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目が覚めたらエツィオに生まれ変わっていたので、家族生存めざします!

全体公開 4836文字
2020-03-09 23:10:41

第9話「父上に提案してみました」

Posted by @acbh_dmc4

旅行鞄に数日分の服とある程度の武器を詰め込み、屋敷の者達に見送られて乗合馬車へと乗り込んだ。
必要ないとは言ったのだが、伯父上から俺の護衛の為に幾人かの傭兵を伴うよう言いつけられ、少しだけ物々しいメンツになった。
伯父上はやはりローマから未だ戻ることは叶わず、数日前に手紙で身体に気遣う言葉と、久しぶりの家族との時間を楽しむ様にと言葉を貰い、また教皇との面会については叶わぬだろうと現在の状況を教えてもらった。
ボルジアは狡猾で抜け目がない。そう簡単に教皇に接触させてもらえる事はないだろう。

長く馬車に揺られていると、急に大きな衝撃があり馬車が止まった。
御者がとても狼狽えて大きな声で襲撃だ!と叫びを上げる。
俺とお付きの傭兵達で馬車を飛び出し、周りを囲う襲撃者達に対峙する。

布でおざなりに顔を隠している強盗団は、全部で10人程だった。
俺は手にした長剣を構え、近くにいた短剣を持った強盗に躍りかかった。
鷹のように素早く、長剣を横凪ぎに強盗に切りかかる。油断していた強盗は俺の剣技に一瞬気づくのが遅れ、寸での所で避けようとしたが、腹をザクリと切り裂かれた。
1人目の強盗を切りつけた刃の返しで、その横に居た強盗にも一太刀浴びせようとさらに踏み込む。
頭をかち割るように振り下ろし、もう一人も始末する。
俺の動きに合わせて他の傭兵たちも強盗に向かって斧を振り上げ、辺り一帯には物々しい打撃音が響き渡っていた。
傭兵の背後から仲間を援護しようとナイフを振り上げている強盗に、手持ちの投げナイフを投げつける。
吸い込まれる様に強盗の首と左ふくらはぎに深々と刺さり、また一人倒れる。
見た目で一番弱そうな俺に他の強盗達が群がるように襲い来るが、体の身軽さや素早さで俺に追いつけるものなど居ない。
あっという間に8人程切り伏せ、数人を生け捕りにして馬車へと戻った。
とんだ開幕である。
伯父上の言いつけ通り、護衛を着けておいて良かったと胸を撫で下ろす。
俺一人でも対処できなくはなかっただろうが、乗合馬車の他の客に被害が出ただろうし、こんなに早く討伐は出来なかった。
故郷に帰るのに浮かれすぎて、見通しが甘かった事を反省し、道中気を抜かぬよう外を眺めて居た。


フィレンツェの壁門へと辿り着くと、兄妹と母上が俺を出迎えてくれた。
皆笑顔で俺を迎えて、全員にハグで応えると、途端に幸せな気持ちが心を満たした。
クラウディアは何故かフェデリコの後ろに隠れがちになって、チラチラと俺の顔を盗み見ては、視線が合いそうになるとプイっと勢いよく逸らされるので、何か気に入らない事でもあったろうかと心配になった。
使用人に俺の荷物を預け、皆でゆったりと生家に向かって歩いていく。
道中皆と近況報告をし合って、あっという間に家についてしまった。

「兄さん!」
「ペトルチオ!元気そうだ。良い子にしてたか?」
「うん!お迎えに行けなくてごめんなさい」
「良いんだ。勉強してたんだろう?アウディトーレ家を引き継ぐ為の大事な事だ」

ペトルチオの頭をわしわしと撫でれば、とっても嬉しそうに笑って俺にお帰りのハグをしてくれた。

「父上はまだ仕事か?」
「ああ。会合があってな。だが終われば今日は戻るだろう。お前が帰って来たんだからな」
「そうか。じゃあ戻るまで部屋で荷物の整理してくる」

懐かしの自室へと入ると、空気の入れ替えの為か窓が開けられ、ベルベット地のカーテンが緩やかに風に揺られていた。
窓から外の風景を眺めると、この美しい街に対する愛しさが膨れて胸がいっぱいになる。
ポカポカな陽気に誘われて、寝心地の良い天蓋付きベッドに腰かけると、柔らかなシーツが、旅の疲れを思い出させた。
ただでさえ居心地が良いとは言えない乗合馬車での移動だというのに、運が悪い事に強盗に襲われてかなり疲れた。
これよりも過酷な旅路は何度も経験しいや、これからも経験するのだが、実家に帰る時くらいはもう少し平和に行きたかった。
少しだけと思いつつ、ベッドに倒れ込んで目を瞑ると、ついつい俺は心地いい眠気に誘われて夢の旅へと漕ぎ出してしまった。


***


「エツィオ。起きなさい。夕食の時間だ」
「ン父、上あれ、俺、寝てた
「ああ、疲れたのだろう。護衛から道中強盗に襲われた事は聞いた。食事をしたら今日はもう休みなさい」
「いえ、父上昼寝をして大分疲れが取れました。夕食後、お時間がありましたらこれまでの報告をさせてください」

気遣う父上の優しい顔に、ホッとして応える。
まだ少しだけ眠たいが、目を覚ますと途端に空腹を自覚した。
二人で居間へと降りていくと、既に家族全員が席に着き、俺たちを待っていた。
テーブルには豪勢な食事が並び、帰省を喜びわざわざ用意してくれたのが分かった。
久しぶりの賑やかな食卓に楽しく会話も弾む。
最初はぎこちなかったクラウディアも、食事も終盤になると大分機嫌を直してくれたようで安心した。

「クラウディアは随分とエツィオにぞっこんだな!」
「に、兄さま!!」

ニヤニヤするフェデリコがクラウディアを茶化すように声をかけ、顔を真っ赤にして涙目のクラウディアがフェデリコを睨みつけた。
俺はそのやり取りに?を浮かべてフェデリコの方を見た。
今日はずっと俺を避ける様なクラウディアに、何か気に入らないことをしてしまったのかとずっと心配していたからだ。
どういうことかとフェデリコの見解を促すと、俺を呆れたように見やってから理由を教えてくれた。

「クラウディアはお前に会いにモンテリジョーニに行く度に、兄さまが日に日に素敵になって困るって言っていたんだよ。半年前に逢った時よりも男らしくなっていて、今日はずっとドギマギしてたんだ」
「フェデリコ兄さま!!それ以上言ったら蹴り上げるわよ!!!」
「クラウディア!淑女がはしたない事を叫ばないの!まったく、フェデリコとエツィオがこの子に変な事を教えるから、お転婆が過ぎて中々婚約者も見つからないのよ?」
「かっ母様!私だって言い寄ってくる殿方は多いです!ただ、お受けしていないだけで

俺にチラリと視線をやって、恥ずかしそうに口ごもる。
しかし、可愛らしいクラウディアはショーンが参照した資料でも、よく粉を掛けられていたという記述があった。
よもやあれだけ忠告したが、あの豚野郎にも手を出されていないだろうなと、念のためクラウディアに確認することにした。

「クラウディア、まさかドゥーチョに口説かれたりしていないよな?」
「ど、ドゥーチョなら兄さまの言いつけ通り、出会い頭に玉を蹴りつけてやったわ」
「クラウディア!」
「母様。兄さまが心配しているみたいだったから本当の事を報告したかっただけ。普段はこんなこと言わないわ!」

クラウディアの報告にホッと胸を撫で下ろすと、隣でフェデリコが「兄妹は結婚できないって知ってるか?」と突っ込んできたので、返事の代わりに笑顔で足を踏んずけてやった。
一先ず懸念事項であったクラウディアの幼気な恋心は守られたようなので良しとする。

食事も終わり、父上にこれまでの生活と鍛錬の報告をすべく、書斎へと招かれた。
フェデリコも一緒に来るかと思ったが、恐ろしい顔をしたクラウディアに耳を引っ張られてどこかへ消えてしまった。俺はそれを見送ってフェデリコの為に十字を切った。眠れ、安らかに。

父上に勧められた座り心地の良い椅子に腰かけると、対面に父上も座り、改めて今回の帰省を労われた。
どうやら強盗団について、フィレンツェの治安部隊に依頼して探りを入れたようで、あの馬車を襲ったのは偶然であると結論が出たらしい。
何故そんなことを調べたかというと、意外とアウディトーレ家には敵が多い為だ。
それというのも一代で頭角を現したアウディトーレ家を良く思わない貴族は多く、そういった者達の陰謀かと探らせたようだった。
この地で新参者の俺たちは侮られているし、実質フィレンツェを統治しているメディチ家に一番近い存在である事はやっかみの対象であった。
そこに付け込まれ、ありもしない罪をでっち上げられては堪らない。そもそも罪を擦り付けられる程度の権力では駄目なのだ。
しかしこれについて、解決する策を俺は持っている。
アウディトーレ家をフィレンツェでより盤石なものとし、誰も手を出せなくする強力な一手だ。今日は、その事を父上に進言するつもりでいた。

「父上、俺は伯父上の養子の話をお受けしたいと考えております」
「モンテリジョーニでの様子を話す前にいきなり本題かそれは、お前の意思か?」
「はい。俺がフィレンツェを離れ、モンテリジョーニの領主の跡目になるという話が出れば、我が家のフィレンツェでの地位はより盤石になる筈です」
「現在モンテリジョーニとフィレンツェは敵対関係モンテリジョーニに領主の跡取りとしてフィレンツェの者が出るとあれば、我が家の名声も上がるというもの。お前は本当に頭が良い」

父上は重いため息をついて、あまり気乗りしないという風に顔を背けた。
だがこれは我が家にとっても、アサシン教団にとっても悪い話ではない。俺がアサシンとして活動するにはフィレンツェを出た方がより効率が良いし、またアウディトーレの名が高まれば、フィレンツェでの活動にもプラスになる。
アサシン教団の長とすれば、家族の情よりも優先すべき事があると理解しているだろう。

「それに考えてもみてください。我がアウディトーレ家に男児が3人もいて、表向きは上の二人が揃って放蕩しているだなんて家名に傷がつきます。それにペトルチオはとても優秀です。フィレンツェできっとあの子が我が家を盛り立ててくれるはずです」
ペトルチオの病気を治す方法を手紙で送ってきた辺りで、こうなる事は薄々予感していた。この地だけではお前の器は収まらんという事か」

苦笑して俺の説得に頷く。
俺の意思が堅い事を悟った父上は、仕方がないという風に複雑そうな顔をしていた。

「お前は言い出したら頑固なところがマリアに似ている」
「父上のように柔軟性もあると思いますよ。俺も、家族の元を離れるのは辛いです」
「もっと世間知らずの子供で居て欲しかったもっとお前を甘やかしたかったものだ。私の我が儘だ。聞き流してくれ」

何時も自信に満ち溢れ、泰然と笑みを見せていた父上の寂しそうな顔に、俺も切なくなってしまう。
恵まれて育って来た俺が、過酷だと分かっている道を選ぶのに躊躇がなかったわけじゃない。
出来るなら、この陽だまりのような場所で限りない自由と、そして愛されている事に無頓着で居たかった。

だが、俺は運命に翻弄されるまま、あの人生をなぞることは出来ない。知ってしまった未来を変える為に、俺は自分の運命を自ら選ぶ。
それに家族を護れれば、俺はあの時のように独りではなくなる。
アニムスで間接的に与えられた心の傷は、少しばかり今の俺をも人間不信にしたけれど、あのように孤独な人生ではないのだ。

「父上、俺の話を聞いてくれますか

今までの空気を振り切るように、モンテリジョーニでの生活や鍛錬について父上に報告し、喋り疲れて瞼をする頃には夜も大分更けていた。


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