは、道中あまり治安が良くはないという事を俺に忠告し、気を付けるようにと念押しした。

広大な農地を横目に、モンテリジョーニへとひたすら歩く。
一見平和そうな風景だったが、遠目に赤い番兵の制服を着た者たちが見えると、物陰に隠れてやり過ごす。
しかし番兵の横柄で横暴な振る舞いに憤りを禁じえなかった。
もし農夫たちに乱暴を働いているのを見たら、ここから飛び出し、その番兵たちを排除しようと目を凝らす。
一言二言何かを農婦に言いつけ、農夫が困ったように返答すると、その者たちはすぐにそこから立ち去った。

その番兵の後をつける。
気づかれぬように距離を取り、物陰に隠れて様子を窺う。
やはりモンテリジョーニの道中を見張っている兵のようで、その者たちは俺の向かっていた方向へと進んでいった。
暫く、モンテリジョーニの外壁が見えてきた。

遠目からでも、外壁が大きく抉れているのが見えた。
本当に襲撃を受けたのだ。

城壁の近辺には何人ものテンプル騎士団が見回りをしており、容易には近づけそうにない。
モンテリジョーニの北側にある洞窟を目指し、茂みや物陰に隠れて移動する。
先祖の墓のある地下道を通り、ヴィラアウディトーレを目指した。

その地下道は度重なる敵の砲撃による衝撃にか、ところどころ洞窟が崩れて大きな瓦礫が道を塞いでいた。
なんとか開いている道を通り、街に続く入り口へと向かった。
しかし、その先祖の墓の入り口は、大きな瓦礫に阻まれ、通ることは出来ない。
まだ先へと行けそうな道を探し、奥へと進むと、アルタイル像の後ろから聖地へとたどり着いた。
辺りを見渡す。
聖地の壁に何とか松明を灯し隠し扉の前に立った。
壁に耳をつけ、作戦室に誰か居ないか耳を済ませて確かめる。
物音一つせず、誰も居ないと判断して、隠し扉を開いた。
そっとヴィラアウディトーレの庭を出る。
数日もしないうちに酷い有様となった屋敷を呆然として見上げる。
テンプル騎士団の傭兵に気をつけながら、なんとかモンテリジョーニを見渡せないかと屋敷を離れる。
崩れた防壁の垣に身を潜ませて、街の様子を見渡す。

家々は崩れ、瓦礫が道を塞ぎ、時折見回りに通るテンプル騎士団以外は人気が無い。
俺はその光景に身を震わせ、その場で蹲ってしまった。
太陽は照りつけ、先程まで汗をかくほど暑かったというのに、今の俺は体の底から凍り付いてしまったように震えている。
これが現実だと信じたくなくて、膝を抱えて顔を伏せた。
夢であって欲しい。
父や兄弟を失い、その上残った家族がまた窮地に追いやられるなど、もう沢山だ!
何故自分ばかりがこんな思いをしなければいけないのか。
そんなに我が一族は人々の恨みを買っていたのか?その報いを受けているとでもいうのか!

日が落ち、暇そうに辺りをぶらついている傭兵を眼下に、漸く立ち上がる。
ここが未来にしろ現在にしろ、こんなモンテリジョーニを見せられるなど、耐えられない。
テンプル騎士団に対する怒りがまた全身を振るわせる。

全く気を抜いている騎士団の見張りを尻目に、ヴィラへと戻り、隠し扉から聖地へと戻る。
モンテリジョーニから出て、また親切な農夫の家までひた走った。

夜通し馬を駆け、ローマへと急ぐ。
途中で馬を変えて、休息もそこそこに一刻も早くあの男に会うために走り続けた。
母上達の安否も気にかかったが、それ以上に怒りが俺の心を支配していた。
これ以上壊されてなるものか、大事なものをもう二度と奪われてなるものか!
そしてあの男を問い詰めたかった。
きっとあの男はこの何もかもを知っているに違いない。
もしかしたら、あの男が事の元凶なのかもしれない。
剣を突き付けてでも全てを話してもらう。
俺の納得できる答えを得るまで容赦などしない!

街へと入り、記憶を頼りにあの男が俺を連れて歩いた宿を探す。
あの男が案内した道順通りに辿り、目指す宿が見えた。
宿の入り口にはあの男が、まるで俺を待っていたように佇んでいた。

馬を降り男に近づくと、男は俺の顔を見て少々顔を顰めた。
顰めたいのはこちらだ、と一瞬苛つき、しかし無言で男の前へ佇む。
男はその俺の横を過ぎると、馬を厩へと引き、それから俺を今一度宿の自室へと通した。
男が無言でテーブルの上の水差しからグラスに水を注ぐ。
それから俺を感情のない顔で見やった。

「崩壊したモンテリジョーニを見て、状況が多少は分かっただろう。だが先に言っておく。お前は俺の話には納得しない。それでもお前はここで、俺に従わなければならない」
「どういう意味だ」
「俺がこれから話す内容は、俺自身信じられん事だった。しかし元の世界に戻るのには時間がかかる。
そもそも俺はお前を帰してやる事は出来ないから、手立てが見つかるまでは俺に従ってもらう」

有無を言わせぬ物言いに苛立ちが増す。
しかし、男はそんな俺の気持ちなど気にする素振りもなく、また到底信じられないことを言い放った。

「道中、あの農夫達から俺のことを聞いただろう。半年ほど前、俺は襲い来るテンプル騎士団から街を護る為に戦った。だが、完全なる不意打ちだった。体制を整える暇もなく、成す術もなくモンテリジョーニを陥落させてしまった

男の目が暗く影を落とした。
そして男が話す内容は、まるで農夫に聞いた時に男もその場に居たような口ぶりだった。

「混乱しただろう。覚えもないモンテリジョーニの戦闘で、己が最後まで戦い、街の者たちを逃がしたと聞かされた時は」
「や、やっぱりあの農夫とアンタはグルだったのか?!お、俺がそんなことで騙されるとでも
「お前がどう足掻こうと事実は変わらん。どうして俺が過去に戻り、お前を未来に攫って来てしまったのか、俺にも説明することは出来ん。だが、俺はお前だ。23年後の、未来の自分自身だ」
「ふ、ふざけるな!」

男がまっすぐ俺の目を捉える。
至極真面目に、到底信じられないような事を俺に言う。
だが、納得できるわけがない。

確かに見た目は俺に瓜二つだ。
俺が年齢を重ねれば、この男のようになるのだろうと想像できる。
だが言っていることは何一つ道理に適う事がなく、男の言い分を納得する理由もない。
そもそも俺にはやらなければならない事が、討たなければならない敵が多くいる。
こんなところで時間を無駄にしている暇などないのだ!

「だが、そんな事はどうでもいい。とにかくお前が納得しようとしまいと、俺に協力してもらう。ここに居る間、チェーザレ・ボルジアを討つために」
「ボ、ボルジア?!」

男の出した名前に一気に嫌悪感が沸き上がる。
パッツィ家を討つ際に耳にした名だ。
父や兄弟を奪った黒幕。

「そうだ。お前の討つべき仇だ」

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