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Eden 8

全体公開 3765文字
2019-10-12 18:57:12

第8話「アサシン」

Posted by @acbh_dmc4

アサシン達の動向は何か動きがあれば対応できるように、端末上だけではあるが常に監視している。
私が一際目をかけているアサシンが他の者にコンタクトを取った所でDMを送ると、あちらから会いたい旨を返された。同行させたいと言われた人物は一度精査して、アサシン側ではないと判断を下した者だった。
今度は2人のアサシンと同時に接触するため、専用のVRルームを作り上げた。

アサシンと新顔の男が私の作り出した仮想空間にアクセスしたのを確認し、二人の目の前に出現する。
急に目の前が白く光り輝き、それが徐々に人の形を成すのを一人は期待の籠った眼差し、もう一人は警戒もあらわに見つめていた。

「導師!」
「やぁ。まさか本当に協力者を連れてくるとはな

注意深く新顔を見つめる。
彼は最近入って来た技術者で、テンプル騎士団に忠誠を誓っていると思っていた者だ。
アサシンからの報告で彼の素性を調べたが、巧妙に隠された彼の素性は生粋のテンプラーと言っても差し支えなかった。

「俺はテンプル騎士団に加盟しているし、偽装は完ぺきだったはずだ。何故分かった?」
「勿論君の事は隅々まで調べさせてもらったが、これと言って注視はしていなかった。気付いたのは、彼の能力だ」

そう言ってアサシンの肩を優しく叩けば、嬉しそうに顔をほころばせた。
私の前ではそこまで取り繕わないが、現実世界ではよくやれているのだろう。
受ける報告からは成長も見受けられていた。

この者に掴まれるとは想定外だった。で、その結果を齎した存在に興味を持ったのでここへ来た」

真に味方という訳ではない。
今更ながらにそれに気付いたアサシンが気まずそうな顔をし、私の顔色を窺う。
だが、危ない橋を渡っているのは今更だ。
相手がアサシン教団であるというのなら、ここは私の命よりも彼達を優先するべき演技が必要になる。

「私が脅威であるかを見極めに来たという所か」
「既に脅威であると考えている。貴方は自分の事をプログラムだと言うが、それにしては不自然なことだらけだ。
エツィオ・アウディトーレのデータを被った外の人間であるという方が納得できる」
「ふむ、一プログラムが豊かな感情と、不確かな指示を出すというのは不自然だろうしな」
「で、では、導師は本当は外に居られるのですか?」

驚きに目を見開き、私を信奉するアサシンが期待の籠った疑問を投げる。
しかし、探られようとも私の生きる場所は此処でしかない。

逆探知をしているな?それで、通信者は見つかったのかな?」
……いや、だが巧妙に隠しているかもしれないだろう?」
「君が納得するまで探らせてやりたいのは山々だが、私達には時間がない」

にべもなく言い放つと、私は男に向かって一応の説得を試みることにした。
私とて男を信用していないと態度で示しつつ、ハラハラと成り行きを見守っているアサシンを落ち着かせようと視線を交差した。
疑い深く私を睨みつける男に体を向け、慎重に言葉を選ぶ。  

「私はジョン・スタンディッシュによってプログラムされた。彼は賢者で、おそらくは先駆者であったのだろう。
プログラムがここまでの意思を持ったことには私自身、驚いている。現代の人間の技術ではまだまだ実現は難しい事だろう。
警戒するのは分かる。そして今回お前たちとの会合に応じたのは、彼を思い止まらせて欲しいからだ」

アサシンを指し示し、困ったようにため息を吐く。
指し示されたアサシンがきょとんとした顔をして私を見つめた。

「お前は教団の意向関係なく、エツィオ・アウディトーレを蘇らせたいと言うのだろう?
デズモンドやジョンの遺伝子から作られる試作品を破壊せずに奪うと言うのは、出来るのならば良いが、リスクが大きすぎる。現実的ではない」
「ですが、伝説のアサシンである貴方が蘇れば、アサシン教団もきっと盛り返すはずです!
貴方は人間離れしているし」
「それで兄弟を危険にさらすのは間違っている。あとな、メモリのエツィオの事を言っているのであれば、あれは大いにアニムスによって補助され、スムーズに話が進むように改変されている。
私はあんな化け物ではない」

ぶふっと会話の外に居た男が、私の最後の一言で盛大に失笑する。
彼も私のメモリーについては解析したかメモリーを閲覧したことがあるのだろう。

「確かに何処の高性能サイボーグかと見まがうくらいの追跡能力を持っているとしたら化け物だな。鷹の目といったか」
「そもそも鷹の目と言うのはアニムスによる補助だ。先駆者の遺伝子を多く引き継いだ人間は第六感が働くようだが、私にはそれがなかった。その代わり、私は周囲に恵まれていたし、感は良い方だが人の範疇だよ」
「だが勢力としてはそれほどでもなかったアサシン教団をあそこまで大きくし、テンプル騎士団を壊滅させた時点でとんでもないやり手ではある」
「そうです!導師は本当に素晴らしい方だ!」

男が笑いながらアサシンの肩を持つ。
優秀である事を否定はしないがと言葉を濁せば、我が意を得たり!と言った風にアサシンが胸を張った。
あまりの盲信ぶりに男は呆れたようだが、一瞬考える素振りをして口を開いた。

「正直、現代にエツィオ・アウディトーレが蘇ったらどうなるのか興味はある」
「私情と言えば私情だが、導師を蘇らせれば確実にアサシン教団にとっても力になる。それにこのままでは導師は使い捨てとしていつ破壊されるか分からないんだ。勿論電子の貴方の事も助けたい!有能な導師のような方が複数いる方が、よりテンプル騎士たちにとっては脅威でしょう。頼む。導師を現代に出現させるため、力を貸してくれ」
「アニムスにかけ、エツィオの意識を移植する事には協力しよう。だがそれだけだ。施設から逃げ出す手助けは期待するな」

男の鋭い視線がアサシンに突き刺さる。その剣幕にも臆することなくアサシンが力強く頷くと、ふと口元を緩めて男が笑った。
面白いものを見つけたといった風な油断のならない笑みに、私は警戒とそして彼を取り込む算段をした。
この男にはより慎重なエツィオを向かわせよう。きっと彼ならば気が合うはずだ。

「一つだけいいか?私は君を真に信じているわけではない。悪いが、監視はさせてもらうぞ」
「それは光栄だ。出来るものならば是非」

男は満足そうに笑みを見せると、一足先に通信を切った。

****

エドワード・ケンウェイのメモリーに戻り、早速エツィオに報告をする。
私が帰ると見慣れぬ衣服を纏った私を物珍しそうに眺めてから、テーブルの上にお茶の用意をしてくれた。
紅茶で一息入れてから、先ほどの会合での出来事を話す。

「フェニックスプロジェクトに携わる者に協力者を得た。お前には一度その者の端末へと挨拶に行ってもらいたい」
「俺が直接か?」
「ああ。あと監視用の分身を作ってその者の端末に常駐させるように。それと、多少雑談してやれ。彼をこちら側に引き込むのだ」

エツィオは頷いて私の指示に了解を示し、素早くメモリーから抜けていった。
私は彼が帰ってくる頃までに、次の段階の準備を進める事にする。

私達の体を提供すると言った協力者は、体を得た後の事は感知しないと言っていたが、そこはエツィオが彼を取り込み、自ら進んで手を貸してくれることになるだろう。
だが、それを当てにすることはしない。
寧ろアサシン教団からも関わらずに逃げ出すことを目標にしているのだから、彼らの助けの手すら拒む必要がある。

アブスターゴのセキュリティの無効化、そして餌になりそうなメモリーにウィルスを仕込み、こちらでアブスターゴのシステムのコントロールを奪う。
ふとプロジェクターに映し出されたエドワードのメモリーの進捗が目に入った。
現在もまた解析が進み、エドワードはついにアサシン教団に真に身を置くこととなったようだ。
これ以降はほかの者達が解析したケンウェイの晩年を見るに、先駆者の遺跡に直接関わるような事はなかったはずだ。

「ケンウェイのメモリーもそろそろ打ち切られそうだな

解析者はテンプル騎士団に未だマークされているだろう。あまりのんびりもしていられない。
彼のものもアサシン教団へと保護するなり、動き出さねば。

「そうだな。ケンウェイのメモリーが終わった直後が良い。早速アサシン達に指示を出すとしよう」

解析者と共に既に各地のセキュリティを掌握しておいた。
ジョンの齎してくれた権限のおかげで、容易に脱出口を見出すことが出来たのだ。
目的はどうあれ、彼には感謝しなければな、と皮肉な笑みを浮かべた。


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