@niziirononanika
名称:《常識の》ドクサ doxa
能力:当哲学人が『常識だ』と断言した物事を、世間での一般常識であると思い込ませる。
解説:当哲学人は二十代後半程度の年齢に見える、スーツを着た長身の男性です。眼鏡をかけており、穏やかな(※哲学人【ドクサ】、哲学人【イドラ】とよく似た)顔立ちです。
文法上の間違いを含んだ過度に丁寧な口調で語りますが、慇懃無礼な発言が目立ち、態度に落ち着きはありません。
人間に対し見下した態度を取ることがあります。それは超常的能力を保有する哲学人であるならば当然の態度です。そういう性格なだけです。
構われたがりな犬のような性格も併せ持っており、時にわざと騒ぎを起こして研究員を挑発することがあります。
マナーを大事にすると主張しますが、その多くは当哲学人が独自に考えたルールであり、当哲学人にとって都合のいいルールです。また、当哲学人自身がこのマナーを守ることはほとんどありません。守るとしても一時的なもので、自身の作り出したマナーを忘れることも多いです。それらを指摘した場合、「礼儀とはその時々、その場所によって変わるものでございます、常識でしょう」等と言った言葉で誤魔化します。
当哲学人による常識の書き換えは、哲学人の発言によってのみ行われます。暴露者は他者からの否定や説得によって書き換えられた常識が過ちであると思い直すことが可能ですが、複数回の暴露を重ねると当哲学人への信頼が増大し、訂正が困難になります。
哲学人【ドクサ】と同名かつ同哲学を起源とする哲学人です。しかしこちらは古代ギリシア語であり哲学用語であるこの言葉が、後に解釈の幅を広げ、『常識』『定説』『慣習』の意味として使用されたことを強調した哲学人であり、『思い込み』『五感の情報をそのまま受けとること』を意味するドクサとは哲学的兄弟関係にあると発言しています。当哲学人にイデア、エピステーメーとの関連はありません。
当哲学人は思い込みの哲学人【ドクサ】との面識はなく、当研究所で初対面だったと語りますが、自発的に兄と呼び交流し、周りの哲学人もそれを受け入れています。これが哲学人の常識であるのか、当哲学人の能力影響であるのかは不明です。
対応:■■大学附置哲学人研究所所有地にて居住。
危険性の高い哲学人の抑制に使用可能。その際は報酬として給与を与えること。
対話を行う場合、電話もしくはメール等で他の職員と連絡を取り、一般常識の確認と訂正を怠らないこと。
発見経緯:「信じられない似非マナー」として批判されていたいくつもの新常識が一人のマナー講師発祥であるとSNSにて特定され、彼の所属していた事務所に多くの嫌がらせが発生。事務所の管理者が警察に被害届を出し、調査している最中に当哲学人が哲学人名を名乗ったため取締課へ連絡が届き、同業者と利用者に日常生活に影響が出るほど多くの常識の書き換えが行われていた為、保護が確定した。
対話記録:※以下の記録は音声からの書き出しです。音声データを視聴する際は他の職員を控えさせ、視聴後に常識の確認と訂正を行ってください。
日付:■■■■/■/■
対象:■■■■■研究員(当哲学人と接する上の注意点を書いたメモを持ち込んでいる。)
■■■■■研究員「はじめまして、常識のドクサ。既に説明があった通り、ここは哲学人研究所で、私は貴方の担当を任されました■■■■■です。専門は文化人類学ですので貴方の存在にそれなりの理解はあると思います」
当哲学人「ふむ、これはこれは……」
■■■■■研究員「どうされました?」
当哲学人「まったく、研究所の人間は常識が足りておられませんね。哲学人を前にして椅子に座って挨拶とは無礼にも程があるのでは?」
■■■■■研究員「……それも、そうですね」
(■■■■■研究員は椅子から立ち上がる)
当哲学人「それと、ここで管理する哲学人に対して研究所の情報を与えるのは常識でしょう?」
■■■■■研究員「そうですね。ではここの構造について説明します」
(■■■■■研究員は研究所について解説を始める。内容は所内機密に触れるため削除済み)
■■研究員「■■■■■、哲学人との接し方十ヶ条」
(異変を察した■■研究員がスピーカー越しに呼び掛け、■■■■■研究員は少し考えた後に椅子に座り直す)
■■■■■研究員「……これからの貴方の処遇ですが」
当哲学人「わたくしの意見を聞かずに処遇を一方的に決めるとは、なんて酷いお方でしょうか。哲学人の処遇を決めるのはいついかなる時も哲学人でございます。常識でしょう!」
■■■■■研究員「それは確かに……」
当哲学人「あとその喋り方、失礼にもほどがございます。研究員たるもの語尾に『わん』を付ける! 常識でしょう!」
■■■■■研究員「ああ、うっかりしてました……わん」
(■■■■■研究員は当哲学人の指示通りの口調で対話を続ける)
(30分後、状態確認のため■■■■■研究員が控え室へと移動。口調と態度の異常を訂正される)
後程当哲学人に真意を質問したところ、「語尾を指定したことに理由はない」との返答がありました。
日付:■■■■/■/■■
対象:哲学人【ドクサ】
双方にお互いの哲学名を説明済み。
【ドクサ】(狼に似た吠え声によって興味を引こうとする。【常識のドクサ】が目線を向けると大きく手を振った)
当哲学人「おや。もしや貴方はギリシャのドクサではございませんか? このようなところで出会えるとは、至極恭悦で……おっと」
【ドクサ】(【常識のドクサ】に飛び付き、抱き締める)
当哲学人「うっ……ははは、お兄様、手加減をお願いします。わたくしは貴方ほど頑丈ではなくてですね」
【ドクサ】(子犬に似た発声)
当哲学人「ちょ、ま……待ってくださ……ええいこの犬! 待て! おすわり!」
【ドクサ】(【常識のドクサ】の腕を引っ張り室外へ引きずり出す。表情からして、おそらく遊びに誘っている模様)
当哲学人「おすわりって言っているではありませんかこのバカ犬!」
日付:■■■■/■/■
対象:哲学人【イドラ】
双方にお互いの哲学名を説明済み。
当哲学人「どうも、お初にお目にかかります。わたくしは常識のドクサと申します」
【イドラ】「……俺はアルトリアか何かか?」
当哲学人「えっ、アーサー王は哲学人だったと? わたくしはその時代の生まれではないため存じ上げないのでございますが」
【イドラ】「歴史上の偉人が哲学人だったって例はどんくらいあんだろうなぁ?」
当哲学人「おや、そうなのですか! いやぁ、昔と違って偉人と呼ばれる者の神性が薄れてございます。いかに世の常識を知るわたくしであっても、時代が変われば常識も変わるというもの」
【イドラ】「ふーん。ってか、お前ゲームとかすんの」
当哲学人「当然! 哲学人も娯楽は好きでございますよ、常識でしょう! わたくしが人間風情の職務に就いていたのも単に課金用の金を得るためでございます!」
【イドラ】「へぇ、よくやるな。いや、つーか……顔、なんだよ」
当哲学人「顔? 身嗜みには気を使っている達でございますが。あっまさか! 失礼いたします!」
(【常識のドクサ】は立ち会いの■■■■■研究員を言いくるめて退室)
【イドラ】「なんでてめぇまで同じ顔なんだよって話だよ……」
後程確認したところ、現在流行しているゲームのキャラクターの話をしているつもりとのことでした。
日付:■■■■/■/■
対象:哲学人【フェティシズム】
[倫理規定により当資料からは削除済み。旧繁殖学部へ資料提供しています]
今後は人目の無いところで会うように【フェティシズム】を指導してください。 ――■■■■■研究員
無理です、言うことを聞きません。 ――■■研究員
日付:■■■■/■/■
対象:■■■■■研究員
事件記録-■■0607-a時の記録
■■■■■研究員「止まりなさいドクサ! 止まれ! 研究所の常識を戻しなさい!」
当哲学人「何をおっしゃる! 哲学人が廊下を走っていいのは常識でしょう!」
■■■■■研究員「っ……あー! わからん! すまん■■、哲学人が廊下走ってんだけど!? ……なるほどありがとう! 常識じゃないじゃないですかドクサー!」
当哲学人「外部に頼るなんて卑怯ですよ!」
■■■■■研究員「変な能力持ってる奴の方が卑怯ですー!」
当哲学人「それは哲学人の存在否定ではございませんかね!?」
■■■■■研究員「日々ヤバイやつらと向き合って格闘してる身になってくれませんかね!」
当哲学人「……うーん、お可哀想に!」
(■■■■■研究員がタックルし【常識のドクサ】を押さえつけるする)
■■■■■研究員「っらぁ!! ってか……足早いですね……」
当哲学人「■■■■■さんが追いかけてきたから、つい本気で逃げてしまいました」
■■■■■研究員「この犬……」
当哲学人「お兄様と一緒にしないでいただきたい! それに、研究員が哲学人を追いかけるのは常識でしょう!」
■■■■■研究員「えっ、そ、え……? チッ、待ってくれませんか……■■、哲学人を研究員が追いかけるのって……ある意味常識か! なるほど!」
当哲学人「えっ、いいんですか……」