@acbh_dmc4
父上との話し合いから数日、懐かしい街並みをフェデリコとふざけ合って歩き、色々な話をして過ごした。
露天商で軽食を取ったり、最新の服を見たり、そして少しだけ武器屋を覗いてみたり。
久しぶりの生まれ故郷は相変わらず活気に溢れ、人々の笑い声も高らかに平和な様相だ。
束の間の平和と休日を楽しみつつ、モンテリジョーニではあまり機会のなかった女の子をナンパしたりと遊び歩く。
すると、先を行くフェデリコが、興奮気味に俺の腕を引いてある一点を指さした。
「おい、あの子を見ろよ。凄い美人だ」
「え?どこ?」
フェデリコがニヤケながら俺の腕を膝でつつく。
美人だという女性を顎で指し示して悪戯っぽく笑い、俺に行けと嗾けて来た。
俺は彼女の姿を見ると、途端に心が騒めいた。
クリスティーナ・ヴェスプッチ
彼女の姿に目が釘付けになる。
そして、心の底から彼女が愛しいと甘く苦しい感情が込み上げてきた。
「モンテリジョーニでは女の子と接する機会なんてなかったんだろう?伯父上の所は男所帯でむさっ苦しいからな。
ほら、恋人を作るチャンスだぞ?」
「…いや、彼女は…」
「ん?彼女の事を知っているのか?」
「………ああ。高嶺の花だよ」
俺はその場から逃げる様にして離れた。
フェデリコが慌てて後を追う。
俺の只ならぬ態度が気になったのだろう、彼女について尋ねられた。
「あの子、もしかしてお前の予言の中で出てくる子なのか?」
「…そう、だな」
「何かまずいことでもあるのか?」
「俺に関われば不幸にしてしまうんだ。だから俺は彼女には関わらない」
「…関わりたくない訳ではなさそうだけどな」
「ほっといてくれ。彼女に関しては……ごめん、少し、一人になりたい」
俺がそっけなくそうお願いすると、フェデリコは気遣うような顔になり、俺の背を優しく叩いて遅くならないようにと念を押して離れていった。
愛しいクリスティーナ。
長い事彼女の事を引き摺り、そして俺の心に影を落とした忘れる事の出来ない女性だ。
いいや、実際に俺が彼女と燃えるような恋を経験したわけではない。それでもアニムスで体験したエツィオの心が彼女を強く求めている。
こんな風に心がざわめくなんて、もう何年も前に体験しただけだというのに。
でも、またあんな悲しい結末にはなりたくない。
ボンヤリと街中を歩いていると、気が付けばクリスティーナの家の近くへと来てしまっていた。
そして彼女の家の玄関前から言い争う声の後、女性の悲鳴が聞こえた。
反射的に体が動き、女性を手籠めにしようとしている男の肩を掴んだ。
「おい!嫌がっている女性に無理強いするなよ!」
「煩い!お前には関係ない!これは俺とこの女の問題だ」
ああ、ヴィエリ・デ・パッツィ。
正にヴィエリとの確執が出来上がる出来事の一つだ。
そして、アニムスを通して対峙したこの男との記憶も蘇る。
愛しい家族との距離を感じ、孤独に震えて気を引きたくて傍若無人に振る舞うしかなかった悲しい男。
「冷静に話し合っているのなら止めたりしないが、見た所彼女は脅えているじゃないか。それならば見逃せないな」
「このっ!邪魔者め!目にもの見せてやる!」
俺の腕を跳ね除け、滅茶苦茶なフォームで拳を振り回す。
前もそうだったが、ヴィエリは上から命令をするだけで、本人は戦う術を持っていない。
軽くいなす様にしてヴィエリの攻撃を避けて足払いを掛ければ、派手にもんどりうって転んでしまった。
それでも引っ込みのつかない奴は、体を立て直してもう一度殴りかかって来た。
仕方がない。本気の一撃で気を飛ばされても後が面倒だし、彼が敵わないことを覚るまで適当に相手をするか。
一般人を弄るようであまり気持ちはよくないが、何発か軽めの攻撃を与えてやれば、案外あっさり諦めて逃げて行った。
アニムスで見た時と同じく、ヴィエリは俺に対して目をつけたという事を喚いて逃げ帰る。
思わずため息を吐いた。
あの家とはアサシンとテンプル騎士団という因縁の間柄であるから、衝突は避けられなかっただろう。
アイツの今際の際、出会いが違えば友人になれただろうと言った姿を思い出す。
…いや、避けられないことだ。奴の家がテンプル騎士団に傾向している限り。俺は頭を振ってその事を考えないようにした。
「あの、有難うございます」
背後からおずおずとクリスティーナの可愛らしい声が掛けられた。
ドクリと心臓が大きく脈打ったが無視して俺は愛想よく彼女に振り向き、なんでもなかったように振る舞った。
「怪我はない?」
「ええ、その…何かお礼をしたいのだけど…貴方のお名前は?」
「いや、礼には及びません。何事もなくてよかった。それじゃ」
「あっ、待って!」
彼女の柔らかい両手が俺の手を掴んだ。
愛しさが心を掻き乱す。今すぐ彼女を抱きしめたくて堪らない。
「私、クリスティーナ。クリスティーナ・ヴェスプッチと言います」
ふと、辺りを見渡せば、結構な人だかりが出来ていた。
そんな中彼女に名乗られては、俺も名乗らねばいけないだろう。
自分の気持ちを押し殺して、もう一度彼女に向き直り、俺も名を名乗る事にした。
「俺はエツィオ。エツィオ・アウディトーレ」
「そう、エツィオ…あの、あの方はかなりしつこいの…助けてもらっておいて、また頼みごとをするのは申し訳ないのだけれど、暫く一緒に居てはもらえないかしら…?」
「…ええと、その…」
言い淀むと、心細そうな彼女の視線が俺に突き刺さる。
ずっと愛していた彼女にそんな顔をされたらもう駄目だった。
俺が彼女の護衛をすることを承諾すると、周りの観客たちが一斉に囃子立てた。
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