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アニメ『平家物語』第六話「都遷り」の感想、徳子・びわが歌っている言葉、原作を交えた解説的なものなど。

全体公開 2 2750文字
2021-12-16 10:15:08
Posted by @sirasu810

 
六話です。清盛はついに「都をうつす」ことにしました。さらりと描写されていますが、このことはついに平家の悪行が極まったことを表しています。『平家物語』としては五巻に入っており、アニメ原作・現代語訳の『平家物語』では『都遷』について以下のように書かれています。

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さて、お忘れではありますまい。桓武天皇、この天皇こそは平家の流祖に当たられる。しかもこの京は平安城と名づけられて、「たいらかにやすき」みやこという字、これを宛てている。誰あろう、平家がもっとも尊ぶべき都でありましょうぞ。平らかなれ、平らかなれ! 先祖の帝がそうもご執心になられた都を、これという理由もなしに他国、他所へ遷されるというのは、ああ情けない!

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京都は東西南北に鎮護の地形をもつとされ、それらの強化として神社仏閣が配置されています。都は何度も移されてきましたが〈平安京〉とされてからは長く京都にあったんですね。それを平家の横暴によって動かした、国の頂点である帝さえ動かした、ということで破滅フラグここに極まれり。

びわたちは新都、福原へ向かいます。そして敦盛あつもりと出会いました。清盛のおいで、敦盛の祖父が鳥羽院から賜った名笛:小枝さえだを持っている笛の名手です。同じく笛の名手である小松殿こまつどのの三男:清経きよつねと月見の席で合奏します。重衡しげひら叔父上も参加しました。

後白河法皇のところには徳子が詣でます。これはアニメオリジナルのシーンです。徳子は今様いまようの一節をそらんじて囚われの法皇を慰めます。今様の全文は以下で、徳子が上げたのは[ ]の部分です。

 [ 見るに心の澄むものは ]
 やしろこぼれて禰宜ねぎもなく
 はふりなき[ 野中の堂のまた破れたる ]
 子産まぬ式部の老いの果て

ざっくり訳:神主も堂守もいなくなって荒廃した社やお堂、さらには子供のいないまま老いた女房を見ると「心が澄む」ものではないですか。

禰宜ねぎはふりも神職のことです。澄む、というのは清々しいとか、はっきりと分かる、という意味。風景や情緒の美のことを歌っているのではなく、荒廃したものから感じ入るもの・察せられるものがあるだろうといっているわけです。〈もののあはれ〉や〈諸行無常〉観を含むといえますし、仏教的な悟りのことも示していると思われる歌です。

徳子がこの歌を用いたのは、法皇が非常に侘しい場所に幽閉されているからでした。アニメでは描写されている風景が美しいためにちょっと伝わりづらいのですが、法皇のいるところは、狭く、侘しく、ぼろっちく、折々の彩りも、ひと気もない寂しいところなのです。あれでも。御所はもっと華やかな場所ですし、人もたくさんいて着飾っていますからね。

このシーンで徳子が言わんとするのは、こんなところにいるのは辛いことですが、これほど侘しいところにいるからこそ、これまでの法皇さまの栄華・豊かさ、さらにはそこから察せられるもの(仏教的悟りのこと)もお分かりになりましょう——といったところでしょうか。徳子の才女ぶりがすごい。

徳子の言葉の意味を察していながら「ま、そう長くはないと思えば、牢の御所も一興かも知れん」と返すあたりは、さすがの狸ぶりの後白河法皇です。

そして都さえも移した男、清盛は悪夢に苛まれていました。びわの音を聞き、しばし心を休めます。

所変わって伊豆。父の謀反によって幼少の源頼朝みなもとのよりともは伊豆の蛭島ひるがしまに流されていました。反旗を翻すこともなく、ずっと大人しくしていたために、これまでの平家の世においても無事に過ごせていました。しかし同じように伊豆に流されていたトンデモ怪僧・文覚上人もんがくしょうにん髑髏どくろを差し出して頼朝に言います。これはあなた様の父上の首だと。平家が牛耳っている世をどう思われるかと。

「頼朝さまならば、どのように変えられましょう」

平家を討てという意味ですが、頼朝は清盛の温情によって生かされていたので、あまり乗り気ではありません。しかし後白河法皇の院宣まで持ち出されては、勅命ということですから、兵を挙げるしかなくなります。

再び戦が始まります。小松殿の長男:維盛これもりの出陣です。戦に対する恐怖のある維盛は動揺しています。そして源氏の強者つわものたちの話を聞き、さらに恐怖が増します。
水辺と山の麓の灯りの数に、平家がおののいているシーンがありました。あれは戦があるからと避難していた人々が使った生活の火なのですが、源氏武者の話・その勇猛さと軍勢の数を聞かされていた平家の兵は「あんなにも多くの敵兵があるのか」と誤解して恐れます。合戦前から尻込みしているわけですから、瓦解はすぐでした。

ここでびわが歌うのは『平家物語』五巻にある『富士川』を引用抜粋したもの。戦場面の琵琶は調子が激しく、迫力があります。

 その夜の夜半あたり、
 富士の沼にいくらも群れいたりける水鳥どもが、
 何にかは驚きたりけん。
 一度にばあっと立ける羽音の、
 大風・いかずちなんどのやうに聞こえければ、
 すわや源氏の大勢寄するは取り籠められては叶ふまじ。
 平家のつわものども取る物も取り敢へず、
 我先にとぞ落ち行きける。

「なぜ、戦わずして逃げたのだ?」
「鳥の羽音に驚き、一斉に逃げ出したとか」
「本当に……?」

頼朝の疑いももっともな話です。大軍勢に攻められると尻込みしていた平家は、夜中に鳥が一斉にばあっと飛び立った音に驚き、逃げ出してしまいました。清盛が激昂するのも無理はありません。戦の指揮をとるはずだった忠清ただきよや維盛に罰を与えようとしますが、知盛とももり重衡しげひらのとりなしによって事なきを得ました。

しかし維盛は非常に追い詰められます。弟である資盛すけもりの「兄上、子供の頃から怖がりで、刀を振るうより、舞を舞う方が兄上には似合ってるんだけどな。兄上、大丈夫かな……」という台詞が思い出されます。

平家は内側から崩れ始め、源氏が動き始めました。次回、ついにあの人の命運が尽きる時がやってきます。



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