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エツィオに生まれ変わったデズモンドは、平穏な人生を歩みたい

全体公開 3664文字
2022-06-15 00:43:07

第11話「結婚式」

Posted by @acbh_dmc4

ダンテに思い人への告白を嗾けてから、ひと月の時が経った。
その間エツィオは精力的に街を周り、厄介事を片付け、弟子になりそうな者たちを見繕っていた。
幸いにも筋の良い弟子候補となる手癖の悪い少女と、今一伸びない芸人の卵でそれなりに身体能力の高い男に指導をつけられると判断した。
アントニオに許可を取り、盗賊ギルドの中庭で二人の弟子候補を集めて指導を始める。
先ずは彼らには基本的な武器の扱いから教える事にした。
将来的にはヒドゥンブレードをそれぞれに与えるつもりではあるが、アサシンと言えど、表立って戦う事も想定しておく。
それぞれに扱いやすい武器を選ばせると、二人は小ぶりのナイフを選んだ。

さっそく二人のナイフの扱い方を見ようとする直前、弟子の後ろからひょっこりとローザが顔を出した。
エツィオは庭の入り口からこっそり入ってくる彼女に気付いていたが、弟子二人に気配を悟らせずに忍び寄る術は見事なものだ。
弟子たちに後ろからわっ!と声を上げて背中を軽くタッチすれば、弟子二人はビクッと肩を揺らして心底驚いていた。
二人の反応の良さに楽しそうに笑い声を上げて、エツィオの傍に歩み寄る。

「こんにちはエツィオ!これから鍛錬するの?」
「やぁ、ローザ。ああ。とても良い人材を掘り出したんでね」

人懐っこくエツィオに抱き着いてから弟子候補の二人を見る。
一人はエツィオとローザよりも2つ3つ年下の少女と、もう一人は同い年か少し上程度の痩せた眼光鋭い男だ。
男の方はもしかしたらテンプル騎士団に加入していた者ではないかと疑っている。
名前も顔もはっきりと覚えはないが、ダンテ同様何かしら関りがありそうだと直感が告げていた。
ヴェネツィアでも教団のために危険分子の排除を行ったこともあるし、可能性はゼロではない。
だが弟子候補に誘うに当たり、しっかり現在の身元は洗ってある。
理不尽が彼らの心を蝕む前に、使命をやり自信をつけさせることで大義を見出してくれることを祈る。

「本当にモノになるの?」
「彼らは筋が良い。きっとやり手のアサシンになるだろう」
……あーあ、アントニオが許してくれたなら、私がエツィオの最初の弟子になったのに!」
「そのアントニオが朝から君を探してたぞ。早く行ってやれ」

軽くあしらうと、ツンと唇を尖らせて上目遣いで睨んできた。
ローザとはヴェネツィアに来てからまるで兄妹のような微笑ましいやり取りをしていたが、彼女の熱烈なアピールもあり、恋人同士となった。
今夜はご機嫌を取ってやらなきゃな、と苦笑してディナーのお誘いをすると、顔を綻ばせてご機嫌で去っていった。
講師役のエツィオの浮ついた姿を見せつけられた弟子二人は、半目になって呆れていたが、エツィオは気を取り直す様に咳払いをすると、案山子に向かって武器を奮うよう号令をかけるのだった。


***


日々弟子たちの指導や見回りなどをして過ごしていたエツィオの元に、ダンテから近況報告の手紙が届いた。
なんでも、告白が成功した事と長年の思いが成就して愛溢れる日々を送っていること、そして感謝の言葉が綴られていた。
背中を押してくれたエツィオに、是非許嫁を紹介したいと面会の打診を受け、現在エツィオは待ち合わせ場所へと向かっていた。
目的地に近づけば、ダンテが大きく手を振り、隣には目を見張るほど美しい女性が笑顔でエツィオを迎えてくれた。
仲睦まじく寄り添う二人はとても幸せそうで、こちらまで幸せな気持ちになるほどだ。

「エツィオのお陰で勇気が出た。本当に感謝しているよ。二人とも、長い事お互いに想い合っていたみたいで、告白したら遅いと叱られてしまった」
「わたくしも、彼の事は幼い頃からずっと愛しく思っていました。わたくしから思いを告げるべきか迷っていたら、お話があると、想いを告げてくれたのです。今とても幸せですわ」

熱く見つめ合いながら二人の世界を作り上げている恋人たちを、エツィオは眩しそうに眺めた。
祝杯をあげて二人の馴れ初めを聞く。
いかにして互いを意識するようになったか、その思い出話は甘酸っぱく、これぞ青春と言った風で微笑ましく思った。

……それで、エツィオ。俺達の結婚式に招待したいんだ。想いを伝えられたのは君のお陰だし、是非参加して欲しい」
「喜んで!こんなに早く友人の晴れ姿を見れるなんて、とても嬉しいよ。しかしもう結婚するのか。善は急げってやつか?」
「ああ。お互いの両親に心が通じたと報告したら、大喜びでどんどん話が進んでしまってな。式も直ぐに挙げるよう張り切っているんだ」
「それだけ周りはヤキモキしてたんだろうなぁ。目に浮かぶようだよ」

ニヤニヤしながらそう茶化すと、ダンテは弱ったように眉尻を下げて、グロリアに腕を叩かれていた。
ヴェネツィアに来て間もなくできた一般人の友人の慶事は、エツィオにこの地での希望を見せてくれた。
きっとこの先、どんな困難が訪れようときっと上手く行くはずだ。エツィオはそう確信し、その日いっぱい幸せそうな二人を心から祝福した。


******



ダンテの結婚式は、彼の職場でもあるセタ宮で行われた。
要塞のような厳つい建物は、式場にふさわしく、色とりどりの花々で飾られ、中央広場に立食形式の料理が並べられていた。
カラフルなランタンやキャンドル等も置かれ、夜には雰囲気満点の美しい光が会場を飾り立てるだろう。
新婦であるグロリアは水の都ベネツィアらしく、宮殿の裏手をぐるりと走る水路から、中庭の片側にある門までゴンドラに乗って入場した。
柔らかな白地に金の刺繍が美しいドレスに、生花に飾られたベールが彼女の美しさを引き立たせていた。
親族や友人たちの盛大な拍手に迎えられ、ダンテとグロリアはともに微笑みあい、バージンロードをゆっくりと歩いて会場中央に立つ、神父の元へと向かった。
互いに結婚誓約書にサインをし、生涯の愛を誓い、幸せそうにキスを交わした。
参列者のお祝いの歓声が上がる。
大勢の親族友人に祝福されながら、恙無く和やかに式が終わった。


披露宴には同僚の兵士達や、彼の懇意にしている友人たち――その中には勿論マルコ・バルバリーゴやエミリオ・バルバリーゴの姿もあった。
常に盗賊たちに見張らせて情報は入ってきていたため、この度の式にも参列することは知っていたが、何食わぬ顔で新郎新婦に近寄るマルコに苦々しい思いを抱いた。
今ではダンテと友人関係となり、正義感の強い彼を好ましく思っているが、あの二人には手こずらされたものだ。その思いがチラついて落ち着かない。
しかし顔には出さず、他の招待客達からそれとなくマルコ等の情報を集める。
表立って彼らの批判こそしないものの、どの者達も大小迷惑やその醜悪さを目にしているらしく、あまりいい反応はなかった。
ダンテ自身も違和感を覚えているようではあるものの、家の柵などで関りを切ることもできないため、これからの夫婦関係を心配する声もあった。

気づかれぬようダンテと談笑しているマルコ達を盗み見る。
一見穏やかそうに会話をしているが、新婦であるグロリアが時折居心地の悪そうな顔で、ダンテをチラチラと見上げていた。
挨拶を終えたマルコが彼らから離れるのを見届けて、エツィオは気づかれないよう、さり気なく監視ができる位置に移動した。
エミリオの元へと向かい、何やら耳打ちをすると、グロリアをまるで品定めするようにねっとりとした視線を送り始めた。先ほどの挨拶でもその厭らしい視線を直接彼女に浴びせていたのだろう。
エツィオは不快感を覚えながらも、パーティーを楽しみつつ、さりげなく二人の監視を続けた。

大きな楽団や歌声自慢の吟遊詩人に絡まれながら、エツィオはダンテたち夫婦の親族や、ごく親しい友人たちとも親睦を深めていった。
何人かの貴族とも知り合いになれた為、そこを足掛かりにヴェネツィアのドージェを紹介してもらう約束などを取り付けた。
今後起こるであろう、エミリオやマルコ等の断罪の際、力を貸してくれる伝の確保は最重要課題だ。
更に贅沢を言えば、総督にもいつか目通り願いたいものだが、それは今後の活躍次第になるだろう。
結婚式というのは最高の社交の場に、ヴェネツィアに来て早々出られたのは幸運だった。

末永いダンテとグロリアの幸せを願いながら、二人の結婚式は幕を閉じた。



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