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目が覚めたらエツィオになっていたので、家族生存めざします!

全体公開 6399文字
2020-03-18 19:51:09

第12話「死の予言」

Posted by @acbh_dmc4

父上の仕事の都合がつき、本日はモンテリジョーニで学んだ技術を父上に披露する事となった。
よりアサシンとしての技を磨くため、父上からも指導を頂き、またその経過によっては簡単な任務にも参加させてくれるという約束も取り付けた。
因みに表向きは俺がフィレンツェに戻ったのは、より見識を広める為、また父上の下で銀行業の見習いとして社会勉強に勤しむ為という事になっている。
当然表の銀行業についても手伝う事になっているし、もう一度教師を雇い入れて勉学にも励む。
即有事だったアニムスでの体験とは違い、小競り合いはありつつも、比較的平和でテンプル騎士団の動きが活発でない今だからこそ、こんなに至れり尽くせりで学ばせてもらえるのだ。
少々過保護なような気もするが、本来はこういう段階を踏むものなのかもしれない。

そんな訳でヴィエリは迎えに来るとは言ったものの、暫くは構うことは出来ないだろう。
パッツィ家に使いを出して暫くは無理と伝えてもらう事にする。
しかしヴィエリよりも俺はレオナルドと友人になりたいんだが随分妙な事になったものだと思いながら郊外にあるひっそりとした鍛練場で父上を待った。
待ち合わせをしていた父上が、動きやすい衣服に着替えてやってきた。
俺は改めて礼を取って父上に教えを乞うた。

父上は軽く剣を合わせる稽古をして、俺の実力を確かめてくださるようで、俺に模擬戦用の武器を選ばせると広場の中央へと誘った。
互いに構えを取り、まずは父上の打ち込みを防ぐ。
父上の剣技はとても美しく、そして素早いだけでなく、一打一打がとても重く骨に響くようだ。
剣を受け止め弾き上げたり、また剣を滑らせて軌道を逸らす。一通りそうしてあらゆる角度からの打ち込みを交わしてから、今度は攻撃に切り替える。
父上の剣技を真似て打ち込みをする。
自分の筋力だけに頼らず、振り子の原理で剣の圧を増して叩く。
まだまだ父上には力で勝てないのだと、この打ち込みで理解した。

「以前にも思った事だが、お前は既に戦闘技術が出来上がっているな。並みのアサシンではお前に敵わないだろう」
「必至で努力して参りました。しかし、傭兵の中で鍛錬を積んだのに、力すらまだまだ遠く及びません」
「だが、お前が全ての力を出し切り戦えば、私はお前に勝てるか分からない。それだけお前の技は多彩で老練している。これなら直ぐにでも任務に出せるだろうな」

俺は父上のその言葉に内心でガッツポーズを取った。
日々の鍛錬も大事だが、実践に勝るものはない。少々緊張感からは遠いこの生活で、感覚が鈍ってしまっては意味がない。

父上からの厳しい鍛錬を終え、屋内へと戻る。
汗を拭くため、甕の水に手ぬぐいを浸けて汗と火照った体を冷ます様に体を拭く。
父上も服を脱いで隣で同じように身を清めているので、その歴戦の肉体を眺めた。
見事に鍛え上げられた逞しい筋肉に、幾つも刻まれた傷痕がその生涯の過酷さを伝える。
そして自分の今の体を見下ろす。
若い身体は父上よりも一回り以上小さく、自分が正しく子供であると伝えている。
俺だって筋肉も結構ついたと思っていたんだが、こうして完成された大人と比べると月とスッポンだなとため息が出た。
そんな俺の様子に父上が控えめに笑い声を零して、励ます様にこれからだと俺の頭を撫でた。
日も傾きかけ、揃って家路につく。
初めての父上との鍛錬に、疲れよりも嬉しさが勝って足取りは軽い。
心のまま浮足立って歩いていると、父上が苦笑しながらも、周囲を少しだけ警戒して俺に小声で話しかけた。

「そういえば、戻って早々、パッツィともめ事があったようだな」
「ええ。ですが、また妙な事になっていましてどうも、気に入られてしまったようで」
「気に入られた?随分フォローが早いのだな。あの家はそれだけ重要という事か?我らにとっては敵側だと思ったが

こんな往来で話せる内容でもない為、父上の問いへ頷くにとどめ、続きは書斎で話す事にする。
俺の記憶では来年、父上たちの処刑が行われるはずだが、俺が記憶を得てからテンプル騎士団の告発や暗殺をしたことによって勢力図などが微妙に変動している。
ロドリゴ・ボルジアもパッツィ家も今は大人しくしているが、もしかしたら我が家を抑える策を速める可能性もある。

屋敷につき、人払いをしてから父上に俺の記憶を全て話す事にした。
出来ればフェデリコにも聞いて貰いたかったのだが、まだ帰宅していないようだ。
本来今日の鍛錬もフェデリコと一緒に受ける筈だったのだが帰宅早々父上に怒られるだろうな。
書斎で向き合って座り、俺から話を切り出した。

「父上の仰る通りパッツィ家は敵です。今も汚い手でフィレンツェ市民を苦しめている。それにテンプル騎士団だ」
「うむ」
「ですが、パッツィについてより先に、警告をしなければなりません。俺の記憶では来年、我が家に災厄が降りかかります。ロドリゴ・ボルジアの策略で我が家は国家反逆罪で告発されるのです。
俺は反証をウベルト・アルベルティ判事へと持って行きましたが、彼は既にボルジアに買収されており、財を提供する代わりに父上が持っている証拠を握りつぶすよう指示されて、そのまま処刑は執行されてしまいました」

父上は俺の報告に息を飲み、不安そうに曇った顔は信じられないというよりは、信じたくないと言ったように歪められていた。
震える唇が開いては閉じ、絞り出すように俺の警告について確認した。

私が、処刑される、と
父上だけではありません。フェデリコと、ペトルチオも
「なに?!」

父上は弾かれたように顔を上げ、驚愕と怒りがない交ぜになった顔をし俺を見つめた。
よもや俺の『予言』を信じないと突っぱねることはないだろうが、それでも重要なことなのだと、父上の目を見てしっかりと頷いた。

「俺も危なかった。アネッタがパオラの元へと案内してくれ、母上とクラウディアと共に匿ってくれて、難を逃れました
「二人は、無事なのだな?」

父上の問いに思わず口を引き結ぶ。
母上は番兵に乱暴を働かれ、そのショックで声を失ってしまった姿が脳裏を過る。
その一瞬の沈黙で事を察した父上は、頭痛を堪える様に額に手をやり「なんてことだ」と呻くように呟いた。

「あのような事は絶対に回避しなければならない。ですが、俺が父上たちにボルジアの関与や奴の腹心を挙げたことで、少しだけ現状が変わっています。いつ奴らが動くか分からない為、十分警戒をしていただきたい」
「ああ。勿論だ」
「父上にはお辛いでしょうが、アルベルティ判事の動向はよく注意しておく方が良いでしょう」
ああ。そうしよう教団の者にも今の話を伝えねばな」

重くため息を零し、今後の事を憂うように手元を見つめる。
あまり良い未来ではない、死の予言を受けて冷静でいられる人間がいったいどれだけいるというのか。
重い沈黙の後、不安げに揺れていた瞳が、真っ直ぐ俺に向けられ、それが気遣うような色に変わった。
何事か言い淀む父上のその態度に不思議になり、思わずきょとんと父上を見つめる。
そんな俺に少しだけ苦笑をして、父上が俺の傍に寄り、強く抱きしめてくれた。

……お前が幼い頃、私達の名前を呼びながら魘されていたあんなに小さな内から、辛い事を知ったのだな」

思わぬ言葉に瞠目して、不意に目頭が熱くなる。
ジワリと薄い涙の幕が張り、思わず父上の服を握りしめた。
あやすように俺の頭を撫で、コツンと頭を寄せてからゆっくりと離れた。
まるで小さな子供に戻ったように抱き締められた気恥ずかしさから、真っ赤になってしまった俺に父上は優しく微笑み他に予言があるか尋ねられた。

「俺の人生の殆どは家族の仇を討つ為に費やされます。伯父上も危ない。だから、現在モンテリジョーニの守備も固めています。
それ以外にもアサシンとして使命はありますが、それも方々に協力を要請して他国の教団の支援を得ています。先日モンテリジョーニに送られてきたエデンの林檎がその最たるものですね」
「そうか。そういえば、最近は写本の捜索も行っているそうだな」
「はい。どうしても見つけたい1ページがありましてああ、そうだ、父上が所持している写本も見せていただくことは可能ですか?あと、アサシンブレードも」

近々任務に同行させてもらえるのならば、俺用のアサシンブレードが欲しい。
父上の持っている写本はアサシンブレードの設計図だし、いくつか作成してもらえればと思う。
写本については隠された内容も知っているのだが、欲しいのは武器の設計図だった。特に銃。これがあればこの時代のテンプル騎士団を迎え撃つのに有利になる。

「ああ。構わない。だた、写本はまだ解読が済んでいないのだ」
「あっという間に解読してくれる人物に心当たりがあります。父上に支援要請をした芸術家の卵を覚えておられますか?」
「ああ、ヴェロッキオの工房に居た天才肌の青年だな。最近はマリアも彼を気に入ってよく絵画を頼んでいる」
「彼に任せれば写本の解読と武器の作成を手伝ってもらえます。彼は信用できる人物です。是非、写本を持って彼に会いに行きたいと思っています」
「ああ、分かった。では後で渡そう」

これで大手を振ってレオナルドに手土産と共に会いに行ける。
後々チェーザレがレオナルドに作成を命じる小ぶりの銃を作ってもらえれば、かなり強力な兵団を作る事も出来る。
それに彼には林檎の研究もお願いしたい。きっと俺よりはるかに活用してくれることだろう。
もしかしたら未来の俺が死なずに地球を守る術を開発してくれるかもなんて望み過ぎか。

レオナルドに会えるかもしれないと思うと、心が浮き立つ。
ついつい彼に会ったら何を話そうだとか、あの装置を作ってもらおうと気持ちが逸る。
そうしてわくわく今後の予定を頭の中で展開していると、父上が思い出したようにヴィエリの事について聞いてきた。

「ああえっと、パッツィヴィエリなんですが一度話し合う機会があり、それで何故か気に入られてしまったようなのです。でも未来は敵になる相手の為、歩み寄る必要があるのか、と
「ふむ。それで深入りするのを躊躇しているのか」
「ええただ、テンプル騎士団の動向を探る為にも、奴と関りを持つのも有りかな、とか
「エツィオ。この件に関して私の方でも手を打とうと思っている。全てを一人で背負う必要はない。パッツィとのことは、お前の思うようにしなさい」

じゃあもう適当に相手するより無視してしまっても良いかな!と思考が楽な方に流れる。
俺としては早くレオナルドと会ってみたくて、ヴィエリどころじゃないのだ。

テンプル騎士団の陰謀を話し終えると、調度夕食に呼ばれたので、二人揃って家族の待つダイニングへと向かった。


***


結局フェデリコは夕食の時間にも帰ってこず、和やかな団欒を終えて部屋に帰る途中でアネッタに呼び止められた。
手には簡素に折りたたまれただけの紙が握られており、なんだろうかとそれを見やる。

「坊ちゃま。使いの者が手紙を受け取ってきました。こちらを坊ちゃまにと」
「ああ、有難う」

メモのような手紙を受け取り、自室へと戻る。
受け取った手紙を読もうと机にそれを広げた。
手紙はヴィエリからのもので、意外と律義な奴だと思いながらその手紙を読む。


『舎弟エツィオへ

さっきは助言をくれたこと、感謝してやる。
俺様も考えなかった事じゃないが。
だが、暫く俺の所に来れないとはどういうことだ。何とか時間を空けて俺様に会いに来い。
迎えに行ってやっても良いと言ってるんだからちゃんと開けておけ。分かったな!』

誰が舎弟だ。
というか、本当にコイツは人の都合ってもんを考えない奴だな。
盛大にため息をついて手紙を机の端に追いやれば、扉をノックする音が響いた。
声を上げて入室を許可すると、フェデリコが機嫌良さそうに部屋に入って来た。

「パッツィ一味は随分愉快な連中だな!こっすい奴らばかりと思っていたが、話してみると案外面白い」
「まさか今の今までパッツィ一味とほっつき歩いていたのか?」
「ああ。あの後直ぐに切り上げて帰ろうとしたんだけどな、奴らついて来てずっと質問攻めさ。授業料代わりに奴らの金で豪遊してたんだ」
「それでずっと遊び歩いてたのか。本当なら訓練だって一緒にするはずだったろ?」
「訓練だったらこれからたっぷり出来るだろ?お叱りなら明日受けるよ」

面白がってニヤリと笑みを敷き、そして俺の机の上の手紙を一瞥すると、今度はそれを手に取って読み始めた。
手紙の内容を見て、揶揄いたそうに俺を見やる。俺は肩を竦めてお手上げだというポーズを取り、揶揄われる前に口を開いた。

「変な懐かれ方してどうして良いやら
「子供の頃にも似たようなことはあったろ?昔からアイツはお前の後をついて回っていた」
「そうだっけ?」
「まぁ、お前は一切相手してなかったけどな。傍で見ていて鬼かとで?なぜ今になって構ってやろうと思ったんだ?ヴェスプッチのお嬢さんの為か?」

忘れかけていたが、最初はクリスティーナの為にヴィエリの付き纏いを諫めていたのだった。
それが、クリスティーナから俺の方にロックオン先が向いてしまったように思う。
彼女についてはもう安全という事で良いのだろうか。いや、暫くは様子見か。

「まぁ、未来を変えるうえで、奴の家を監視出来る術を持っていて損はない。ヴィエリがテンプル騎士団として動いているのかは疑問だが」
「父上からそうしろと?」
「父上は好きにしろって。うーん、言ってみれば保険かな。それと、遺言でもある。俺の記憶で、奴を殺したときに、出会いが違えば友になれたかもと言われてなんにせよ、気まぐれだ」

肩を竦めて理由を告げれば、フェデリコはちょっと引いた感じで「遺言なら仕方ない」と納得した。
正直な所、奴のしたことを考えれば同情の余地はないんだが、変えられる悲劇があるのなら小さな変化でも変えていきたいと思う。
ただし、あっちの出方次第で俺が無理だと判断したら全力で敵対するけど。父上の言うように無理はしない。今は味方が沢山居るのだ。

「どちらにせよ、面白そうだし俺も協力してやろう。奴らが愉快な連中だって言うのはこの数日で分かったしな」
「フェデリコのは協力じゃなくて、遊んでるだけだろ?それから、明日も父上時間取れるみたいだからちゃんと鍛錬に参加しろよ?今日の分扱くって言ってたぞ」
「あいたたた急に腹がきっと明日は寝込むことになりそうだ」

相変わらずのフェデリコの放蕩っぷりには呆れつつ、らしい姿に苦笑する。
こうした底抜けに明るくて、でも妙に頼りがいのある兄だからフィレンツェに戻り、悲劇が近づいてきている現在も、不安に押し潰されずに済んでいる。
しかしもう少しだけ緊張感は持ってもらいたいものだ。
これ以上俺からどやされない為かお休みを言うと、フェデリコは自分の部屋に戻っていった。


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