@acbh_dmc4
目を覚ますと青年が心配そうに覗き込んでいた。
嘗ての年若い自分の顔が未だ目の前にあるという事は、戻れなかったのだ。
思わず呻くような声を零し、顔を覆うように掌を当てる。
頭痛と眩暈で暫く立ち上がれそうもない。
マシになるまではジッとして居たい。
しかし気を失う前に見た記憶は何だったのだろう。
いいや、自分の過去の記憶だという事は分かっているが、それにしてもその記憶が何度も繰り返し流れ込んできた。
そしてこの世界で初めて目覚めた時、先ほど蘇った記憶が一切なかったことに気付く。
この場所から抜け出すために、あれこれ出口を探し回ったのは、チェーザレ・ボルジアを討つ為に他ならない。
まさか既にその憎い仇を討ち滅ぼした記憶が、ごっそり抜け落ちているなんて。
無為に呻いている内に、頭痛が大分マシになったので、ゆっくりと体を起こす。
「大丈夫なのか?大分長い事眠っていたけど…」
「ああ…まだ頭痛がするが、他は何ともない」
青年が気遣わしげに俺の背を擦る。
そして辺りを見回し、俺たちとは少し離れた位置に立つ初老の男へと顔を向けた。
男は俺たちへと背を向けて、隙なく辺りを監視しているようだ。
「…迷惑をかけた」
その背に、少々罰が悪く声をかける。
男はチラリと俺の方を見やると、感情の乗らない顔で一つ頷いて見せた。
「もう動けるのか?」
「ああ、問題ないと思う。先程まで酷い不調を感じていた筈なのに、今はその感覚もない」
「そうか。ならその子と一緒に暫しここで待て」
男はそう言うと、俺たちへ背を向けて歩き出した。
俺は慌てて立ち上がり、男の背を追おうとした。
「待て、俺も…」
「必要ない。一つ確かめたいことがあるだけだ。確認したらすぐ戻るし、お前たちにも意見を聞く。
お前は本当に不調がないか確かめておけ」
反論を許さない厳しい顔で、言い含めるように命令される。
何故だか反発心を持ってしまうが、この男の言う事に間違いがないのは、これまでの出来事で嫌という程思い知っている。
これ以上は失望されたくないと思い、俺は口をつぐんだ。
俺が意識を飛ばしたせいで、男の邪魔をしてしまった事は明白だ。
もし敵襲があった際、意識のない俺を抱え、青年だけで対処できるとは考えず、また青年を視察に遣ることも出来なかったのだ。
ここまで俺を運び、その最中になにがしかの変化を感じても、男は俺たちを庇護し、動くことは出来なかったのだろう。
「…すまない」
苦々しく謝罪を口にすれば、男は困ったように微笑み、そして肩を竦めて見せた。
「あの林檎の力に当てられたのだろう?仕方のない事だ。それよりも、戻った私の指示で動けるよう、万全にしておけ」
男の気遣う言葉に、今度は素直に頷き了承した。
男が俺と青年を残し、軽い身のこなしで支柱を越えて行った。
その後姿を見送ると、緩くため息をつき、青年に向き直った。
一先ず、男の言うようにどこか不調はないか、また俺が意識を飛ばしている間の確認でもしておく事にする。
「…俺が倒れた直後の事を聞いてもいいか」
さっそく青年にそう確認すると、不安そうに俺を見上げてから頷いた。
青年が言うには、エデンの林檎が砕けた直後に俺の体を黄金の光が包み、その輝きが増すと同時に頭を抱えて酷く苦しみだした。
そして俺が意識を手放してすぐに、光は俺の体に吸い込まれるようにして消えた。
地に頽れぐったりとしている俺を、男が素早く抱え上げて青年にこの場を離れようと移動を促した。
それからは時折魘されているようではあるものの、昏々と眠り続けて相当の時間目覚める事がなかったようだ。
「この場所、暗くもならなければ、気温の上下もしないから、時間の流れは分からないけど…でも、もしかしたら丸一日以上経ってるんじゃないかな」
「…あの男とは何か話をしたか?」
「なんで貴方はそこまで導師を疑うんだ?」
「導師」という単語に訝しんで青年を見やれば、呆れたように見返された。
「あの人はアサシン教団の導師なんだって。俺も貴方もあの人もみんな“エツィオ”だろ?
ややこしいから俺も導師と呼ぶことにしたんだ」
「あの男が素性を明かしたのか?」
「いいや、未来の事になるからと、詳しい事は教えてくれなかった。俺は未来とかまだ信じてないけど」
随分と落ち着いて青年が話をする。
時折不安そうな顔はするが、最初の頃程の混乱もないようで、冷静に状況を話す。
俺が眠っている間にあの男に諭されたのだろう。
導師と口にする青年は、彼に心から信頼を寄せている様に見えた。
現状は良く分かった。
あとは体の不調がないかを調べる事にする。
伸びをするように手足を広げ、また屈伸などをして体を温める。
軽い準備運動をしてから近くの支柱に駆け上がって動きを確認してみたが、問題ないようだ。
後は神経を集中させて、鷹の目で周りを見渡してみる。
目を凝らすが特に「痕跡」というものは何も見つけられないが、こちらも問題ないように思う。
支柱から飛び降りて、青年の下へと戻ると、心配そうな顔をしている青年に、もう大丈夫そうだと笑んで見せた。
「お前も、少し休んではどうだ?周囲の見張りで寝ていないんだろう?」
少々申し訳ない思いで青年に確認する。
しかしその途端青年は瞠目して、そしてうろたえる様に数歩下がった。
途方に暮れたような顔で青年が俯く、その様に今度は彼が不調を感じているのだろうかと歩み寄り、その腕を取った。
「どうした?気分でも悪いのか?」
「…い、いいや。疲れてはいない。き、きっと…いつもと違って鎧もつけてないし、武器も、アサシンブレードしか持ってないから…そんなに疲れないんだ…」
そわそわと目を泳がせて沈んだ顔をした青年が、まるで自分に言い聞かせるように呟く。
ここへきてあちこち動き回り、また激しい戦闘を繰り広げていた。
得体のしれないこの場所で神経を尖らせて、日をまたぐほどの時を過ごし、心身ともに消耗しない筈がない。
俺自身、心身を喪失して強制的に休んだとはいえ、その前後にあった出来事での疲労は然程なかった事に気付く。
それこそ結構な重量を持つ武具を着けていないとはいえ、この疲労の無さはあり得ないのではないか。
蒼白な顔をして、鏡合わせのような互いの顔を見合わせる。
背後で軽い足音が聞こえた。
音の方へ体を向けると、初老の男がゆったりとした動作でこちらへと歩みより、俺たち二人を見て怪訝な顔をした。
「どうした?そんな青い顔をして。まさか二人して体調を崩したというのではないだろうな?」
「ど、導師…」
「どうした?またエツィオに苛められたか?」
俺の方にチラリと視線を向けてからお道化て言う男に、思わず顔を顰める。
しかしそれで毒気を抜かれた青年は、少しだけホッとしたように笑みを返した。
「で、何があった」
様子のおかしかった俺たちを見渡して、念を押して尋ねる。
それに青年の方が一歩近寄り、俺たちが気付いた違和感について男に話し始めた。
「俺、この世界にきて随分経つ筈なのに、疲れを感じてない事に気付いて…こんなのってやっぱりおかしいよな…?」
「ふむ、それは番兵に色々ちょっかいをかけていた時に既に感じていた。私は胆力はある方だが、全く疲れを感じないというのは妙だからな」
あっけらかんと肯定する男に、青年はきょとんとした顔になる。
俺は胡散臭そうな顔をしたが、男は青年の訴えを些事であると一蹴した。
「他に問題はないか?ないなら私が見て来たものについて話すが、いいな?」
特に返事は求めていなさそうな物言いで、男が俺と青年の目を順に見て確認をする。
進展がありそうならば御の字と、一つ頷いて男の言葉を促した。
「お前たちがやって来た方角に明らかに周りの意匠と違う建物の入り口が見えた。
見覚えのあるものだ」
「俺たちが来た方角に?」
「エデンの林檎を手に入れたことによって隠されていたものが暴かれたか、もしくは出現したと言った方がいいのかな」
ついて来るようにと男が俺たちを先導する。
俺と青年よりもずっと軽やかに前を行く男に、置いて行かれまいと急ぐ。
道無き道を直線的に進む男は、体力の上限がない事を心得て、敢えて面倒な道でも構わず進む。
体を持ち上げるような瞬発力が必要になる動作も多少負担を感じるが、それが過ぎれば何事もなかったように平静に戻るのだ。
あっという間に俺と青年が出会っただろう場所にたどり着くと、そこ一帯が様変わりしていた。
「どうだ?この意匠は見覚えがあるだろう?」
「……教会…の入り口だろうか?」
目の前には白く短い階段と、柏ノ木の重厚そうな扉があった。
それを男は俺に馴染み深い物であるかのように確認する。
しかし確かに立派な門構えではあるが、他の教会の建物と然程変わりないものに思える。
怪訝に思い、しかし心当たりがないので思った通りの事を口にすれば、男は驚いたように俺を見返した。
「システィーナ礼拝堂の扉に、見覚えはないか?」
「システィーナ…バチカンの?ああ、確かにこんな意匠だったか…あんたにとっては馴染みがあるという事じゃないのか?」
「いいや、そんな筈はないのだが…」
怪訝な顔をする男に、それよりも目の前のいかにもな扉をどうこうする方が先決だと言い含め、これからの動向を話し合う。
闇雲に突っ込んでは番兵の時の二の舞になると、まずは外側から調査する事にした。
「あんたは何か見えるか?」
「うーん、特にこれと言って変わった所は見受けられない。扉を開けてみるしかないか…
エツィオ、お前は反対側を。一番若い方は私の後ろについていなさい」
俺と男で扉の左右を固める。
そっと扉を開け、僅かばかりの隙間から中を覗くが、塗りつぶしたような闇が視界を阻んだ。
しかし思い切って扉を開け放てば、外の光が柔らかくもう一つの扉を照らし出した。
目を凝らし鷹の目で内扉の中を確認する。
別段、何も見つけることは出来ない。
俺は思わず男を見やると、男もこちらに目配せし、小さく頷いた。
「私が先に進む。お前たちはここに残り、外を警戒してくれ」
慎重に足音を忍ばせて男が奥へと進むのを確認し、外へと視線を戻した。
背後でギィと扉が開く音と共に、扉の先からザワザワと喧騒が聞こえて来た。
チラリと男の背を振り返る。
「敵か?」
「いいや、見たところ枢機卿の集団のようだが…外に変化はないか?」
「ありません」
男は俺と青年の言葉に頷くと、意を決したように扉を開け放した。
大きく軋んだ音を響かせて扉が開かれるのと同時に、俺と青年も内扉の方へと振り返る。
「何が起こるかわからんが、一先ず突っ切るぞ」
男の言に頷き、一斉に駆け出す。
途端に目の前の枢機卿達が慌てふためき、「アサシンだ!」と大声で騒ぎ立てて散々になった。
そんな人波をかき分けて、先陣を切る男に続く。
どうも明確な目的地があるようで、その足取りはしっかりとしていた。
白い回廊をまっすぐ進み、天井画の見事な大聖堂へと男が踏み込んだ。
そこに集まる黒衣の修道士たちが、外の枢機卿たちと全く同じように一斉に騒ぎ出す。
だが、兵士のように俺たちに向かって来る者は一人もいない。
誰も彼も恐々とした顔で、遠巻きに俺たちを非難するだけだ。
男はそんな大聖堂をぐるっと見回すと、騒ぎ立てる修道士の真ん中を突っ切り、奥の壇上へと上がりこんだ。
俺たちも男に続く。
すると男は壇上の左奥へと向かい、壁の円状の飾りを調べだした。
「エツィオ、逆側の円の中心を押せ」
「…あ、ああ」
指示されたように壁の円状の飾りの場所まで行き、鷹の目でその飾りを見てみる。
何かの仕掛けがあるのか、どうも外枠に擦ったような跡が見える。
男がやったようにその中心を押し込むと、中央の舞台が大きな音を立てて口を開いた。
背後で怪訝などよめきが沸き起こる。
群衆の中でリーダーと思わしき修道士が、恐々と俺たちに何をしたのかと詰問するが、男はさっさとその中央に現れた階段を下っていってしまった。
置いて行かれぬよう、慌てて男の後を追う。
青年も俺の後ろをついて階段を駆け下りれば、頭上から地響きのような音と共に、入り口が閉まっていった。
先陣を切った男が立ち止まって頭上を確認する。
しかしそれも一瞬の事で、直ぐに興味なさげに道を進んでいった。
「エツィオ、お前、本当にこの場所を覚えていないのか?」
道を進みながら男が俺に確認をする。
この薄ぼんやりとした光が満ちる回廊といえば、チェーザレから奪い取った林檎を安置した宝物庫に似ているなと思う程度だ。
俺はコロッセオから続くその宝物庫の事を話せば、男は怪訝な顔でさらに質問をした。
「では、その安置した林檎は誰から奪ったのだ?」
「誰から?それは、チェーザレ・ボルジアから奪って…」
「その前に、ロドリゴ・ボルジアと対峙したのではないか?」
「ロドリゴ?」
「その様子では、父上や兄弟達がどうやって死んだのかも覚えていないのだな?」
呆然と男の顔を見つめる。
男の言う通り、俺は家族の仇の為に戦ってきた記憶はあるが、その仇が誰であったか、今までどのように戦ってきたのか、記憶がごっそりと抜け落ちていた。
「この場所はそのロドリゴ・ボルジアと対峙し、最初の己の復讐から決別した場所だ。
…忘れもせん、一つ目の過ちでもあった」
「…過ち?」
「私はロドリゴを見逃した。…いや、その時の奴は服毒し、死の淵に居た。私は心を激しい憎しみに支配され、自ら奴の息の根を止めず、そのまま苦しみ抜いて死ねばいいと思い放置したのだ。そのせいでさらなる悲劇を呼ぶとも知らず…」
さらなる悲劇…それがチェーザレによるモンテリジョーニの強襲…。
いや、ロドリゴを見逃すまいと、あの狂気を持った男がモンテリジョーニを襲わなかった保証はない。
だがもしかしたら、それを速めてしまった原因となったのかもしれない。
男からはなんの感情も読み取れない、口調は凪いだものだったが、その過去を『過ち』と評する事が後悔と懺悔の念を感じさせた。
忘れてはいけない記憶なのだ…男は、俺に失望したろうか?
男が先を行く足を止めた。
低く細い通路が終わり、目の前には円形の開けた空間が広がっていた。
どうやらここが終点のようだ。
男が辺りを見回し、そしてその中央の大きく窪んだ広間を覗き込む。
特に目新しい物は見当たらず、周囲の壁を鷹の目で注視してみたが、隠し通路のようなものは見つからなかった。
「ここを降りていけば、何か起こるだろうか…?」
「…起こる可能性はあるな。だが、やはりここもお前が鍵となりそうだ。まず、私が下に降りる。
その次に一番若いの、最後にお前が続け。合図を出す」
的確に指示を出し、男が先に広間へと降りていく。
掘り下げられた広間の中腹まで壁を伝い、そこから男は飛び降りて着地をした。
そして先に男が辺りを探る。
安全が確保されたら合図を出し、青年がその後に続くのだろう。
上から男の動向を見守り、また俺も鷹の目で周囲を観察する。
すると男の後ろをつけるように、空気が淀み歪んだような、なにか半透明の物が見えた気がした。
もっと目を凝らしてその蠢く物を視る。
その何かが手にした杖のようなものが男に向けられようとしていた。
「おい!後ろに何かいる!」
咄嗟に叫ぶ。
男は俊敏に身を翻し、もともと発動させていただろう、鷹の目でその背後の物を視た。
「…っ……!!」
男が咄嗟に横に飛び、受け身を取ってゴロゴロと転がり体を立て直す。
目を鋭く細め、その物を睨めつけて戦闘態勢に入る。
俺は男に加勢しようと広間へ降りようと淵に手をかけた。
「来るな!私でどうにかする」
下へと降りようとすると、鋭く制される。
男の命令に、乗り出しかけた体を押し込め、元の位置へ戻った。
「ほう?見破るとはな、貴様、エデンの欠片を持っているのか?」
酷薄な声が辺りに響く。
そして瞬時にその声の主が姿を現した。
白い衣に赤いマントと帽子を身に着けた老人…そしてその手には教皇の杖が握られていた。
「さぁ、どうかな?」
男が挑発するように手を上げてとぼけて見せる。
その返答に気分を害したであろう老人は、怒りを滾らせこの世の憎しみそのもののような憤怒の顔で男に杖を突きだした。
黄金の光の筋が男目掛けて飛んで行く。
それを寸での所でかわし、さらに老人へと距離を詰め腕のブレードを解放して切りつける。
切りつけられた老人は驚き目を瞠ったが、杖を掲げてまた姿を消した。
男も即座に鷹の目で老人の行方を探し出す。
まるで見合うようにじりじりと半円を描くように歩く。
透明になった老人は、鷹の目で僅かに見えるとはいえ、その姿は捕らえ辛い。
それでも男は杖の放つ力に当てられることなく、確実に避け、また男に一撃を加えようと隙を伺っていた。
「なぁ、俺たちも加勢した方がいいんじゃないか?」
「ああ、だがあの男に考えがあるのだろう。今あの男の意思を無視して降りていけば、足を引っ張りかねない。
あの男から合図があるか、もう少し様子を見よう」
今のところ、教皇の杖を持った老人と互角に渡り合っている…いいや、徐々に男が押してきているのだ。
このままいけば、あの杖を奪えるはずだ。
勝敗の行方を固唾をのんで見守る。
徐々に男が老人と距離を詰め、一瞬の隙をついてアサシンブレードで首を掻き切った。
「う、わっ…!」
その瞬間、隣で青年の叫び声が聞こえた。
同時に青年が広間へと投げ出され、咄嗟に青年の腕を掴もうとしたが、間に合わず真っ逆さまに落ちて行ってしまった。
ドサリと重い音が響く。
ぐったりと倒れたまま動かない青年に、男が駆け寄るのが見えた。
「林檎を持ってきてくれたのだな。さぁ、こちらに渡せ!」
背後から倒された筈の老人の声が聞こえた。
振り向けば先ほどの老人が左手をこちらに伸ばし、狂気の顔で林檎を寄越せと詰め寄って来た。
途端に怒りが心を支配する。
長年の仇を目の前にしたような憎しみと興奮が全身を駆け巡る。
この男を生かしてなるものかと本能が叫びを上げた。
俺は老人をひたと見据え、そして願った。
―――この者に破滅を!
黄金の光が発現し、体の芯が熱を持つような、全身に力が漲るような感覚に包まれた。
その強烈な光に目を覆っていた老人が、光が収まり俺を見ると驚いた顔をした。
「ほぅ、面白いことが出来るのだな…だが、それが何だというのだ!往生際の悪い!」
一瞬だけ強張った顔をした老人が、何を気にしているのかと周囲を見ると俺の周りにはいつの間にか俺の分身が並び、老人を睨みつけていた。
老人が俺が何かを持っているというようにマントの隙間を探る様に見つめる。
だが俺自身、何も所持していない。
林檎は砕けてしまった。
しかしその林檎を持っていないのに、何故今その力を使えるのかと疑問に思ったが、林檎が砕けると同時に記憶が蘇った事を思い出した。
もしかしたら俺は林檎と同化したのではないか。
そんなことをチラリと思ったが、今は目の前の老人を討つ事が先だ。
俺は腹の底から這いあがる嫌悪感に突き動かされるように、老人へと一歩を踏み出した。
「貴様を殺してゆっくりと林檎をいただくとしよう!」
走り出した俺に向かって老人が吼える。
手の杖を地面を抉る勢いで力強く叩きつけた。
杖から黄金の光が放出し地を駆け、強い風が吹き抜けるが、なんの効果もない。
「何故貴様に効かん!」
老人が苛立ち俺をきつく睨みつける。
俺は老人には答えず、分身たちと一緒に駆けだした。
老人が杖を振りかざし、一瞬で姿を眩ませる。
すかさず鷹の目で辺りを探すが、見当たらない。
空間の歪みすら鷹の目で確認することが出来ず、うろうろと辺りを歩き周り、青年が落ちていった広間を見下ろせば、先ほどの老人が青年を掴み上げていた。
「この小僧の命が惜しければ林檎を差し出せ!」
ぐったりとした青年を盾にして男に命令するが、男は無表情に老人を見据え、今にも襲い掛かろうと構えの体勢を取っていた。
「貴様!この者がどうなってもいいと言うのか!」
「さて、その子はもう息がないように見える」
男が冷たく言い放つ。
頭から血を垂れ、ぐったりとした青年は確かに重症に見えた。
今すぐ手当てしなければ、それこそ本当に死んでしまうのではないか。
過去の自分が死ねば、俺や未来の存在であるだろう、あの男にも影響が出るのではないか。
俺は急いで広間へと飛び降りると、男の傍へと駆け寄り抗議した。
「何を考えている!早く手当てしないと本当に死んでしまうかもしれないぞ!」
「どうだろうな?もう死んでいるかもしれない」
「なにを…」
男は興味なさ気にそっけなくそれだけ言うと、構わず老人へと向かっていった。
咄嗟に止めることも敵わず、男は老人へ向けて左腕の鈎の形になっているアサシンブレードで青年諸共首を掻き切った。
老人が再び消え、首から血を流す青年だけが力なくその場に頽れた。
「どうやら私ではロドリゴを倒すことは出来ないようだな」
男が道端に落ちている石でも見るような眼差しで床に転がる青年を見ながら独りごちる。
俺は信じられない気持ちで青年へと近寄り体を抱き上げ、震える手で首から流れる血を止めようと傷口を抑えた。
「何を考えているんだ!何故この子を…俺たちと同じ存在だろう!この子が死ねば、俺たちにもどんな影響が出るか分からないのに!」
「そうか?影響が出そうなのはお前が死んだ場合のように思えるが。
それよりロドリゴ・ボルジアはまだ死んでいない。私では倒せないようだから、お前が何とかするしかないぞ」
愕然として男を見つめる。
この男には感情がないのだろうか?
俺の事もこの青年の事も、単なる駒としか見ていないのではないか。
青年の首に当てている手から、弱々しいが確かな脈を感じる。
どうやら血の量程傷は深くはなかったようで、そっと手を外せば既に血は止まっていた。
念のため青年の口元に手を当てて呼吸も確かめるが、こちらも僅かに息が当たり、安堵の息を吐く。
「くるぞ」
男がこちらを見ずに俺に声をかける。
どうにも抑えきれなくなりそうな嫌悪感と共に、老人を探すために鷹の目で辺りを見回す。
かすかにだが遠くから杖を握りしめた老人がこちらに歩いてきている影を見つけた。
「俺しか倒せないと言ったな?なら、あの男の相手は俺がする。アンタはこの子を守れ」
「死んでいるのでは?」
「まだ息がある。この世界での驚異的な回復力が作用していれば、きっと持ち直すはずだ」
男と青年から離れてもう一度自身の分身を出現させ、老人に向かい合う。
しかし青年を残すことに不安を覚えて男を振り返る。
「その子を見捨てたら容赦しない」
男に向けて凄めば、男は僅かに目を瞠った。
すぐに前方を向き、老人に向かい駆け出す。
先の戦いの番兵のように数で押してやろうかと、大量の分身を作り出すよう念じたが、8人ほどで早々に打ち止めとなってしまった。
俺には御しきれぬというのか。
腹立たしく奥歯を噛み、しかし隙なく老人を取り囲む。
本物の俺を見極め切れぬ老人は、手にした杖の先に光を溜めて、凪ぐように振った。
分身の一人がその杖に軽く触れた瞬間、弾かれる様に地に伏し動かなくなった。
時折床がうっすらと透けて見えるほどに体が消えかける。
成る程、あれに触れてはいけない。
距離を取りながら老人の隙を伺い、其々が斬りかかる。
老人の周りには薄い光の幕が張られ、近寄る俺達を弾き出してしまう。
攻めあぐねて思わず舌打ちすると、老人が高らかに笑い声を上げ、心底見下したように俺達を睥睨した。
「ははは!数人がかりでこの程度か!芸がないのだな。よっぽど先ほどの男の方が骨があった」
俺を煽り隙を作ろうとする老人に向かい、右腕の仕込み銃を掲げる。
周りの7人も俺の行動に倣い、老人に向かって発砲した。
鋭い音が空を震わせ、老人は四方から浴びせられる鉛球に体を折った。
「ぐ、何故だ…何故防げ、なかった…」
老人の体を貫いた銃弾は1発だけだった。
老人の周り、いいや杖の周りには分身が発砲した弾が7つ浮き、そして老人が膝を着くと同時に地面へと落ちた。
やはり俺だけがこの老人に対抗できるようで、老人の胸の中心に打ち込まれた銃創からはジワリと血が滲み出した。
「だが、これで…本物がどれか、分かったな」
老人が手の杖を目の前に構え、俺を指し示す様に一筋の光を放った。
咄嗟に横に転がり光の直撃を避けたが、マントを僅かに光が掠めて布を焦がしてしまった。
分身を俺の下へと集めて紛れる。
しかし的確に老人は俺の後を追い、杖を突き付けさらに光線を連投した。
「無駄だ!本物の姿は杖が覚えた!ほらどうした?どんどん分身が消えていくぞ!」
最期の一人が杖に倒され打ち消されてしまった。
他に分身を作ろうとしても、先に出現した8人以降、1つとして発現させることは叶わなかった。
先程とは逆に、杖を持った老人がじりじりと距離を詰める。
今にもその杖先から渦巻く光がこちらに放たれそうだ。
「侮っていたな。さぁ、これで止めだ!」
老人が杖を振り上げた瞬間に駆け出し、真正面から攻撃を受け止めて杖を奪い取ろうと掴みかかった。
吹き飛ばされそうな程の圧力と、全身をナイフで切り刻まれるような痛みが走る。
体から力が抜けかけ、老人が振り払うように杖を引いたのを感じて歯を食いしばった。
このような痛みを与えられたところで、俺たちは死ぬことはないのだ。
少しでも息があれば、きっとこの身は復活する!
そう心を奮い立たせ、逆に老人から杖を奪うためにしっかりと掴んだ。
力が拮抗し、膠着状態となると同時に、嵐のように周囲を強い風が吹き荒れる。
まるで暴走するように杖から放たれる光が踊り、四方の壁にぶつかって地を震わせた。
半分以上、杖からの圧力に吹き飛ばされないように掴まり耐えている状態だ。
相手も似たようなもので、しかし主導権は渡さんとばかりに杖の威力を更に上げていった。
「くそっ、貴様…手を離せ!」
「フン、離すと、思うのか。貴様を殺し、この杖を手に入れる!どのみちお前だって紛い物だ!」
片腕でしっかりと杖を掴み、左腕の毒ブレードを引き出し老人の肩に叩き込む。
苦痛に歪む老人の頭めがけて渾身の頭突きをした。
予想外の抵抗に杖の力が一瞬弱まり、老人から杖を強引に奪い取った。
奪った杖を後ろに放り、身一つで老人と対峙する。
杖を奪ったからか、銃弾を受けた胸の痛みに顔を歪めて傷を押さえた。
弱り始めた老人の止めをさすため、一気に踏み込んで首を目掛けてアサシンブレードを突き出す。
しかし老人とは思えない俊敏さで俺の攻撃を交わすと、鋭い拳が俺の頭部に振り下ろされた。
寸でで交わしたが、僅かに掠ったその拳の勢いは恐ろしい威力を持って俺の頬の皮を割いた。
血が頬を伝い落ちる。
老人を見れば、今まで杖の力を吸い取っていたのだろう、体から時折パチパチと蒼白い光が走り、弱ったように見えた肉体は力に満ちていた。
間髪入れずに徒手空拳で反撃される。
激しく打ち出される拳を避け、アサシンブレードを突き出して何とか老人を切りつける。
しかし切りつけた刹那、老人の足が猛スピードで俺の脇腹を蹴りつけた。
衝撃に胃液がせり上がり、そして物凄い重みの攻撃に体制を大きく崩してしまった。
間髪入れずに老人の拳が振り下ろされる。
それを小手で防いだが、骨にまで響く衝撃に腕が嫌な音を立てた。
守りに徹していても仕方がない。
老人の捨て身の攻撃を見習って、俺も敵の懐に飛び込むべきだ。
次の攻撃を身を翻して交わしながら、舞を踊る様にくるりと回ってから上体を倒して老人の懐へと飛び込んだ。
俺の動きに一瞬面食らった老人は、しかしその強靭な腕を俺の頭部目掛けて振り下ろした。
心臓を狙い、胸の中心へと深々とアサシンブレードを叩き込む。
それと同時に老人の拳が後頭部へと振り下ろされ、頭蓋を砕かんばかりに殴打した。
だがこの世界は気の持ちようで無敵になれるのだ。
かなりの強い衝撃に、一瞬にして意識を持って行かれそうになったが、気合で踏みとどまり息を吐いて心を落ち着ける。
すると先程殴打された際のダメージが和らいだ。
先にへし折られた腕も既に再生されているのだ。多少頭を打った程度でどうにかなる訳がない。
逃げを打つ老人の肩を掴んで何度も何度もアサシンブレードの刃を胸に叩き込んだ。
老人の切り裂かれた胸が、血の代わりに眩い光が漏れ出し、苦悶の表情を浮かべてまるで内側から爆発でもするかのように瓦解し始めた。
辺り一帯に身の毛のよだつ悲鳴が木霊する。
老人のその身が崩れるのと同じくして周りの景色もまた崩れ始めた。
天井が割れ、壁が剥がれて杖へと吸い込まれる。
あっという間に周囲は見慣れた白い空間へと戻っていた。
目の前にいた老人の姿は塵のように消え失せ、掴みかかって握り締めていた掌を開けば、フワリと小さな光が舞い上がった。
遠くに放りやった杖を手に男へと振り向く。
どうやら俺の要望を守ってくれたようで、俺と老人の戦闘に巻き込まれないよう、青年を抱えていつでも動けるようにこちらを伺っていた。
二人の下へと急いで戻る。
男は注意深く周囲を見回し、異常がない事を確かめてから青年を地に下ろした。
「どうやら、お前の言うようにこの子は無事息を吹き返したようだ。今は気持ち良さそうな寝息を立てている」
切り裂かれた筈の首元を見やれば、うっすらと赤いひっかき傷が見えるのみで、完全に治っている。
そして血に濡れたはずの白い襟には血染みすら見当たらない。
顔色もよく、青年の安らかな寝息が怒りに満ちていた心を落ち着かせてくれた。
息を吐いて杖を脇に置き、座り込んだ。
男は立ち上がったまま、引き続き周囲を警戒している。
そんな男を見上げて、俺は苦々しい思いを抱えて質問してみることにした。
「何故、この子を見捨てようとしたんだ。俺たちを駒としか見ていないという事か」
「何故、か。その子が本当に死んだと思ったからだ。あの高さを頭から落ちてしまった。すぐさま駆け寄り息を確かめたが…確かに即死だった。首の骨が折れ、呼吸もしていなかったのだ。
まさかその状態から持ち直すと誰が思う」
「…だからこの子諸共敵を切りつけたというのか?」
「この子もお前も、私の過去の姿をしている。そんな存在を他の者に蹂躙されたくなどない。
ましてや、ロドリゴ・ボルジアになど…」
男が怒りの炎をその目にチラつかせ、吐き捨てる様に言う。
この男の思いは、エデンの杖を…過去の記憶を受け入れれば理解できるのだろうか。
思わずチラリと杖を見やると、男も杖を一瞥して念を押した。
「分かっているとは思うが、これを取り込むのはその子が目を覚ましてからにしろ」
「…ああ」
この男が俺を裏切らないとも限らない。
内心言われずともそうすると毒づき、男の言葉に素直に頷いて青年の隣に腰を下ろした。
***
見張りを交代しつつ休み暫く、青年がゆっくりと目を覚ました。
ぼうっと呆けたように一点を見つめ、次いで俺や男を見やって眉根を寄せる。
きっと俺と同じように、元の世界に戻れていないのを察し、残念に思っているのだろう。
「大丈夫か?どこも不調はないか」
青年を案じてそう問えば、小首を傾げてから体を確かめ、そしてよく寝た、と言わんばかりの伸びをした。
「んー、何処も…多分大丈夫だ」
青年の顎を取り、首筋を確認する。
男に傷つけられた傷は跡形もなく消えていた。
「な、何…?」
青年に驚いた顔でまじまじと見つめ返され、思わず失笑した。
すっかり元通りのようだ。
俺が笑った事に目を白黒させている青年の頭をぐりぐりと撫でる。
不思議そうにこの状況を尋ねる青年に、掻い摘んでこれまでの出来事を話して聞かせた。
意識のない間、男が老人諸共青年を切りつけた事を話して聞かせると、青年は目を瞠り男を振り返り言葉を無くした。
そして自分の首へ手を滑らせ、傷を確認する。
「ここに居れば体力どころか、傷も完全に治るようだ。今、お前の首には痕すら残っていない」
「…そ、そうなんだ…」
暗い顔で俯く。
懐いていた男の裏切りにショックを受けたのだろう。
しかしそんな青年の事には構わず、男が脇に置かれたエデンの杖を拾い上げて、それを俺に渡した。
「ではエデンの杖を」
俺が杖に触れた途端光が踊り、思わず手を放しても杖は倒れることなく、まるで差し示す様に一筋の光が俺の胸部を射した。
再度記憶の濁流に飲まれる。
先程の老人―――…ロドリゴ・ボルジアとの死闘が蘇る。
数十年にも及ぶ長い戦いだ。
相変わらず、きっかけとなった家族の最期だけを取り残して、どうやってロドリゴを追い詰めたかを思い出す。
全て終わっている事なのに、悲しみと憎しみが生き物のように心にとぐろを巻いて締め上げる。
また同時に襲う頭痛や吐き気に耐えて、膝を着いた。
「…大丈夫、か?」
青年が俺の肩を抱いて気遣ってくれる。
その肩口に頭を持たれかけさせてもらい、暫し寄りかかる。
青年の体温が、怒りと苦しみに震えていた心と体を僅かばかり和らげてくれた。
今度は意識を飛ばすことなく耐えきり、疲労を落ち着けるため青年の肩で暫し休んでから顔を上げた。
青年の肩越しに今まで様子を見ていたのだろう、壁に背を預けていた男と目が合った。
底冷えする瞳が俺と青年を見下ろしている。
その深淵のような暗い榛色に凍り付いた。
「すごい汗だ…拭くものあったかな」
青年が朗らかに独り言ち、体を離して後ろ手にポーチを漁って視界が遮られた。
ごそごそと動く青年の無防備な仕草に、再度安堵の息を吐く。
適当な布が見当たらなかったのか、青年が申し訳なさそうな顔をして、自分の腰から垂らしている飾り帯を握って顔を上げた。
「これを使え」
男が見かねたように青年にさらりとした白い布を差し出した。
青年が礼を言い、俺の額をその布で拭ってくれる。
しかし俺は先程差し出された男の手を凝視し、胸の内に沸く不快感に体を震わせていた。
突如として甦る記憶のように、節くれだった男の手が俺を締め上げている光景が浮かんだ。
その手が酷い苦痛を齎し、俺を引きずり込もうとする。
俺は必死に抵抗し、その手から逃れようとその腕を掴んで引き剥がそうとしたが、締め上げる力が増し意識が朦朧となった。
苦しみに潤む瞳で、何とかその腕の先を見ようと顔を上げたが、世界が歪んで全てが白に覆い尽くされた。
ハッと勢いよく顔を上げると、目の前には心配そうな青年の顔があった。
俺の目の前を何度か青年の手が振られ、俺の気が確かか確かめているようだった。
先程のものは白昼夢だったのか?
フゥと長く息を吐き出して頭を振る。
そんな俺の様子に青年と男が顔を見合わせてから、心配そうに男が俺の顔を覗き込んだ。
「本当に大丈夫か?無理をするな。そんな事では何かあった時に対処できないだろう?
少し横になって休んだ方が良い」
先程見えた冷めたような眼差しはどこにもなく、人好きのするような優しい顔で諭すように言い聞かせる。
しかしその姿が演技のように見えて警戒心が高まる。
どう答えていいのか戸惑い黙っていると、男が困ったようにため息を吐いた。
「…お前は、私が心底信用できないようだな。まぁ、初めて出会った時から対応を間違えた事は自覚している。お前達は私の過去だからと、雑に扱ってしまった。
そもそも私は疑り深い性質なのに、これでは疑ってくれと言っているようなものだったな」
自嘲気味に笑い、独り言ちる様に呟く。
しかし男は真摯な顔になると、俺たちを見据えて続けた。
「だが誰が敵かわからない今は、全てを疑ってかかるべきだ。私の事も、無論その青年も…」
青年に視線を向けた男の目が細まる。
まるで標的を前にしているかのようなその表情に、青年が青ざめる。
男の視界から青年を隠す様に立ち塞がり、俺も睨むように男を見据えた。
「ではそうしよう。俺の方が貴方の敵になり得る。よっぽどこの青年よりもな。
だが、エデンの欠片を全て集めるまでは保留としよう」
「ああ、それでいい」
互いに全ての欠片を集めないことには打開する術はないと理解して、この不和を今は見ないことにした。
前の話 もくじ 次の話