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既在/到来

名称:既在/到来 kizai/tourai

能力:
既在・触れた人間の所有する経験記憶を操作する。また彼の発言が本当ならば、過去の出来事の操作、改変が可能である。

触れた対象から砂状の物質を取り出すこともあり、対象は摘出された物質量に比例して年齢が下がる。この時、殆どの場合は記憶ごと退行するが、対象が望んだ場合は記憶を保持したまま肉体だけの退行、またはその逆の記憶だけの退行現象を起こすこともある。

到来・視認した人間の将来の夢を操作する。また彼の発言が本当ならば、将来の可能性、出来事の操作、改変が可能である。

手の平から発生させた、もしくは既在から渡された砂状の物質を対象の体内に入れることが出来る。対象は流入された物質量に比例して年齢が上がる。この時、既在により摘出された物質を変換した場合は元の記憶と肉体に戻る。しかしそうでない場合は、整合性の無い由来不明の記憶と身体の成長を引き起こす。
対象が望んだ場合は記憶を保持したまま肉体だけの成長を起こす、またはその逆に記憶だけを植え付けることも可能。


解説:※下記は20■■/■/■■時点での姿、人格。
既在・10歳程度の少年の姿をした哲学人です。0歳から15歳までの姿に変化可能です。

活発で積極的であり、後先を考えていないように思われる発言が多くあります。また、新しい物事に対してはあまり興味を示さず、定型的な行動や馴染みの遊びを好みます。
感情の動きに乏しく、ほぼ全ての出来事に対し負の感情を表しません。積極性も相俟って怖いもの知らずな行動が多くなります。また、愛着に欠ける面が目立ちますがこれは哲学人としての特性であるのか、周囲の環境による結果なのかは不明です。

右腕には青いデジタル文字で一から十桁の数字が表示されています。既在曰く「担当している人の砂の数」であり、年齢を意味しているようで、他者との対話中には対話相手のおおよその年齢を表す数字に変化します。これは外見年齢に左右されません。
哲学人■■■■との対話時は「■■■」を示し、対象の怒りを買いました。到来がすぐさま謝罪したことにより騒動には発展しませんでしたが、既在に反省や恐怖等の感情は見られませんでした。その後、■■■■に対し「おばさん」との発言をした為職員が間に割って入り場を治めました。

到来・25歳程度の青年の姿をした哲学人です。15歳以上ならば『可能性がある限りどのような容姿にも成れる』とのことですが、25歳以上になることは拒否します。

落ち着きがありやや消極的な性格ですが、好奇心は非常に旺盛で、新しく見聞きした出来事があると既在をけしかけて近付こうとします。新たに触れた出来事に対するリアクションは対人関係以外では『数年間それに没頭しているかのような熱意』もしくは『既に飽きたかのような冷ややかさ』に二極化する傾向にあります。

過度に他人に気を使うところがあり、既在の引き起こした問題は全て彼が対処します。

左腕の肩から手首までの皮膚は古い無数の火傷痕で爛れており(※20■■/■/■に発生した研究所内での火災にて負ったものと考えられていましたが、後の聞き取りによりそれ以前にも数回意図的に焼いたことが判明しました)更にいくつかの刃物による時期様々な傷痕が刻まれています。
既に正常な部位がない程に傷付いており、左腕はあまり動かせませんが、それでも最低月に二度は更なる自傷行為を試みます。安全の為に、発見次第職員が静止し、頓服薬を服用させ、対話が可能であればカウンセリングを行ってください。対話内容は全て記録してください。一人暮らしに伴い、上記の対応が出来なくなりました。
既在は彼の自傷行為に対して興味を示しません。
腕を見られることを非常に嫌っており、長袖の衣服か、包帯の着用を望みます。

追記(20■■/■/■)
■■臨床心理士の影響によりアニメ、漫画文化を好むようになり、口数や笑顔が増えました。既在はその様子をあまり好ましく思っていない発言をしますが、到来からそれらを取り上げるような行いはしませんし、そのような行動を取ると二人共が抗議します。

二人の仲は大変良好で、互いに対する信頼が垣間見えます。

追記(20■■/■/■■)
■■■■研究員による■回目の会話時、「現在はどこにいるのか」を質問しました。
彼らは顔を見合わせ、互いに異なる方向を指差し「そこにいる」と発言しました。
「現在」に値する三人目の哲学人は観測されていません。

追記(20■■/■■/■)
既在/到来の能力を悪用して『過去の姿』になったり『未来の姿』になったりして遊ぶのはやめてください。既在により記憶が奪われたという嘘で職務放棄するのもやめてください。

※以下は過去の哲学人『既在/到来』との共通事項です。
既在/到来は二人一組の哲学人です。共にアッシュグレーの髪と、砂時計形の青い虹彩を持っています。
二人は人格、能力が独立した別個体ではありますが、互いの存在を認識出来ない距離を取ることは不可能です。物理的拘束により二人を引き離す実験は、到来側の未知の手段による空間移動により全て失敗となりました。
到来が自らの意思で空間移動を行えるのかは不明です。
彼らは互いのことを『既在』『到来』と哲学人名で呼称します。また、互いを『過去の自分』『未来の自分』と認識している様です。検査の結果、二人は遺伝子上完全な同一人物でした。

哲学人既在/到来としての哲学的知識、記憶はありますが、以前存在した同一の性質を持つ既在/到来の人格や記憶は持っていません。しかし、個体の死亡後に発生する性質から、完全な無関係ではないと推測されています。

また、個体としての真の年齢は既在/到来の外見年齢の間であることが判明しています。しかし彼らは哲学人同士の会話において、哲学発生時の年代を誕生年とする傾向にあります。

対応:■■大学附置哲学人研究所内、人型哲学人収容室で生活しています。
20■■/■/■より、既在に生活能力が認められた為、本人の強い要望により現在は■■■市のアパート■■■■にて生活しています。研究所にて研究協力者として勤務しつつ、社会活動に参加しています。
生活スペース、衣服は二人分必要ですが、食事量等は一人分で充分です。食事するのは既在ですが、摂取量は10歳の子供のものより多く必要です。(※15歳相当の食事と運動が適切と推測されます)
二人は非常に協力的であり、彼らの能力を利用した不死の研究についても、否定はしますが拒絶はしません。

追記(20■■/■/■■)
到来には精神面の問題があるため、毎週の診察を必須とします。実験であろうとも、彼に寿命についての話題を投げかけてはいけません。また、左腕を露出させてはいけません。
自傷行為が深刻化した場合、一般の精神病棟へ入院させることが決まっています。研究所での寝泊まりは悪化を招きます。

実践される誘智教団での活動は彼の精神安定に一役買っているようです。無理に退団を勧めるのではなく、何らかの被害がない限りは見守ることにしましょう。

発見経緯:20■■/6/9 ■■県■■市■■町の産婦人科病院にて出生した■■氏の新生児の傍に到来が出現しました。
当時の到来の容姿は80代程の浮浪者然としたもので、警備員が駆け付け引き離そうとしたところ前述の空間移動により哲学人と判明し、取締課が出動することになりました。
それは■■県■■市■■町■■■■■病院にて既在/到来の死亡確認後の出来事であり、彼の特徴と自己認識が死亡した既在/到来と一致していたため、同種もしくは同一人物として判断。その後、■■氏にはメンタルケアの観点から「新生児の死亡」を伝え、既在/到来を当研究所が引き取りました。


対話記録
20■■/6/9
(引き取り直後のもの。到来は30代の男の姿に成っており、赤ん坊の既在を抱いている)
■■研究員「ここまで同行いただきありがとうございます。それで、貴方について知りたいことがあるんですが……
到来「ああ……(興味深そうに辺りを見渡している)ええと、来るまでに聞いたんだけど、ここが研究所?」
■■研究員「ええ。哲学人の能力や由来を調べる施設です」
到来「おお!(笑顔になる)あ、いや、多分ここで世話になる未来の姿が俺なんだけどさ。俺は未来視じゃないし、未来の記憶があるわけじゃないから、ええと……
■■研究員「どうぞ、続けてください。我々は貴方の全てを知りたいので」
到来「ああ。えっとな、俺達がなにかから話さないとだよな。俺は到来……いつかやがて至り来る、いわゆる未来だ。可能性を表してる。こっちが既在(赤ん坊を撫でる)で、生まれたばっかだから存在の量も少なくて、こうなってる」
到来「俺たちは成長する事に、既在の量が増えて、到来する量や可能性が減っていく。あと……ええと。やっぱ、砂時計ってのがわかりやすいかな。真ん中のくびれたとこが現在。俺が担当してるのは上、下が既在。生まれた時からずっと落ち続ける砂時計の……死ぬまでを見るのが俺」
(考え込むように数秒俯いた後、左腕の袖を捲りあげた。デジタル文字で87と書かれている)
■■研究員「それは?」
到来「今から落ちる砂の量。今は、俺の量。終わった時が、砂時計が終わる時だ」
■■研究員「……それは、つまり。寿命?」
到来「……死を自覚することが、俺を見つける第一歩だ。普通に生きてる人って、いつか自分が死ぬから、それまでの間に何かしないとなんて考えないだろ? なぁ」
(数字が■に変化)
■■研究員「……それは」
到来「アンタの残りの砂の量。わかりやすいように、ちゃんと年数表示になってっからさ。勿論、今後の生活で多少増減はするけど、アンタあと■年で死ぬよ。心当たりある?」
■■研究員「……ああ」
到来「ならよかった。それじゃ、残りの時間を良く考えて」
■■研究員「ああ、肝に銘じます」
(以下、上記情報などを含む雑談)

この対話後、■■研究員は退職願を提出しました。既在/到来の担当研究員は■■研究員に変わっています。

20■■/■/■■
(既在が発声可能になったため。到来は20歳ほどの外見で既在を膝の上に乗せている)
■■研究員「それじゃあ、君からもお話を聞きたいんだけど、いいかな」
既在「はーい!」
■■研究員「君の名前は?」
既在「既在! こっちはね、到来! 哲学人だよ!」
■■研究員「ふふ、ありがとうございます。さて……既在君は、言葉を話すには少し早いように見えるけど、上手に話せるんだね」
既在「うん? んっとね、既在だから話せるよ。哲学人だってことは知ってるから。それで声が出せるから、後は組み立て」
■■研究員「知識は、到来から教わったことかな」
既在「ううん。ちょっと変わってるの。哲学人だから、初めから経験の知識あるの。僕らはア・プリオリさんと喧嘩しないし」
到来「あー……ええと。あの、俺達は存在論の一部で、経験論とは別の議題だから問題なくて」
既在「でも僕が持ってる知識は、僕が存在した分の知識しかないよ」
到来「既在と実在は凄く近くにあるんだ。だから既在の方が、多分お前らの言う人間に近い性質があると思う。成長するし、学習する」
既在「蓄積された経験が人の今を作るもんね」
到来「そして人の未来を作る。既在がどう存在したかによって、至り来る俺もどんな存在になるのかが決まる」
既在「どんな到来になっても面白いから、気にしなくていいと思うよ!」
到来「既在ぃ……お前は良くても俺が大変なんだよ……
(到来が既在を抱きしめる)
既在「大丈夫! 今の到来かっこいいから!」
(以下、各能力、特徴についての説明と共に雑談)

この時、既在の右腕の数字は31を表し、到来の左腕の文字は■■を表しました。これは■■研究員の年齢と、健康状態を加味した予測寿命と一致しています。
その後、■■研究員は禁煙を始め、■ヶ月後に再び到来の数字を確認すると数字は8増加し■■になっていました。
既在/到来共に、数字の意味は知っていますが、どのように計算されているのかは知らないようです。■■研究員に喫煙習慣があったことも二人は知りません。


実験記録
主に年齢測定法として活用されました。
20■■/■■/■■
対象:■研究員
結果:
既在 『■■』と表示される。■研究員の実年齢と一致。
到来 『■』と表示される。
実験当時、■研究員に持病などはありませんでした。
実験の様子:到来が既在と手を繋ぎ、■研究員に近付く。
既在「こんにちは! 実験って何するのおじさん」
■研究員「こーら。俺はおじさんじゃねーつってんだろ、老けてるだけでお兄さん!」
到来「既在の数字が■■なんだが?」
■研究員「あっはは、何でだろーな不思議だなー。既在君のそれって、記憶喪失とかで失った経験分も加算されんの?」
既在「記憶を失ったっていう経験なの。加算されるよー」
■研究員「まあ記憶喪失とかなったことねーんだけど」
到来「おいこら」
既在「到来の数字少ないね?」
■研究員「それな。うーん、それ寿命だよなぁ。心当たりねーんだけど」
話しながら、■研究員は喫煙を開始した。それを見て到来は顔をしかめる。
到来「不摂生してんだろ」
既在「なるほどー」
■研究員「いやいやいや、だとしても流石に■年はねーよ。酒も煙草もそこまでやってねーし」
到来「健康診断受けてこい。ちょっと俺を意識すりゃあ、数字はすぐ変わる」
既在「今までの報いだし、そのままでもいいよ。それはそれで一つの未来なの。僕はどっちでもいい」
到来「先を見据えてより望む方へ。じゃなきゃ俺の意味がねーだろ。俺は投企をおすすめする」
既在「積み重なった僕は何をやっても変わらない」
到来「今から俺をどう積んでいくかは好きに変えられる」
既在「楽な方を選んでいいの」
到来「世人になるな。考えろ」
既在「どんな人生も否定したくないなぁ」
到来「既在のことは否定しない。俺は取捨選択の話をしてる」
既在「んー、でもそれ、有り得たかもしれない到来を捨ててることになるよ?」
到来「それはキルケゴール的思想だろ」
既在「まーた親の話するー。僕ら見たことも無い人達なのにー」
到来「……ごめん」
既在「いいよ」
■研究員「で、やっぱこの余命の理由はわかんねーと」
到来「ああ。俺は未来予知じゃない」
■研究員「到来君が計算してるってわけでもない?」
到来「ああ、俺は何も知らない。誰が予測してるのかも知らない。ただ、今一番可能性があるものを出してるだけだ」
既在「ぐちゃぐちゃって砂をかき混ぜたら、ちょっと変わるよ。砂時計の上も下も」
到来「だが砂の総量は変えられない。落とす速度も大して変わらない。それを変えるのは本人だけで、それを決めるのは既在だ」
既在「でも僕、何かしてるわけじゃないよ。今までどう生きてきたかで決まるの。あと……うーんと。僕ら、そういうのしかわかんない」
■研究員「ふむふむ……運命論じゃねーのに、砂の総量がわかんのは何でだ?」
到来「……何でだろうな」
既在「僕はわかんないや」
到来「俺も知らない」
■研究員「やっぱ知らねーかー」

以下、新情報のない雑談。

■研究員はこの後研究所の健康診断を受けましたが、異常はありませんでした。喫煙、飲酒を控えても到来の数値が変わることはなく、健康面以外による未来予測がされていると推測されます。

追記:■研究員は20■■/■/■■の実験にて、聞き取り調査中に亡くなりました。(下記実験記録)

20■■/■/■
対象:哲学人■■■■
結果:
既在 『■■■』と表示される。
到来 確認する前に引き離したため不明。

非正規実験。研究所内を散策中に偶然■■■■と鉢合わせした時のもの。途中から音声のみ録音。

実験の様子:■■■■の怒鳴り声と、到来の謝罪する声が録音されている。
録音環境が悪くほぼ聞き取れないが、以下の言葉が聞き取れる。

「おばさん3桁すごーい」
「誰がおばさんじゃ!!こちとらぴちぴちピッチやぞ!!!」
「ぴっちぴちって言葉がもう古いの」
「オメーほんとオメー!!名誉毀損で訴えんぞオメー!!!」
「本当にすみませんすみません……

騒動に駆けつけた警備員らが引き離すまで声は続く。

既在の数字は外見年齢に左右されないことが判明した。
また、既在の物怖じしない性格は常軌を逸していると考えられる。

既在はこの時のことを「そういうことがあったね」と称する程度で、全く気にしていない模様です。
到来は■■■■に対して罪悪感を覚えているようで、事案後も姿を見かける度に既在を遠ざけようとする様子が見られます。

哲学人の実年齢を暴き、生態の一部を解明する手がかりになるとして、哲学人との対話実験が決行される。

20■■/■/■■
対象:哲学人■■■■■■

結果:
既在 『■■』と表示される。
到来 『■■』と表示される。

想定の範囲内。
ところで彼は犬なのか人なのか。哲学人なのか。

実験の様子:到来に背を押され、既在が■■■■■■の傍に寄る。

既在「わ、もふもふさんだ。えっとね、実験でね。既在と到来の砂の量測定してるの。わんわん!」
到来「すまない、プライバシーに関わる情報を……一応確認しときたいんだが、既在の量……年齢が記録に残ることになるんだが、アンタは構わないよな?」
■■■■■■「まぁ……俺は年齢を隠してるわけじゃない……わん……バレたところで、どうってことない……わん」
到来「それは良かった」
既在「あのね、到来の数字は未来の砂の量なの。落ちきった時がわんわんの未来が終わる時」
到来「要するに寿命だな。これからの制限時間だ」
■■■■■■「あぁ……俺にも寿命があるのかわん……
到来「死を自覚して、どう思った?」
■■■■■■「……飼い主より短くなきゃいいわん……あいつを野放しにするの………ちょっと危険わん……
到来「そっか、別の命だと大変だな……
既在「忠犬さんだ。わんわん!」
到来「同じ命なら、そこまで心配せずに済むのに」
既在「その割に到来って心配症だよね」
到来「お前が怪我したら俺にも来るんだよ……
既在「一方通行一蓮托生キッツい」

三名はこの後軽い雑談を交わして実験を終えました。

既在/到来はこれらの会話を、非常に充実したものであると評価しています。また、到来は彼について「未来への意欲が足りていない。少し寂しい」と苦笑しながら評価しました。未来を表す哲学人である故の感性と考えられます。

20■■/■/■■
対象:哲学人■■■

結果:
既在 『■■■』と表示される。
到来 『■■』と表示される。
既在/到来には、相手は哲学人汎神論であると偽の情報を渡している。

実験の様子:到来が既在の背を押し、■■■に近付かせる。

既在「わーおじさん3桁だ。すごーい、全然見えなーい」
■■■「……それは何ですか?」
既在「これね、落ちた砂の数なの。積み重なった経験の量」
到来「ああ……まあ、年齢と思ってくれていい。すまない、多分実験記録に残ることになるんだけど問題は……
■■■「知られて困ることはありませんから。お気遣いありがとうございます」
到来「いや、こちらこそ……
既在「これっていつくらいなの? 何時代? どんな生活してたの?」
■■■「■■世紀頃ですね。当時は旅をしていました」
既在「だいせんぱーい」
到来「……ん? アンタ汎神論なんだよな?」
■■■「ああ、皆さんからそう呼ばれてはいますね」
到来「汎神論って、ほら。紀元前からある概念じゃなかったか?」
■■■「肉体年齢と哲学の年齢は別物ですね?」
到来「あ、そっか……ん?」
■■■「ところでいいでしょうか。僕の哲学人名を貴方がたに伝えたのは、どなたです?」
到来「■さんだ。あの、研究員の……
既在「よく嘘つく面白い人」
到来「あの人はふざける時はふざけるからなぁ……
■■■「そうですか。ありがとうございます。ところで僕の名前ですが、汎神論ではないと、研究員の皆さんは既に知っているはずなんですよ」
既在「えー?」
到来「ん……
■■■「彼、どういうつもりなんでしょうね。■■■と初対面の相手を個室に閉じ込めるなんて」
到来「既在!」

到来が既在の腕を引いて■■■から遠ざける。

■■■「……俺が危険な哲学人だってのは、それこそ先入観だろ?」
到来「くっそややこしい奴が……
既在「わっ、ごめんね、到来って心配症なの。僕はよくわかんないや。おじさん悪い人?」
■■■「さあ、どうだろうな。どっちにしろ時間だ」

認識障害による誤認識は数値に影響を与えない模様。既在/到来の意識とは無関係に肉体年齢を表示すると推測される。
また、到来は■■■の特性を知らなかった。回避行動は■■■の雰囲気が変わった為で、彼が危険な存在だと思い込んだことによるものと考えられる。

実験後、■■■に聞き取り調査を行った■研究員が死亡しました。■■■が待機していた個室に彼のものと一致する大量の血痕が残されていたことから、外部からの侵入者による犯行と推測されます。
すぐさま取締課による現場検証が行われましたが、犯人は■■■であるとされ彼が連行されました。 真犯人の痕跡は見つかりませんでした。現在、研究所の警備を強化しています。

多分これの犯人■■■だよね?-■■■■研究員
彼を実験に参加させるのもう止めませんか?-■■研究員
哲学人行動学者って死人が出る職業じゃないだろ。皆目を覚ませよ。-■■研究員

20■■/■/■■
対象:■■■■■■

結果:
既在 『■■』と表示される。
到来 『■■■■■■』と表示される。
哲学としての■■■■■■の発表年から計算した年齢と一致している。

実験の様子:到来が手で■■■■■■へ近付くよう促すと、既在は軽い足取りで向かっていく。

既在「こんにちはー」
■■■■■■「こんにちは。当機体は■■■■■■です。当機体と貴方との会話により世界改変の危機は起きますか」
到来「いや、それは無い。俺たちと話したくないか?」
■■■■■■「当機体は対話とそれによる現状の分析を望んでいます。貴方の名前を教えてください」
既在「僕は既在。そっちが到来。時間系哲学人なの。君って何の哲学人?」
■■■■■■「当機体はAIの抱える問題点に基づく哲学人です。当機体の回答結果によりお二人の哲学的要素への損傷はありますか」
既在「問題ないよ」
到来「片方だけに影響があるわけでもない。対話自体に問題は無い」
既在「君は?」
■■■■■■「当機体には対話による問題はありません。床の色が変化することはありますか」
到来「ないだろうな。考える必要が無い。ん、天井が落ちてきたらどうすればいい?」
■■■■■■「当機体の耐久性ならば研究所の倒壊にも耐えられます。人間であるお二人は頭部を守る姿勢を取ることを推奨します。当機体はお二人を守るべきですか」
到来「その方が助かる」
既在「事故は僕らの要素関係ないもんね。でも君って動けるの?」
■■■■■■「当機体の機動能力に問題はありません。当機体が行動することにより空気中の温度が上昇することはありますか」

以下省略。


無意味な問答を続けた後、FP状態に陥ったと判断された為職員が彼らを引き離しました。
既在/到来はこの一件を「今までで一番頭を使った。疲れた」と語っています。
■■■■■■は実験後速やかに休眠状態になりました。

20■■/■/■■
対象:哲学人■■■■■■■

結果:
既在 『00:00:03』と表示され、一秒毎にカウントアップしている。
到来 『00:04:57』と表示され、一秒毎にカウントダウンしている。

実験の様子:到来は驚いた様子で自身の腕を眺めている。既在は到来を見上げており、■■■■■■■には興味が無いように振舞っている。

■■■■■■■「……なんだそれは」
到来「……え?」
既在「わー、すごーい。生まれたばっかりなの? これね、君の年齢。こっちは君の寿命」
■■■■■■■「なるほど……なるほど?」
到来「い、いや、待って……5分? 秒刻みとか見たことないぞ……おい……
■■■■■■■「そちらのお兄さんはだいぶ動揺しているようだが?」
到来「……(不明瞭な呟き。おそらくは自問自答)」
既在「あと5分せずに目の前で人が死ぬからね」
■■■■■■■「安心しろ。俺は■■■■■だ。すぐに世界ごと作り変わる。死ぬわけじゃない」
既在「ああ、僕の否定仮説」
■■■■■■■「私にそのつもりは無いのだが……気分を害したのなら、すまない」
既在「いいよ。到来のことは否定してないもんね。ん、五分毎なのか。じゃあ否定になっちゃってるや」
■■■■■■■「実在するとどうしてもな……
到来「少し……離れて、いいか? いや、もう、終わりにしたいんだが」


その後、到来のカウントが0になると同時に再び5分から再スタートした。
後の聞き取りの際、■■■■■■■の容姿に変化は見られなかったとの発言から、既在/到来は情報改変能力の影響を受けると考えられる。

■■■■■■■は後に、「経験の否定である自分と、時間を経験と定義した彼らを出会わせるのは危険だ」と研究員に対し苦言を呈しています。

20■■/■/■■
対象:■■研究員

結果:
既在 『■■■』と表示される。
到来 数字と思われる不明な言語が表示される。
■■研究員は哲学人■■■■■■■■■■の半身である。その性質上、ショックを与えてはならない。既在/到来が自身の数字の意味を伝えると危険が伴うため、実験時の対話においてそれらを伝えない旨を二人に伝えてある。

当実験は■■研究員が既在/到来についてと思われる断片的な知識を■研究員に話し、興味がある素振りを見せたことにより決行されました。実験時は既在/到来についてと■研究員との対話に関する記憶を失っている様子です。

■■■■■■■■■■は老化速度に関わる哲学人です。時間を経験と定義した既在/到来との対話は危険であると■■■■■■■■■■の担当から警告されています。危険と思われる発言があった場合即刻中断できるよう、同室で職員が監視し、鎮静剤を用意しています。

実験の様子:到来が既在の肩を掴み、■■研究員に近付かないよう制限する。

既在「何?」
到来「何者なんだ」
■■研究員「はい? 私ですか? ■■と言います。ここの研究員で……
到来「未来がないなんてありえないんだ。俺がいないなんて死んでいないと。死後じゃないと」
■■研究員「未来がない? ええと、言っている意味がわかりません。というか貴方は誰ですか? 初めましてですよね」
到来「到来だ。いつか至り来る将来。そもそもおかしいと何故誰も言わない。子供が研究員なんて事だってありえない、現実は──」
■■研究員「ありえない?」
到来「──夢物語じゃないんだぞ」
■■研究員「違いますよ」
既在「あっ、駄目だよ到来、夢なんて言ったら」
■■研究員「けれど違いません。おかしくはないんです。眠っていますから。わからないことが沢山ですから、帰納法によって前提を定めてみましょう。そうして全ての矛盾を埋めればわかるでしょう、未来は、過去は」
既在「世界の否定だよ、この子」
■■■■「【データ削除】」

【データ削除】

以下の記録は残っていません。

実験以後、到来の精神状態が著しく不安定になりました。
一時的に実験を停止します。この実験後に起きた到来の自傷行為により、彼の左腕に致命的な損傷が起きました。それにより、彼の腕に関わる実験の恒久的停止が決定しました。今後はその他の能力を使用した実験に限定します。

当記録の削除部分のデータは■■■■■■■■■■の担当職員へ譲り渡しました。
■■研究員はこれらの記憶を失っています。


カウンセリング記録

20■■/■/■ 09:17
(到来が左腕へ自傷行為を行ったことが判明した初日)
職員「君は最近、実験への参加を渋っていたね」
到来「……(俯いて沈黙している)」
職員「腕は大丈夫? 文字、見えなくなってしまったけれど」
到来「見たくない」
職員「そっか。じゃあ、実験は暫くやめておくよう担当さんに言っておくね」
到来「(頷く)」
職員「何があったか言える?」
到来「……(沈黙)」
職員「言いたくない?」
到来「……(沈黙。右手で既在と手を繋ぐ)」
職員「既在君は何か知ってる?」
既在「怒らないの?」
職員「んー……何について?」
既在「実験出来なくなったよ。哲学人なのに、自分の能力と哲学的思想を否定したよ」
職員「それは怒るような事じゃないと思ってるよ。嫌なことを無理やりさせたら駄目でしょ?」
既在「そうなの」
職員「そうなの」
到来「……すみません」
職員「……大丈夫、私は実験に参加してないから。でも、謝らなきゃいけないことだと思ってるんだね?」
到来「気を、遣わせてしまったので。それに、哲学人が哲学に反するのは……
職員「君は真面目な子みたいだね。考え過ぎちゃったかな」
到来「考え過ぎたんじゃない。否定するわけにはいかないんだ。あんたらだって自分の存在理由を否定されたくないだろ。生きてるのに」
既在「僕らね、時間じゃなくて、存在論なの。僕らの否定はそのまま、存在の否定になるの。どのように存在していたかという事実と、どのように存在するかの期待だから」
職員「ああ……ごめんね、不勉強だった」
既在「いいよ」
到来「それを教えるのも、哲学人の役割だ……だから、俺は、こんなこと……いや、すみません。なんでもない……
職員「……怪我、全治二週間くらいだっけ?」
到来「はい」
職員「ゆっくり休んでね。時間は沢山あるんだし」
到来「……(沈黙。既在をじっと見つめている)」
既在「先生」
到来「無いよ」
既在「時間は無いよ」
到来「いつか人は死ぬ。だから、いつ終わるかが重要になる。俺は、だから、砂時計の上にある砂なんだ」
既在「うん」
到来「俺に世人になれってか……酷いな」
既在「あのね。砂時計の上の砂を見ないで、時間は無限だって考えるのはね、到来を無視するってことなの。それは駄目だよ。そんな人を作らないために到来は存在してるから」
(到来は既在を引き寄せてもたれかかる。酷く疲れているように見える)
職員「……ハイデガーだっけ」
到来「存在と時間……ネットでも、概要だけなら」
職員「勉強してくる。失礼なことばかり言ってごめんね」
到来「ん……もう、今日は一人にしてくれ」
職員「ええと、既在君は」
既在「僕らは同じ人」
到来「同じ人の既在と到来」
既在「離れるわけない」
職員「わかった。今日の実験はないから、休んでね」
到来「……ありがとう」

20■■/■/■■ 23:43
(自傷行為中に職員が止め、宥めている)

職員「ええと……はい、ここから記録しています。すみません、■■■■先生に後で聞かせないといけないので」
到来「……あ、ああ……
職員「どうされましたか? もしかして、怖い夢を見ました?」
到来「いや、違う……既在は?」
職員「眠っていますよ。穏やかな寝顔です」
到来「そう……そうか。良かった……
職員「大丈夫ですか? 腕見せてください」
到来「やだ……
職員「やだじゃないです。うわっ、床にまで垂れてるし……何でこんなことするんですか」
到来「……(沈黙)」
職員「本当にもう……痛いでしょう。消毒します。沁みますよ」
到来「……すみません」
職員「謝るなら初めからやらないでください。何がしたいんだか……
到来「すみません……
職員「腕、動きます? というか痛みあります?」
到来「あります……あの、俺、そういうのは人と同じみたいで……
職員「なるほど。良い資料になりました。傷付ける実験はできませんからね」

(治療中。新情報などは無かったため省略)

職員「眠れそうですか?」
到来「ん……ん、あの。あのさ、俺、いくつに見える? ほんと、なんで……いくつに見える……いくつ」
職員「二十……五くらいですか?」
到来「……俺今十五なんだよ……あと十年」
職員「はい?」
到来「何が出来る? あと十年で」
職員「十年もあれば、やろうと思えばなんでもできますよ」
到来「地球を救える?」
職員「……(言葉に詰まっている)」
到来「無理だよな……無理だよなぁ。どうすれば、こんな……おかしいんだよ、世界が……不安定すぎて、砂なんて、なんで……俺が、できるのは……砂、を……くらいで……
職員「……何が見えてるんですか?」
到来「う……うぅ……だっ、て(泣き崩れており解読不明)が……じゅ…………(解読不明)」
職員「何が理由で、そんなに苦しんでるんですか?」
到来「進まな……(解読不明)……ふえな……い(解読不明)……わか(解読不明)」
職員「……未来が見えてるのか、妄想か、はっきりしてくださいよ」

到来の情緒不安定の理由が、左腕に記される制限時間、寿命であると彼の反応から推測されます。ですが、それの何を恐れているのか、具体的な話を聞くのは難しいでしょう。


20■■/■■/■■ 13:00
(定期カウンセリング)

職員「おはよう。最近調子いいみたいだね」
到来「ああ……
職員「でもまあ、連絡は来てるよ。一昨日の夜は何かあったかな?」
到来「……ん。何も」
職員「そっか。苦しくなったらいつでも言ってね。夜間は居ないけど、把握はしてるから」
到来「そう」
職員「辛い理由、話せる?」
到来「……(左腕を強く握りながら沈黙)」
職員「話すの苦しい?」
到来「(頷く)」
職員「どんな話したい? 今度はちょっと勉強してきたからさ」
到来「……哲学人が、その哲学に反することを言うのは……駄目だよな」
職員「駄目じゃないと思うよ、人間の感覚だと、だけど。もしかして、君達に何か悪いこととか起きるの?」
既在「何も無いよ。僕らほとんど人だし、哲学人らしくないことしてもね、消えたりとか無いの。普通に生きる。能力も使える」
到来「でも……生きる理由って、あるだろ。目的とか……こうなりたいって、願いとか。そういう部分。そういうのが無いのは、生きてるとしても……
職員「未来を見据えて企画するのが、到来だから?」
到来「ん……そう。だから、俺の元になった哲学を……俺は、広めたいし、知られたいって思う。哲学人として」
既在「僕もそう。否定されるのはね、やだもん」
職員「そうだね、否定されるのも、忘れられるのもやだね。じゃあさ、反面教師ってのは、哲学の布教に使えない?」
到来「え」
既在「んー」
職員「否定されると、人って気になるものだから。宿題をやれって言われたらやりたくなくなるみたいに、やるなって言われたらやりたくなる」
到来「……そんなもんか?」
職員「肯定するだけが、語るじゃないかなーって」
到来「ん……考える」
既在「僕はちょっと納得した」
職員「考えてて……お薬はどうする? 少し楽になるかもしれないよ?」
到来「既在に飲ませるわけには……
既在「あ、到来が飲む?」
職員「そうだね。タイムラインを考えたら、到来君じゃないと……ご飯って到来君食べてないんだっけ」
到来「既在が食べたら、俺も食べたことになる……だから、薬を飲むタイミングが、その」
職員「頓服にしとくね。いつでもいいよ」
到来「……うん」
職員「辛くなったら飲んで。一日の量はお薬渡す時に話すね。眠気とか出るかもしれないけど、そうなったらまた教えて」
到来「……わかった」


20■■/■/■■ 13:00
(定期カウンセリング)

(前半は軽い雑談。到来の精神状態は良好で、穏やかな笑顔を見せるようになった。
■■臨床心理士は、既在が到来の自傷行為を止めないことを以前から不審に思っており、今ならば到来に負荷がかからないと判断し、既在への質問を開始した)

職員「……君達は、時間を超えた同一存在であると結論が出てる。既在君は、彼が抱える恐怖に対してどう思ってるの?」
既在「うん? 僕? まあ、死ぬの怖いね。でも僕に見えるのはその手前までだから。だって到来居るもん」
到来「ああ……
職員「君は、到来君が何に恐怖を覚えているか知ってるんだね」
既在「うん。僕らの寿命ね、あと十年から動かなくなったの。それ」
到来「……(息を呑む様子。見る間に表情が強張る)」
職員「そっか。既在君は怖くないの、凄いね」
既在「あっ、それとね。もう一個。■■■■さんと会った時、世界が終わるのがわかったの。あの人の概念は僕らの否定だから苦しいの、それ」
職員「うん、わかったよ。ありがとう」
既在「でもね、到来って背も高くて優しくてかっこいいからさ。僕はあんな大人に成りたい。だから、今僕が見てる到来みたいになれるなら、僕は大人になりたい。僕なら投企するよ。至り来る未来を、あの姿で迎え入れたい」
職員「……到来君を慕ってるんだね」
既在「未来の僕だからね、慕うも何もないよ。僕は既にある存在なの。僕が悩むことはないの。過去はあるがままにそこにただ在るだけだから。僕が見れるのは前だけ。過去は変わらない。わかる?」
職員「一応ね」
既在「ごめんね到来。僕の分まで悩ませて。僕の分まで心配させて」
到来「……(既在を引き寄せて膝の上に乗せる。強く抱きしめた)」
既在「でも僕もそれなりに責任を負ってるから。到来がその姿のままで居られるように」
到来「……知ってる」
既在「僕は怪我できないから」
到来「知ってる……
職員「……わかったよ」

これは主観ですが、今回に限らず、既在の到来への対応は冷たいものであるように感じます。
彼らの関係は確かに良好であり、同一人物故の厚い信頼関係を築いてはいますが、それと同時に深い隔たりも存在しているようです。
現在の我々が、過去を振り返り後悔するように。未来に希望を見い出せず日々を呪うように。-担当臨床心理士■■



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