@acbh_dmc4
伯父上の下、アサシンとしても心身ともに成長し、確かな実力と自信もついてきた。
そこそこ中性的な顔つきは変わらないが、逞しくついてきた筋肉と、父譲りの凛々しい眉が、少年らしさを醸し出している。
手足も長くなり、今までよりも高く跳ぶことが出来るようになった。
若くて軽い身体は壁を駆け上がり、屋根を縦横無尽に飛び回るのにとても適しており、隠密に動く事に特化した。
また伯父上の教えの下、傭兵を指揮して派手な作戦と存在感を示す術も同時に習得し、戦闘の幅は広がった。
「見違えるほど立派になったな。今すぐにでもモンテリジョーニをお前に任せても問題ない程だ」
「いいえ、伯父上。まだまだ伯父上の様に威厳のある統治者には程遠いです」
「そう謙遜するな。モンテリジョーニの民たちもお前を揃って慕っている!街の声を聞けば、お前を称賛する声で溢れているぞ!」
わしわしと頭を撫でられ、少しだけ照れて笑えば、伯父上の目が優しく垂れて豪快に笑い声を上げた。
モンテリジョーニは今や鉄壁の防壁に護られ、他国を寄せ付けない程強固になった。
念願の大砲も外壁にずらりと並べられ、傭兵の士気も高く、街は大いに賑わっている。
今ならボルジア軍が攻めて来ても追い返せるほどには強固になった。
「もうそろそろお前の誕生日だろう?16歳の誕生日だ。何か欲しいものはあるか?」
「…そうですね」
伯父上が優しく俺の肩を叩き、何でも言ってみろと俺の答えを促した。
俺は言っても良いものか、そしてここで過ごした日々を想い、伯父上にお願いする事を躊躇して俯いてしまう。
そんな俺の顔をジッと見つめた伯父上が、少しだけ寂しそうな、そして子供の我が儘を前に困った顔をする父親のような顔で、俺の顔を上げさせると優しく提案をした。
「エツィオ、遠慮する事はない。お前の望みは何でも叶える。それに、ジョバンニの奴にもここ最近頻繁に便りが来るしな。
そろそろお前を戻さねばならん。それにお前の言う予言の時も近い」
「伯父上、では…」
「フィレンツェに戻りたいんだろう?手配してやる」
俺は伯父上の決断に胸を詰まらせ、縋り付くように抱き着いた。
「伯父上、俺は伯父上の事を父の様に慕っております。それに、おれはまたここへ戻ってこようと思っています」
「フィレンツェで銀行業を継ぐのではなかったのか?」
「フィレンツェにはフェデリコもペトルチオも居ます。クラウディアも意外と商売が上手いのです。それに俺はモンテリジョーニをもっともっと盤石なものにしたい」
伯父上に必ず戻る旨を伝えれば、とても嬉しそうな顔で頷いてくれた。
「そういえば、地下のご先祖様の墓所に挑戦してみようと思います。あそこには先祖の残した遺産が眠っていますし」
「ああ、そんな話も聞くな。しかしモンテリジョーニはかなり強い領になったと思うが、これでもまだ満足いかないか。それほどまでにテンプル騎士団の攻撃は激しいという事か?」
「ええ、やはりボルジア家の力は侮れない。恐らく俺の想定している戦いでは今のままで充分とは思いますが、念には念を入れないと…」
「そうか。地下の墓所は一筋縄ではいかない。気をつけるんだぞ?」
「はい。伯父上」
早速俺は墓所へと挑戦するため、伯父上に地下へ続く鍵を貰って準備を始めた。
墓所には結構な資産が眠っているため、伯父上にも手伝ってもらう。
丈夫な麻袋を持って、先祖の墓へと入っていく。
一度攻略しているので、難なく進み、仕掛けを解いては伯父上にも安全に渡ってこれる様に仕掛けの向こうにあるレバーを引いて、通路を確保した。
「予言者は危なげなく進むものだなぁ。感心する」
「一度攻略していますからね。ですが、我々アウディトーレ家の成り立ちが刻まれたこの石碑は、改めて読むと感慨深い。ドメニコ・アウディトーレには親近感を感じますよ」
道中の石碑を見上げ、ドメニコの生涯を眺める。
伯父上は初めて読むという石碑も多く、熱心に見上げていた。
最期の仕掛けを解き、先祖の墓へと辿り着いた。周囲にはいくつもの箱が積み上がり、その中には沢山の財が眠っていた。
それを持って来た麻袋へと入れていく。
随分モンテリジョーニが潤っているとはいえ、金はいくらあっても足りないのだ。
新兵器の開発に当て、また傭兵を募集してもっともっと力をつける。
相変わらず娯楽に使うつもりがない俺に、伯父上は些か呆れた様な顔をしていた。
「お前はこんなにも頑張っているのだから、少しくらい贅沢をしても良いと思うぞ?」
「それなりに金をかける所はかけてますよ。息抜きだって適度にしています。まぁ、もっと女の子が居たら良いですけど…」
とは言え、娼婦の女の子たちとはそれなりに仲良くしているし、何かと尽くしてもらったりしているので自ら散在する必要がない。
生来の性分なのか、随分ソッチ方面は放蕩気味だと思う。
伯父上は釈然としない顔をしたが、俺は誤魔化す様に袋詰めに精を出した。
地上へと戻り、屋敷に帰ると俺の誕生日の為にと屋敷の者達がご馳走を作り、待っていてくれた。
使用人に風呂の準備が出来ているのでと浴室へ追いやられて、埃だらけの体を清める。
新品の衣服に袖を通し、少しだけめかし込まれてから食堂へと向かった。
給仕の者と、ごく親しい友人を招き、誕生日パーティーが始まる。
サプライズにとプレゼントを貰い、また家族からのバースデーカードとプレゼントが手渡されて幸せな時間を過ごした。
盛大に飲み食いし、夜も更けてお開きになった後に伯父上に書斎へと呼ばれて赴いた。
ノックをしてから部屋へと入ると、機嫌良さそうに伯父上が迎えてくれた。
座り心地の良いソファへ身を沈めて、勧められたワインを片手に伯父上に今夜の礼を言った。
「伯父上、今日は有難うございます。先祖の墓参りにお付き合いいただいた上に、プレゼントも」
「いや、気に入ってもらえたら良いんだが」
「こんな見事なナイフは中々お目に掛れません!それに刃先を彩る彫刻も美しいですし、とっても嬉しいです」
凶悪なほど鋭く尖った刃先は突き刺すのに良く、また限界まで薄くした片刃は横に引けば抵抗もなくスルリと肉を引き裂けそうだ。
アウディトーレの家旗である鷲と獅子を模った彫刻も見事で惚れ惚れとする。
きっとこれは長い事俺の相棒として共に戦ってくれることだろう。
重厚な樫の箱に入ったナイフをうっとりと見つめる、そんな俺の様子をホッとしたように見つめて、伯父上は手元のワインを飲み乾した。
伯父上が俺を書斎に呼んだ本題について話し合う。
俺の帰郷の日取りについて、その準備についてだった。
少しだけ寂しそうに、そして多忙な伯父上は近くまた遠征がある旨を俺に伝えた。
相変わらずアサシンとして密命を持って方々に対処している。いつもは行き先なども俺には知らせずにいるが、今日は済まなそうにしながら任務の内容を教えてくれた。
「俺はお前が帰郷する頃には帰ってきたいと思っているが、近くバチカンへ行く」
「バチカンへ……では、教皇との繋ぎが出来たので?」
「色よい返事という訳ではないが、もしかしたら会ってくれるかもしれん。お前の発つ日には間に合わない可能性が高い」
「今の教皇が所持している杖はエデンの欠片の一つ。教皇が宝物庫の存在や杖の力をどの程度知っているのか気になります」
杖を手にすれば、それが特別な力を秘めていると直感するはずだ。何も知らないという事は考えづらい。
宝物庫に封印をする為にも、二つのエデンの欠片を集結する事は必須だが、林檎だけは回収しなければならない。
それにあの宝物庫が未来のシミュレートをすることが可能な施設であれば、ミネルヴァに確認したいこともある。
「教皇がテンプル騎士団に傾倒している可能性は?」
「今の所は中立だろう。お前も教皇に関して予言はないのか?」
「教皇の心中はどうかわかりませんが、ロドリゴ・ボルジアの持つ資金や影響力は無視できないものですから」
「教皇の行動に関して決定的な予言があれば、お前に興味を抱かせてこちら側に引き込めるかもしれんのだが」
「諸刃の刃です。もし教皇が裏切れば、俺の事がテンプル騎士団に知られます。遅かれ早かれ俺の特殊性は知られる事になるでしょうが、今はその時ではない」
伯父上は俺の言葉に重く頷くと、教皇の話はそれで終いにした。
今一度、俺の帰郷に関して伯父上の懸念事項であるマシャフに眠っていたエデンの林檎について、それをどうするか尋ねられた。
つい最近、ようやく鍵を全て集め、書物庫を開くことに成功して現在は我が手元にある。
トルコの教団の長、イシャクに俺の覚えている事の全てを託し、林檎を見つけ出して保管を頼んだのだが、この得体の知れない力を秘めた聖遺物は彼らの教団の手に余るからと、情報を齎した俺が護り手になるようにと送られてきたのだ。
「書物庫の林檎も持って行くか?」
「現時点でモンテリジョーニが一番安全な保管場所です。秘密裏に持ち出したので、今の所テンプル騎士団には気付かれていません。もう一つの林檎が現れるまで、こちらは厳重に保管願います」
「ではこのままアルタイル像の保管庫に安置しておこう。それとあの鎧は持って行くか?」
「いえ、未だ俺には少し大きいようなので、もう2~3年は保管しておいてください」
アルタイル像の檻は、周囲を囲って保管庫として作り直した。
勿論像の背後から西側へ抜ける避難経路も作り上げ、宝物庫と退路の両方の役割を果たしている。
檻を開けるには鍵ではなく、暗証番号制にし、アウディトーレ家の者の認証が必要となる。
それらの設計や図案をマシャフの宝物庫で手に入れた林檎の力で書き起こし、作り上げた。
俺自身で林檎の研究も進めているのだが、こういうものはレオナルドの様にもっと知見のある者に任せたいのが本音だ。
林檎を使用するのにはコツがいり、膨大な情報の渦から本当に必要な知識を引き出すのは一苦労なのだ。
(たしか親父が言うには、林檎を使用できる者は限られていると……アルタイルの血筋であればもっと簡単だったかな。デズモンドだった時は、今よりももう少し林檎を扱えていた気がする)
俺も林檎の使用は出来るが、同時に酷く消耗したし、知識を引き出すにも俺自身に知識がなければそれを無為にしてしまう。
しかしそれでもペトルチオの病気に関する情報が引き出せたのは良かった。手紙にも随分体が丈夫になって、毎日フェデリコと街を駆け回っていると書いてあったし、何よりやはりペトルチオは体が弱かったために読書家で、物事を深く理解する力に長けていた。
銀行家の勉強にも早々に優秀さを示し、将来表の家業を継ぐ者として十二分に働いてくれるだろう。もしかしたらメディチ銀行から独立し、アウディトーレの銀行業を盛り立ててくれるかもしれない。
フェデリコに余計な事を教えられてはいないかと一抹の不安は覚えるが、兄妹達からの元気そうな手紙は、俺の原動力となってくれた。
だからこそ俺はまたフィレンツェを離れる決心を固められた。
家族の為にも、俺はアサシンとして生きていく。
「伯父上、アウディトーレ家に対する陰謀が片付いたと判断したら、俺はまたこちらに帰ります。それから、俺は伯父上の養子の話をお受けしようと思っています。その事について、帰ったら父上に相談しようと思っています」
「良いのか?俺は嬉しいが…」
「俺の目指すものの為には一所に留まることは出来ません。力をつけた兄弟たちがフィレンツェに居てくれるなら、より安心して動けますから」
「わかった。そうか…息子になってくれるか」
伯父上がとても嬉しそうに目を眇めて俺を見つめる。
今も、そしてアニムスでも伯父上から貰った多大なる恩は、きっと返してみせる。そして、伯父上の運命も、この俺が必ず救ってみせるのだ。
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