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Eden 6

全体公開 8535文字
2019-08-22 22:55:46

第6話「始動」

Posted by @acbh_dmc4

エツィオは林檎に触れている、もしくは身に着けていれば彼の意思を取り戻せるようだった。
しかし、彼の体を構成するコードを破壊されてしまったために、復旧には時間を要して満足に身体を動かせない状態だ。
ベッドの上で気だるげにするエツィオに林檎を渡し、これからの事を話す。
時間が足りないかもしれないが、なんとかエツィオを修復し、また共にこの世界が終わるまで自由に羽を伸ばしたい。
修復のために彼の体に触れて直接コードの書き直しを行った。

「ここでの生活が長くなれば、それだけこの生に執着が増す俺がこうなったのは、もう潮時という事ではないか?」
「馬鹿を言うな。お前はまだ消滅してはいないし、手遅れでもない。このメモリーにいる限り、器に負担はかからないのだから諦めるな」
「だが貴方と二人で、ここで過ごした穏やかな日々は楽しかった。俺はこの生活が終わってしまうのが消えてしまうのが怖いそれをずっと持ち続けることなど
幻のようなこの生に、虚しさを感じていてもか?」
「そうだな。だが、貴方だってここで生きる事を選んだ」

エツィオは修復のために触れている私の手に手を重ねて優しく握りこんでくれた。
仕方がないという風に笑って見せる彼の優しさに胸を打たれる。
彼は巻き込まれた理不尽さに怒りをぶつけるよりも、私が独りこの世界で覚えた孤独を正確に理解し、赦してくれたのだ。

勝手だとは理解している。だが、もう少し私に付き合ってほしい」
「本当に、酷いひとだ

消えてしまいそうなほど果敢無く微笑み言う彼の声は、何処までも優しく私を赦してくれていた。



病床のエツィオを治療するような生活を続け、少しずつ力を取り戻してゆくエツィオと穏やかに生活しながら毎日を過ごしていた。
あれからジュノーもメインサーバーから動く素振りはなく、しかしその気配だけは常に感じていた。
このメモリーが脅かされなければ今の所問題はない。
もしメモリーを追い出されたとしても、あと少しでエツィオの体は外の世界に対応できるだけの強度を得ることが出来る。
そうエツィオを励まし、そして彼の治療を行う最中、予兆もなく私の体に異変が起こった。

治療を終えて午後のティータイムの準備をしていた時だった。
掌からカップが滑り落ち、床に叩きつけられ砕け散ったと同時に手足が痺れたように動かなくなり、辺りの風景が消去される直前のように揺らめいた。
意識が遠くなり、心臓が熱を持ち肥大するように内側からせり出てくる感触に吐き気がした。
遠くで私を呼ぶエツィオの声が聞こえるが、答える事も叶わず苦しみの内に意識を手放した。


次に目を覚ました時は、私はエツィオの腕の中にいた。

エツィオは蒼白な顔をして、辛そうに肩で息をし、私の様子を確認していた。

彼に何があったかを聞くに、どうやら私の中にある自爆コードが発動しかけたようだった。
幸いそのコードが発動する直前でエツィオによって止めてもらえたのだが、その際エツィオは膨大な出力を要して消耗していた。
礼を言って起き上がり、自身にシステムチェックをかける。
幸い自身に破壊されたところはなく、周囲を巻き込むためメモリーを崩壊させようとした事で辺りは酷いことになっていた。

「倒れる直前風景が歪んでいたが、お前は大丈夫だったか?」
「俺は平気だ。メモリーも多少巻き込まれたが、崩壊は止めた。ただ、“止めた”だけだから、外がどうなっているかはわからない」
……そうか、面倒をかけた」

念のため家の外へと出ていけば、まず空に巨大な歪が生じていた。
ブラックホールのような真っ黒な穴は、メモリーの外の空間が見えており、人々の挙動も異常を現していた。
空中を漂う民や、天空を貫くように伸びあがった家のテクスチャがまるでこの世の終わりのようで禍々しい。
隣で同じことを思っているだろう、エツィオも引き攣った顔で辺りを見回していた。

検分を終えて部屋へと戻る。
このメモリーを修復するよりは、他所へ移ってしまった方が良いかもしれない。

「いっそ、サーバーも移動するか。馴染みのあるローマではなく、どうせなら他の国のメモリーへ」
「他のアサシンのメモリーに入るのか」
「ああスパイウェアとしての活動もしなければ、内から破壊されかねない。
サーバーを渡り、暫くは有益なようだが教団が動く事は出来ないような情報を流す」
「どんな情報だ?」
「アサシンのメモリーだ。『エツィオ・アウディトーレ』のメモリーは飽き飽きしているだろうから、それ以外のアサシンのメモリーを調べる。ただ、外にデータが漏れていると気付かれるリスクをあまり負いたくない。発信するスパンを限界まで延ばそう」

言うと私はエツィオの治療を速めることにした。
気付かれるほどの出力が出たとしても、早急にこのメモリーから出ていくのだから問題ないだろう。
器の強化を行っている最中、目を伏せているエツィオを見つめる。
彼をこんな理不尽な世界で、誰にも知られず失う事がどうしようもなく我慢ならない事に思えた。

「エツィオ。死なずに済む方法を一緒に探そう」

思わず、彼の両手を握りしめて思いを告げた。
しかしエツィオは急な私の提案に面食らい、また直ぐに諦めたように緩く首を振った。

それが無理だという事は俺も理解している」
「それでも、私はお前と共に生きたい。だから、そのために足掻こう。私に力を貸してくれ」

エツィオは私の懇願に驚き、そして戸惑うように瞳を揺らした。



*****

色々なサーバー内を渡り歩いていると、存在を知らしめるように他者のサーバーへのハッキング記録がそこここに残されていた。
ここまで派手に動き、対処されない事に違和感を覚える。ハッキングしている内容は私が前に見つけたデズモンドの検死記録や、初期のアニムスのデータ等、どれもアサシン教団の欲しがりそうなものだった。
それにしては偽装もお粗末な事と、これだけ派手に動いているにも関わらず、未だ捕まらないハッカーを考えるに、内部に手引きをしている者が居そうだ。
今まで私が見逃されていたのもその者の仕業かまた、私を作り出したのも、その内部手引きをした者なのかもしれない。

私は独自にハッカーを探すうち、調度セキュリティを破られようとしているサーバーに出会った。試しにその無法者の端末へと入ってみる。
その者は現在、カリブ海を傍若無人に暴れまわるアサシンのDNA解析を行っており、またそのシンクロ率は非常に高い精度を持っていた。
暫く動向を見ていたが、どうも彼自身はアサシン教団の者というわけではなさそうだ。
更に興味を引かれ、そんな彼のメモリーへと干渉する。
海の荒くれ者達は、まるで私が接してきた事のない人種の集まりで大変興味深い。
彼はエドワード・ケンウェイとの相性が良いらしく、次々にDNAの鮮明な解析を行っていった。


私たちの拠点となるメモリーを彼のサーバーに決め、私はエツィオを伴ってケンウェイのメモリーへと入り込んだ。

およそ私たちは荒くれ者の中で生活するには品が良すぎた為、ハバナの街中に自宅を構え、時折ケンウェイの様子を窺った。
また屋敷には誰も近寄らぬよう設定を行い、この時代の人間がどのような生活を送っているのか観察することにした。それでなければ直接解析者であるケンウェイの船に乗ることは出来ないと考えたのだ。

「フィールドの全体像を確認したが、このメモリーは随分と広いな」
「ああ、だがまだ拡がりそうな気がする。次のケンウェイの目的地はナッソーだ。このメモリーで7つの海を制覇できるかもな」

解析者がメモリーに入れば船員の視点を借りて彼らの動向を探る。
私は時折アドウェールの身体を借りて戦闘に加わったり、エツィオも船員の一人を補佐したりしていた。
そうして海賊達の中で活動していき、どういう立ち居振舞いをすれば回りに溶け込めるかを学習すると、姿を変えて彼らの仲間になりカリブ海を暴れまわる一団に加わった。
やはり自分の身体で活動できるのが一番良い。ケンウェイに着いていけないときは他者の視点を借り、彼の補佐をするが、彼が船に戻るとまた主要な彼の仲間の姿を借りた。
しかし、何故か私もエツィオも姿形を変えて荒々しい海賊として活動しているのに周りから浮いてしまっているようだ。
先ほども些細なことで他の船員に馬鹿にされ、海賊らしく喧嘩を買ってぶちのめしたのだが、周囲は扱い辛そうに私たちを遠巻きに眺めるだけだった。

「どうにも、こう荒っぽい生活は合わない気がする

船内の簡易な寝台に横たわったエツィオがぽつりと零した。
喧嘩の後、仲裁に入った仲間に私とエツィオは休むようにと船内に押し込まれ、今は二人きりだ。
過酷な船上での活動に疲弊することはないのだが、未だ周囲に溶け込むことが出来ずに苦心している。
そろそろ次の港で追い出されるか、夜襲にでも合うような気がする。

「結構長い事船上に居るし、そろそろ拠点に戻るか?ここは確かに気が休まらないからな」
「そもそも俺たちは馴染めていないだろう。水を飲んだだけでお上品ぶってるなんて言われるんだから
口汚い侮蔑の言葉に腹は立ててなくとも海賊らしく喧嘩を買っても、悪いのは俺達みたいな雰囲気だ。しかしこれでは解析者に疑われるのも時間の問題だろう」
「確かに他の船員たちは私たちを扱い辛そうにしている。気ままな船上生活もたまにはいいかと思ったんだが残念だが降りる他なさそうだな」

私の発言にエツィオが片眉を上げ、呆れた視線を寄越す。
気ままというよりは倫理観を投げ捨てて暴虐の限りを尽くす生活であるため、確かに私たちの矜持からは著しく剥離している。
それでも私は"ケンウェイ"の名に、かつて解析されていたコナーとの繋がりを見て、彼の人生に興味を抱いた。
実直で真っ直ぐな、不器用な青年にエドワードが重なる。
今は割とどうしようもないが、アサシンとしてのメモリーに居る彼の記憶が、これからどういった道筋をたどるのか興味があった。

「アンタとは時折意見が合わないな。同じ"エツィオ"の記憶から生まれたというのに
「システムの影響を受けているのだろう。私も"エツィオ"の思考からは離れてしまった自覚はある。
下世話だが、他者の人生とはどんなものか"エツィオ"とは違うメモリーに興味がある」

納得しかねる顔のエツィオに私の思考を分かって貰う必要はない。
同じ元のメモリーより生まれたのだとしても、体は分かれて存在しているのだ。
記憶の差異をつけたのも、己であって己ではない、別人としての彼を求めた結果だ。
だがこれが彼の意に添わぬというのなら、少々残念ではあるが空間だけを借りて、元の穏やかな日常に戻っても良い。
そう提案しようとしたとき、エツィオは緩く息を吐き出し子供の我が儘を聞いてやる大人のような口調で付け足した。

他にやる事もないし、アンタが楽しいって言うなら付き合ってやるよ」
「良いのか?」
「俺が心配しているのは、解析者に感づかれてここを追い出される事だ。随分と荒っぽい生活ではあるが、物珍しさがあるし、嫌という訳ではない」

ぶっきら棒に言ってからエツィオは目を閉じた。


その後、やはり夜襲を受けて二人揃って夜の海へと投げ捨てられたのを期に、ハバナでの気ままな生活を送ることにした。
勿論、ケンウェイの動向は常にチェックして、自宅のリビングのプロジェクターで随時放映していた。
気が向けば戦闘だけに加わり、船上生活をちょっとだけ味わいたいときは休憩に入る船員の体を借りて船上で日向ぼっこをしたりと楽しんだ。
またケンウェイのメモリーにひきこもる事はしない。
私は時折メモリーの外へと出て、何か目新しいものはないか探った。
エツィオはジュノーに傷つけられた経験からメモリーの外に行くのを渋った為、私一人でサーバー内を移動する。
例の得体の知れない気配を感じるサーバーは避け、情報を収集していく。
ケンウェイの解析を行っている者もあちこちの端末をハックしているため、彼のメモリに残ったエツィオが記録を取ってくれていた。
私も得た情報は彼に直接送っているが、私はそろそろ外への繋ぎを作ろうと考え始めていた。
私達が生き残るため、力になってくれそうな者を探す。
あらゆる解析者のデータを確認し、また彼らの行動を分析して目星をつけた者たちの端末に私の分身を作って更に監視する。
通信記録なども全て掌握し、一律の行動を起こす者達をリストアップした。

リスクばかりが大きい賭けではあったが、ある種の確信を持って私は計画を立てた。
準備は十分にした。あとは動き出すだけだ。

「エツィオ、この者たちに接触しようと思う」

エツィオに私がやろうとしていることを打ち明ける。彼も私が何事かを計画していることは分かっていたのだろう。
狼狽えることなく、少しだけ諦めたような顔をしてため息を吐いた。

「接触してどうするんだ?それに何の意味が?」
「アサシンを探すためだ。このリストの者たちはアサシンが送り込んだ可能性が高い。
教団の者に我々の有用性を認めてもらえれば、彼らの元に保護してもらえるかもしれないだろう?
使い捨てではなく、恒久的に使える事を示せば突然終わる事もない」
「リスクが大きすぎるのでは?もしそれで危険だと判断されたらどうする」
「危険は承知の上だ。だが動かなければ必ず我々は終わる。私はお前を生かしたい。それに、そう約束した」

エツィオは不安そうな面持ちで俯いた。
終わりを恐れる心を持ってしまったがために、私も彼も酷く心を揺さぶられている。
しかし、手ずから作り上げた私の子とも呼べる彼を、自身の存在以上に失いたくなかった。
今や互いにそう思い合っている事は、二人とも知っていた。

「慎重にやる。ついて来てくれるか?」
……俺に出来る事はあるか」

私を決意の籠った目がまっすぐ見据えた。
一つ深く頷き、彼にケンウェイの解析者と彼に指示を出しているだろうジョン・スタンディッシュの監視を指示した。



*******


目星をつけた解析者のメモリーに歩み寄り、宙に浮く映像に手を伸ばす。
水面に腕を浸けるような、少しの抵抗を感じるが、私の体をこのデータに慣らして、ゆっくりと入り込む。
そしてかつての私の姿形をしている、アブスターゴの裏切り者の前へと降り立った。

!!」

私の姿をしている別人が、驚愕に顔を歪ませ、飛びずさる。その動きはアサシンそのもので、確かな実力を感じさせた。
私は満足して思わず笑みを浮かべると、警戒したその者が僅かに後退した。
その者の動きを封じる。急に反応しなくなった体に驚き目を見開いた。

「そのままでは意思の疎通が出来ないだろう。今、喋れるようにしてやる」

“エツィオ”のシナリオから大きく逸れる事がないよう、この世界の“エツィオ”を演じる者達は決められたセリフしか話すことが出来ない。
それでは交渉出来ない為、発言を許す権限を与えた。

「初めまして。私はエツィオ・アウディトーレ。君たちの教団の嘗ての長だ」
「これはバグ、か?」

目の前のアサシンが狼狽え、シンクロを解除しようとシグナルを送る。
私はすかさずアサシンの脳波の測定に干渉し、この者が目覚めるのを阻止した。

「一つ脅しておこうか。今アニムスから出れば、君の体と精神は分断され廃人となるだろう。
だが私はただ話がしたいだけだ。ちゃんと聞いてくれれば危害は加えない」
「な、何故……お前は一体
「なに、簡単なことだよ。私は君の仲間のアサシンがアニムスに仕掛けたスパイウェアだ。
君の端末にこのフェリックスサーバーから得た情報を送っておいた。メッセンジャーを呼んであるからこのデータを届けてくれ。頼んだぞ」

一言それだけを言いつけると、私はシステムを元に戻し、アサシンをメモリーから出した。
何人か目星をつけた者たちに同じようにそれぞれデータを送り、協力を仰げるようこちらが味方であるように振る舞う。

そして彼らの端末を引き続き監視し、彼らが本当にアサシンであるかも確かめた。
パターンを分析して厳選した数人の者達は、皆アサシンで間違いないようだった。

エツィオの待つメモリーへと帰り、この度の成果を報告する。

「外のアサシンと接触することが出来た。候補者の全てが間違いなくアサシンだ」
「こちらは今回レベル2の権限を与えられて新たなエリアの解析者の端末を幾つかハッキングしていた。あと、ジョンは賢者と酷似している。
もし先駆者と何か関連があるとしたら早々にアサシン教団に確保させた方が良いかもしれない。どうもあの者は教団の命で動いているわけではなさそうだ」

それを聞いて何故だか掌にジワリと汗が浮かび、胸中がざわめいた。
経験に裏打ちされた、エツィオとしての感覚が警鐘をならした。何か良くないことが起ころうとしている。

「ハッキング記録は見たか?」
「ああ。アサシンの批評やアニムス使用記録等を抜いていた。あと一つ興味深いプロジェクトがあった。アンタが好きそうな奴だな」

エツィオに言われ、データを確認する。
音声データや我々の評価について目を通す。
敵であるアサシンに対し悪意があるのは分かるが、私の評価に関しては少々笑ってしまった。
元々好色な方だと自覚はしているが、事実とは反しているただの悪口だ。
同じく一緒にファイルを見ているエツィオも苦笑する。
しかし気になるのはアブスターゴ計画やふさわしい指導者という単語がしばしば使われることだ。
これではまるで、我々アサシンから優秀な者を選び、発現させようとしているように聞こえる。
ざっと新しく取得されたファイルを見てから、エツィオが問題としたプロジェクトファイルを開いた。

『フェニックスプロジェクト草案』
被検体17号、デズモンド・マイルズ の貴重な遺伝子情報からわずかに検出された3重螺旋のDNAについての研究論文が並ぶ。
先駆者の特徴である3重螺旋。それを解読できれば先駆者を作り出し、大いなる知識を手にすることができるとの記述があった。
まだ実験段階ではあるが、デズモンドのDNAからクローンを作成しており、現在既にプロジェクトが走り始めているようだ。
今、天啓のように私の目の前に希望の光が齎された。

いいや、このアニムスに巣食う一スパイウェアの私達が外の現実世界に出現することは不可能だ。
だが私たちの意思は作ることが出来る。
何の記憶も保持せず、真っ新な脳を持つ生体をアニムスにかけ、私のデータをインポートすれば生身の肉体に私のコピーを作ることが出来るのではないか。
外に私を作れば自己破壊プログラムを外す為、分身を作る事に腐心することもない。

現実世界に再び生まれ落ちる。そんな魅力的な閃きが私の心を激しく震わせた。

「このプロジェクトは特に良く監視する事にしよう。監視用の分身を作り、見張らせ、また進展がないか徹底的に調べさせる」
「俺も考えなかった訳ではない。貴方に知らせれば、受肉を望むとわかっていた」
「それの何か問題はあるか?」
「ああ。デズモンドのDNAを使って完成するものが不完全なモノかもしれない。特に通常のクローンを作るわけではなく、3重螺旋構造のDNAを持つ先駆者を創ろうとしているんだ。人とも言えぬクリーチャーが生まれることだってあるだろう。そもそもクローンも成功するかわからない。この計画は現実的とは言えない」
「勿論経過を観察し精査する。通常のクローンの作成にも至らなければ、最初のプランで行く。ただ、選択肢は多い方が良いだろう?」

エツィオは無表情にジッとそのファイルを見つめ続けた。彼の中で何か引っかかるものがあるのかもしれない。
私も急に齎された僅かな光に浮かれ過ぎていたのかもしれない。一度落ち着かねばと頭を振り、気持ちを落ち着かせるよう努めた。
そもそも、外に肉体を持ったとして、エツィオとの約束は果たされない。
飽くまで私とこのエツィオが生き延びる。それを第一に考えるべきなのだ。



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