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目が覚めたらエツィオに生れ変わっていたので、家族生存目指します!

全体公開 8303文字
2020-09-23 22:02:18

第24話「かごの中の鳥」
-フェデリコ視点-

Posted by @acbh_dmc4

パオラとの打ち合わせを終え、俺はアサシン衣装に身を包んで今夜の会合の準備を進めた。
今夜中にロレンツォ殿と会話をして、アルベルティの件を詰めねばならない。
エツィオの友であるレオナルドという青年から作成してもらった、俺用のアサシンブレードを左腕に着け、腰に長剣を差して準備は整った。
それでは道中を急ごうと、部屋を出た所で慌ただしく狐の部下が俺を見つけて駆け寄って来た。

「アンタの親父が襲われた!ヴェッキオ宮殿に連行されて、牢屋に!フィレンツェの国境門という門には番兵が張り付いている。アンタも探されている!」
「予言より動きが早いアルベルティの家にボルジアの姿はあったか?」
「いいえ、判事もどこかへ姿を消しています」

フィレンツェから抜け出す事が出来ないか確認する為、俺はここからほど近い東門へと向かうことにした。
街には見張りの兵が巡回しており、屋根には弓兵が控えている。
厳重警備の中、人々に紛れてそこまで行ったが、フィレンツェへ出入りしようとする者は皆厳しい取り調べがなされ、持っていた文書や荷物は執拗に検められていた。
そして散々調べられた挙句、誰一人としてフィレンツェを出る事も、また入る事も叶わないようだ。
完全に包囲網を敷かれてしまい、俺は来た道を引き返した。
ヴェッキオ宮殿に行こう。父上と話ができないか、でなければ父上の無事だけでも確認しよう。
深呼吸をして思考を鮮明にしてから注意深く通りを歩いた。シニョーリア広場へと着き、ヴェッキオ宮殿の一際高くそびえる塔を見上げた。
鉄格子の嵌っている窓から僅かに明かりが漏れている。父上はあそこか―――
宮殿の入り口には番兵が立っていたが、塔の上に他に人影はないようだ。

俺は気を引き締める様に息を吐いてから、広場の端を移動して北側の狭い路地へと向かった。
人の姿が無くなるまで息を殺して待ち、人が途切れた隙を見計らい、壁の張り出した部分に飛びつき、上を目指した。
胸壁まですいすいと登って無事に通路へと辿り着き、近くの物陰に体を隠して周囲を観察する。
見張りが二人その場にいたが、こちらに気付く素振りはない。こちらへは背を向け、眼下の広場を怠そうに監視しているようだ。
俺は音もなく二人に近寄り、その首に腕をかけて勢いよく床に転がすと、素早く顎下を蹴りつけ、一人の意識を飛ばさせた後、もう一人の方も同様に処理した。
声も出させず番兵達の意識を奪い、物陰にその二人を隠すと、次は塔の攻略だ。
先程登って来た壁とは違い、この塔の壁面は滑らかだ。扉や窓の淵を辿って上階を目指すしかない。
慎重に壁面に指をかけ、北側と西側の壁が出会う角まで回り込み、西側の壁へと体を移す。
難なく目的の鉄格子の嵌められた窓へと辿り着いた。有難い事に窓の下には調度足を掛けられる突起があった。

窓から中の様子を確認すると、そこには父上の後ろ姿が見えた。
もしかしたら監房の近くには見張りが居るかもしれない為、潜めた声で俺は「父上!」と呼びかけた。
父上はその声に素早く反応し、背後の窓を振り返ると目を瞠った。

「フェデリコ!まさかここに来るとは見つかってはいないだろうな?」

そう心配しながら近寄ってくる父上の姿は、テンプル騎士団の連中に酷く暴行されたのか、口や手が血まみれで、痣が出来ていた。
こちらを心配させまいとしてか、笑みを見せていたがその顔色は酷く悪い。
身体の底が熱くなるような怒りを感じたが、今はそれどころではないと気を落ち着けて父上に対面した。

「父上、お体は
「なに、少し殴られたにすぎない。平気だ。それより何故ここに来た?ロレンツォ殿の元に行かなければ」
「フィレンツェから出ることが出来ませんでした。どこも見張りの兵でいっぱいです。俺も、これからどうしたらいいのか
「狐からの報告は聞いたか?」
「はい。我々の予想通り、ポエティオに託した手紙を横取りし、アルベルティが文をつけてそれをテンプル騎士の誰かに渡すためにまた使いを出していた、と」
「恐らく、それを合図にフィレンツェの門を塞いだのだろうな狐が外に出て居れば良いのだがアレは勘の鋭い男だ

父上の視線が思案するように逸らされる。なんとなく「エツィオに知らせてくれているでしょうか?」と尋ねていた。
その問いに、父上は自嘲するように笑い、俺を見やると、悔しそうに「我々で解決したかったのだがな」と肯定した。

恐らく父上はエツィオに頼らずともこの件を解決し、自分たちだけでフィレンツェは護れると示したかったのかもしれない。
だが、これはテンプル騎士団との本気の戦争だ。想定外の事が起こり、俺たちの力だけではどうしようもない事態になってしまった。

「フェデリコ、何としてもロレンツォ殿と会わなければ。彼しかこの裁判を止められない」
「盗賊団や他のアサシンもシニョーリア広場に待機するよう伝わっています。いざとなれば公開裁判を中断させて――
「それでは意味がないのだ。勿論、それを最終手段として指示したが、公的にメディチ家に仕えているアウディトーレ家であるからこそ意味がある」
「ええ、承知しております。では、俺はこれからどうしたらいいでしょうか?」
「隠れていろ。エツィオの予言通り。あの子のように」

今の俺では役不足なのだろうか。今は身を隠し、もしもの時の為の火種を残しておくほかない。
悔しさに唇を噛んだが、父上は優しい顔で「お前が頼りなのだ」と俺を励ました。
今は何もできる事はない。もし強引にフィレンツェを出ようと門での戦闘を開始すれば、すぐに父上の首が飛ぶかもしれない。
せめて番兵達の交代の時に隙が出来るよう、身を隠しながら見張るしかない。
とにかくメディチ家へと父上の指示の下、俺は素早く牢から離れ、今一度フィレンツェの国境門へと向かった。


***

国境門に辿り着くと、周囲を見渡しアサシンやその仲間が居ないか確認した。どうやらアサシンも盗賊団も居ないようだ。
門の前にはしかめつらしい番兵が隙なく周囲を警戒しているし、たった一人ではここの見張りの隙を突けるとは思えない。
一先ず協力してくれる味方を探さなければ。

周囲をぐるりと一周したが、やはり盗賊もアサシンの仲間も見当たらなかった。
巧妙に隠れているのかもしれないが、それを確認している暇はない。一度パオラの元に戻るしかない。女たちの話を聞いて、駄目なら盗賊ギルドだ。

屋根の上を慎重に移動し、薔薇の館へと舞い戻った。パオラに状況を話すと、顔を曇らせて女たちに指示を出して情報収集をさせるようだ。
何人かには使用人と共に国境を超えるべく使いも出してくれた。

「フェデリコ様、まずは落ち着いて。貴方は身を隠さねばなりません。今はここで報告をお待ちいただいた方が良いと思いますわ」
「そんな悠長にしている暇はない。何としてもロレンツォ殿をフィレンツェに呼び戻さねばならない!」
「お気持ちはお察ししますが、現状門番を突破する事は不可能。貴方の仰る通り、無理にでも門を突破すればお父上の命が危ぶまれます」

パオラの言う事も分かるつもりだが、門から離れたここからでは、いつ警備の隙が出来るか分からない。
門の監視はしておかなければ。

「狐は?」
「見当たらないようですわ。恐らく、フィレンツェの外に居らっしゃるかと。フェデリコ様
「では、盗賊ギルドに行く。何人かの盗賊とアサシンを集めて門を監視する」

パオラは迷うようにうろうろと視線を彷徨わせたが、俺の決意が堅いと分かると、一つ頷いて赦してくれた。
盗賊ギルドに向け、また屋根の上を駆ける。
今夜は街中の警備も相当厚くなっており、移動には細心の注意を払った。
盗賊ギルドに着くと、ギルドの軒先には先ほど俺に報告を寄越した茶色のローブの男が佇んでいた。
人混みに紛れ、男と共に東門に移動しがてら小声で確認した。

「狐は何処に居る?フィレンツェの外か?」
「はい。幾人かを引き連れて郊外の方で監視を。その為、単身でロレンツォ・デ・メディチに危険を知らせている筈です」
「ならば、明日、彼がロレンツォ殿を連れて来てくれるか。それが知れただけでも良かった。だが外から狐が応援に駆け付けた際に加勢が居るだろう。俺たちも門前に待機して居よう」

盗賊の男は重々しく頷き、俺に従って屋根の上を静かについてきた。
フィレンツェに居るアサシンと傭兵を幾人か門の監視に当てる為に、盗賊たちに指示を出し呼んできてもらう。
フィレンツェの国境門を数人の盗賊とアサシン、傭兵達で監視網を敷いた。
この地に居るアサシンの勢力はそれほど多くはない。我が家とメディチ家が協力関係になってから、徐々にアサシンの勢力は増してきたが、現状を見る限り敵の勢力の方が上のようだ。

「くそ、屋根の上にも弓兵がうようよ居るな壁を越えるのは無理か。高すぎるな」
「交代の兵を襲い、敵兵に紛れますか?」
「そうだな。少しずつ入れ替わっていこう」

根気強く門番の交代を待つ。漸く幾人かの番兵が交代で入れ替わっていくのを見て、下がる番兵の後をつけようと動こうとした。
しかし、一人のアサシンに止められた。

「フェデリコ様は番兵と入れ替わらない方が良い。今回の任務で長の代わりに貴方が指揮を執っておられるのですから」
「ここの番兵たちと入れ替われるほどの人員は居るのか?」
「厳しいですが、半分程は入れ替わることが出来るでしょう。そうすれば隙を突いて貴方を送り出すくらいは出来ます」
「では、俺は屋根の上に居る番兵を何名か処理する」

アサシンの提案に俺は一つ頷くと、俺は物陰から弓兵の位置を確認した。
刻々と時間が過ぎる。
月が中点を過ぎたあたりで一度目の兵の交代があった。今来た者達は、果たしてアサシンの仲間だろうか。
一人の新しい番兵が、俺の潜んでいる付近を何気なく見やり、僅かに頷いた。
どうやら無事にすり替わりが出来たようだ。だが、そこからが膠着状態が続いた。待てども夜が更けていくばかりで、フィレンツェの内も外も何の変化もない。
交代した番兵はせいぜい3~4人程度で、俺が外に出る隙を作れるほどでもない。

ひたすらじっと時期を待っていると、パオラの指示で情報収集してきた女と、盗賊の男が報告に駆け付けてくれた。
どうやら狐のチームとの連絡が取れたようで、伝言を預かって来たようだ。
それによれば、既に狐が事の次第をロレンツォ殿に知らせに走っており、応援を頼んでいるようだとの事だった。
俺たちの計画と同じく、狐は北門の兵を入れ替える作戦を執行しているらしく、俺はそちらに向かうことにした。
東門の既に入れ替わった者達は引き続き、そちらの監視をしてもらうことにした。

北門や北東門は閉ざされていたが、そこにも番兵が内外に配置されていた。
しかし東門よりは警備が薄い。弓兵も近くにはそれほど居ないし、これならばフィレンツェ内のアサシンでも入れ替えが完了する事だろう。
もしかしたら早朝には狐に説得されたロレンツォ殿が、こちらに来るかもしれない。
そう思い、祈るような思いで俺はギリギリまで国境門の所でロレンツォ殿を待っていた。



あれから一晩、狐からの連絡も、兵が入れ替わった様子もないまま日が昇ってしまった。
俺の心を反映するように空はどんよりとした暗い雲が垂れこめ、市内はムッとした熱気を帯びていて息苦しさを感じる。
もう時間だ。恐らくシニョーリア広場で直ぐにでも見せしめのような裁判が始まってしまう。
一晩中身を隠し、門の様子を窺っていた為に、疲労で重くなった体を鞭打って広場へと向かった。

シニョーリア広場には既に黒山の人だかりが出来ており、昨日まではなかった裁判の為の演壇が作られていた。
中央に据えられたテーブルには裏切り者のアルベルティと、見知らぬ男が座っていた。だが、その男はボルジアではないことは分かる。
続く緊張の中、かつてない程に頭の中は冴え冴えとしていたが、そのせいで今現在どんなに我々が不利かも同時に分かってしまった。
壇上に佇む父上の姿に目が釘付けになる。鎖に繋がれ、父上の目の前には柱が組まれ、太い横梁から一本のロープの輪がぶら下がっている。
絞首台と父上を見た瞬間、焦燥と憤怒が体の底からどっと押し寄せてくる。今すぐにでも壇上のアルベルティの喉を掻っ切ってやりたい衝動を抑え、さらに周囲を見渡す。
観衆を取り囲む様に重装兵が配置され、暴動でもあれば彼らがその手に持つ凶悪な武器を振り回してねじ伏せる準備が出来ている。
こちらの手勢の数も確認の為に視線を走らせるが、ここの広場に居る味方は圧倒的に少ない。味方達は自分たちの旗色が悪いのを悟って、皆厳しい顔になっていた。

(こんなところで、エツィオの期待を裏切る訳にはいかない。でなけりゃアイツに会った時に、なんて言えばいいんだ!)

絶対に止めて見せる。それが俺の使命で、今日まで必死に厳しい修行に打ち込んで来たのだ。
思わず腰に下げた長剣の柄を握る。すると壇上に動きがあった。

法を司る者が着る豪華なローブを身に着けたアルベルティが、堂々とした素振りで両手を上げた。騒がしかった聴衆が即座に黙り、広場は静寂に包まれる。

「ジョバンニ・アウディトーレ!」

アルベルティは威圧的な口調でつづけた。

「右の者を国家反逆罪でここに告発する!この申し立てに対し、何か反証はあるかね?」

父上はその言葉に、酷く失望したような冷めた目でアルベルティを見つめていた。
縛り上げられているが、堂々とし、少しも感情を乱さぬ父上の姿に、アルベルティは得体の知れないものを感じて狼狽えたようだった。
そして、目の前の裏切り者を軽蔑の眼差しで睨めつけながら、父上はアルベルティに反論した。

「反証ならある。こうなる事を見越して既に準備していた。貴様が何と繋がっているかの証拠も揃えている」

怒鳴っているわけでもないのに、凛とした自信に満ちたその声は、広場に強く響き渡っていた。
少しだけ広場がざわつく。父上の予想外の返答に狼狽えるアルベルティは、背後に控えた痩せぎすな老齢の男に何やら耳打ちされていた。
顔を曇らせ、何事かを審議しているようにも見える。相談が終わったのか、アルベルティが深く息を吐き、更に横柄な態度で父上に命令した。

「では、その反証をここに提出しろ。それから、嫌疑が掛けられているのはジョバンニ、お前だけではない。フェデリコ・アウディトーレにペトルチオ・アウディトーレ。この二人も貴様の共犯者として名が挙がっている。反証がこの者たちから齎されたとして、共犯者の齎す証拠とやらが審議するに値するとは思わん事だ」

勝ち誇ったようにその醜い顔を歪めてさらに父上を責め立てる。
父上の悔しそうな顔でも見たかったのだろうが、父上は更に鼻で嗤ってアルベルティのその言を退けた。

「勿論我が息子が反証を齎す訳ではない。我が真の友、ロレンツォ・デ・メディチ、その人がここに反証を持ち、駆けつける事になっている」
「出鱈目を!では、そのロレンツォはどこに居ると言うのだ?居るのならば今すぐ出てくるのだな!」

まったく堪えていない父上にいよいよ不安が勝ったのか、みっともなく声を荒げて詰め寄るアルベルティに、群衆がざわめいた。

「公正を期すならば、私の反証もこの場で読み上げる必要があるだろう。本日、この場でその証人がこの壇上に上がる。それまで、勝手に事を進めるのはウベルト・アルベルティ、貴様にとって後ろ暗い事があるからだという証拠にもなるぞ。こちらには全ての証拠が揃っている。ここで私を処刑したとして、その証拠はフィレンツェの重鎮の手にあるのだ。私を殺したとしても、決してこれで終わりではない。お前は報いを受ける事になる。必ずな!」
「ひ、被告の罪に対する証拠は山ほどあり、検証済みなのだ!直ぐに反証が出ない所を見れば明らかな事だ!よって有罪を確定する!ここには居ないが、フェデリコ・アウディトーレ!ペトルチオ・アウディトーレも同罪と見なす!」

徐々にざわめきが強くなる群衆に向かい、アルベルティは更に声を張り上げた。

「では、判決を言い渡す!全員、極刑!刑は直ちに執行されるものとする!」

動き出した兵が父上に迫りくる。
ロレンツォ殿は間に合わなかった。このままでは、予言通り父上の処刑が執行されてしまう。聴衆の前で無実を証明しなければならなかったが、それよりもフィレンツェの教団の長である父上の命のほうが重い!
俺は堪らず大きく雄たけびを上げ、腰の長剣を勢い込んで引き抜き、襲撃の合図を送った。
屋根の上から飛び出す様にアサシンと盗賊たちが躍り出て、広場に雪崩れ込む様に傭兵達が姿を現した。
群衆を取り囲む重装兵に向けてアサシン達が飛び掛かり、そこここで剣劇の鋭い音が鳴り響いた。

群衆は蜘蛛の子を散らす様に悲鳴を上げて逃げ惑っている。まさに阿鼻叫喚だ。
壇上のアルベルティは俺の姿に気がついたのか、目を剥いて声を張り上げた。

「あそこだ!捕らえろ!共犯者だ!」

途端に重装兵が俺を取り囲む様に武器を向けて突進してくる。とても一人で太刀打ちできる数ではない。しかし、壇上で一人敵兵に抵抗している父上を見捨てる事は出来ない。
腹を括って意識を集中させ、手にした剣を正眼に構える。鎧の隙間を縫うようにして剣を突き、振るわれる斧槍をギリギリでかわした。
死に物狂いで剣を振りまた一人の番兵の胴を切り裂いたものの、追撃してきた敵の一撃を交わそうとした際に、手汗で剣が滑り、その隙を突いた敵に武器を弾かれてしまった。
剣は甲高い音を立てて石畳の上を滑る様に遠ざかってしまう。万事休すか――?!
やはり、俺はエツィオの予言の通り死ぬ運命だとでも言うのだろうか?すると、目の前群衆の中から粗末な身なりの男が突然飛び出してきた。
男は電光石火の如く手にしていた剣で番兵の背後をざっくりと切り裂き、目の前に迫っていた敵兵が無力化された。
ニッと不敵に笑って見せたその男は「坊ちゃんもまだまだだな!」と憎まれ口をたたくと、俺の剣を手に取り、差し出してくれた。
互いを背に庇い、周りをぐるりと取り囲んでいる敵兵に向かい合う。一人で対峙するよりは随分心強い。

「分が悪いことに変わりはないですぜ」
「ああ。これ以上長引かせれば父上が持たない!」

たった一人の加勢が増えても多勢に無勢、重装兵に取り囲まれ、成す術がない。
だがやらなければやられるだけだ。俺は手の長剣を巧みに振り下ろして敵兵の首を切り裂き、返す剣で薙ぎ払い道を作った。反撃に振り下ろされる槍を左腕のアサシンブレードを突出させて、刃で滑らせ交わす。
敵兵との打ち合いの最中に、壇上の父上を見れば、今にもその首に縄をかけられそうな状態だった。
ドッと冷や汗が背筋を伝う。腹の底から焦燥感と絶望感が競り上がって吐きそうな程だ。
その首に、縄が掛けられ輪を絞られているのがまるでスローモーションのように見えた。
その後ろにいる執行人が処刑台の取っ手に手をかけていた。
目の前が真っ暗になりそうなほどの衝撃で、俺は叫び声をあげ、父上に駆け寄ろうと体を反転させた。
盗賊の男が何か叫んでいるのが背後から聞こえたが、俺はもうそれどころではなかった。
目の前の敵兵をタックルで突き飛ばし、処刑台へと駆け寄っていった。

その時、俺はヴェッキオ宮殿の入り口に、灰色のフードを纏った集団が静かにこちらに向かって来るのを見た。
一人の長身の男が手を上げる。
そして静かに、見覚えのある唇に傷の走った男が、高らかな掛け声とともにその手を振り下ろした。

「かかれ!」



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