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死に至る病

名称:死に至る病 the sickness unto death 人間名:アンティ・クリマックス

能力:対話、接触による気分障害の誘発。[データ削除済]内での不死性の付与。どちらも対象は人間限定。
 ※不死性付与能力に関する追加実験は禁止されています。

解説:当哲学人は計測器上においては眼鏡をかけた細身の中年男性です。
 しかし機材を通さない人間の知覚においては、背格好や声等が観測者自身によく似た人物として認識されます。この容姿は哲学人の証言を参考とするならば『可能性、または無限性の表れ』、つまり理想の自分の姿です。
 知覚異常を起こすのは人間のみであり、他の哲学人は初めから当哲学人を計測器上と同様の容姿であると認識できるようです。気分障害能力に関しても軽度に留まります。
 当哲学人は他者からどのように見られているのか知ることができ、そこから観測者の心理を推測可能です。その上で、理想の姿がそのようなものである理由について言及、または責め立てる傾向にあります。

 当哲学人は敬虔なキリスト教徒であり、純粋な良心から自身の観測者、能力暴露者に対して積極的に布教活動を行います。その多くは『絶望から逃れるには神の前に単身で立ち自己を見直し、その言葉を聞くことにある』との発言による、あくまでも言葉による誘導です。しかし、気分障害が発現している能力暴露者には脅迫として充分な効果があります。
 対象がすでにキリスト教徒であった場合、布教ではなく真のキリスト者とはどのようなものであるかの説教となります。また、当哲学人は「死に至る病に罹患していない人物、すなわち真のキリスト者には一切の能力が通じない」と主張していますが、そのような人物と出会った記憶はないとも発言しています。

 発見経緯に記載した相次ぐ自殺に関しては、自身の影響であると認めてはいますが、快くは思っていないようです。また、不死性付与能力から推測するに、当哲学人は能力暴露者へ死を強要する意思はありません。遺族に対する謝罪を願っていますが、当哲学人と遺族の接触は更なる能力暴露者ならびに自殺者を増やす可能性があるとして認められていません。

 当哲学人の持つ不死性の効果範囲は[データ削除済]であり、治療を施さず範囲外に出た能力暴露者は死亡します。また、傷の治癒速度は変化せず、痛覚も変化しません。しかしながら血液、脳を約半分ほど喪失しても能力暴露者には意識が存在し、痛みにより意思疏通は困難ですが、発話可能です。

 ※不死性付与の情報は■■■■/■/■に発生した事故により偶発的に判明したものです。よって不明瞭な部分を多く含みます。

■■■■/■/■追記
 当哲学人の精神状態の著しい悪化と共に、機材越しの容姿に変化がありました。
 職員との対話中、背中に翼の生えた人型の山羊という容姿に変化し、五日後の起床後に元に戻っています。(※変身と呼称)
 変身中は人間への微弱な攻撃性発露と刺激への鈍重さ、信仰や神への否定的発言等といった、普段とは異なる言動を行います。
 変身中の当哲学人は変身前を「絶望こそが希望と気付かない愚か者」と、変身前後の当哲学人は変身中を「救いの手を拒んだ悪魔」と称していますが、双方の人格に明確な隔たりはなく、記憶も共有しています。

対応:■■大学附置哲学人研究所内の人型哲学人収容室で生活。貢献度合いに応じた報酬を与える。
 研究所内の移動制限なし。ただし移動の際は担当研究員に所在を告げ、本来の姿が観測できるよう録画機材を携帯することと、職員との対話の際は機材越しの姿を見せることにより能力影響を極力軽減することが義務づけられています。また、当哲学人を見かけた職員は自傷行為に繋がる物品を出来るだけ手放してください。

 哲学人『ルサンチマン』との接触はルサンチマン側の能力暴走を引き起こす可能性が高いため非推奨です。しかし彼らが哲学的血縁者であることを考慮し、人払いをした上での対話は認められています。

 職員は彼と接触した場合、出来る限り心理カウンセリングを受けること。症状が重い場合は■■臨床心理士による治療が行われます。

■■■■/■/■以降、収容室からの外出を最低限以外拒否するようになりました。外部への連絡は通信機か画像通話アプリの使用でのみ行おうとします。

発見経緯:■■■■年■月、■■県■■市にて不審な自殺事件とドッペルゲンガーの目撃証言が相次ぎ、哲学人の関与が疑われ哲学人犯罪取締課が捜査を開始。
 その時偶然、取締課の職員が市内のカトリック系教会前で未成年喫煙者を発見し補導したところ、職員によって対象の容姿認識が異なることが判明。哲学人と確定し保護。
 いくつかの能力測定と意識調査の後に、当研究所へ移動が決まりました。


実験記録:
■■■■/■/■■
室内に研究員と当哲学人が一対一で対面するよう配置。他の職員は監視カメラ越しに隣室で観測している。自由に対話してもらった。
対象:■■研究員
見えた姿:現在よりも細身の自分。一月前穿けなかったズボンを着用している。声や口調、言い回しまで■■研究員自身のものによく似ており、もう一人の自分と話しているようだったと証言。
結果:■■研究員は実験後一週間に渡り食欲不振の傾向を見せた。
 同部署の研究員数名と食事に出掛けて以来改善。
実験後の哲学人:あからさまに落ち着きがなくなる。■■研究員について、担当研究員に対し「頼むから自殺だけはやめさせてくれ。俺は死に至る病であると同時に、死に至ることがない故の永久の苦悩である為に……本当に自殺だけはやめてくれ。死は救いではない」と発言。
 ■■研究員の様子を伝えたところ、いくらか落ち着きを取り戻した。その後も■■研究員の様子をよく見るようにと懇願する。

 録音されている声や口調は男性のものであり、■■研究員のものとは大きくかけ離れている。しかし会話内容に違いはない。

■■■■/■/■
 当哲学人より体格の小さな研究員と対面させ、物理的接触における知覚の差異を確認する。
 具体的には、研究員が直立状態の当哲学人の額に触れる。当哲学人の本来の姿の方が遥かに長身であるため、視覚の異変であるならば胸の辺りに触れ、認識の異変であるならば問題なく額に触れるはずである。
対象:■■研究補助
見えた姿:自分と同じ姿。細かく特徴を挙げてもらったが、服装や表情、口調、細やかな傷に至るまで全てが完全に一致している模様。
結果:問題なく額に触れた。機材による観測も、■■研究補助の認識上も差異はない。自分と同じ姿の哲学人の額に触れるのに背伸びをした件について、■■研究補助は疑問を抱いていなかった模様。
 気分障害の症状はない。なお、■■研究補助は元から感情の起伏に乏しい人物である。
 実験の三日後、昼休憩中に哲学人【■■■■■■】と口論し、取っ組み合いの喧嘩に発展。その後和解したものの、普段の様子からは想像もつかない剣幕であった為不審に思った■■■■■■■研究員により当哲学人の能力に暴露している可能性が示唆された。
 現在は落ち着いている模様。
実験後の哲学人:落胆した様子。
 現在の■■研究補助と全く同じ姿であった理由に関して、「有限性の絶望だ」と発言。
 「自分の意思無く、他人に混じり、それこそ人形のように動かされているだけにすぎない。彼こそ神の持つ可能性を得なければならない。信仰無くしては救われない」とも補足的に語った。


■■■■/■/■
 気分障害の影響を極力下げるための案として、機材越しでの対話を試みる。
 以前と同じく同室で向かい合って対話するが、カメラとマイク越しの映像音声が知覚できるよう設置。
対象:■■研究員(二度目の実験)
見えた姿:現在より遥かに肥満体系の自分。
結果:見た瞬間は驚愕したが、カメラ越しの映像と肉眼で見える姿を数回見比べた後笑い出す。その後ダイエットの話で盛り上がった。
 前回と比べ、気分障害の症状は見られなかった。自分自身であるとの認識が薄れたためと■■研究員は推測している。
実験後の哲学人:対話が明るいものであったためか、上機嫌。前回と異なる養子に見えた件については「今回は可能性の絶望だろう」との発言。

 能力の影響が少ないことに関しても不満はない様子。ただし啓蒙的、忠告的発言が多かったことから、絶望(元となる哲学用語的な意味)を自覚させるという目的は強く持っており、それの邪魔にならない程度であれば許容できるのだと考えられる。

■■■■/■/■
 哲学人同士での対話を観測するため、また、哲学的血縁の認識確認のため実施。
対象:哲学人【ルサンチマン】
見えた姿:眼鏡をかけた茶髪の中年男性(機材により観測されるものと同じ容姿)。当哲学人のことを、ルサンチマンにとっての兄であると発言。
結果:彼らが対面した瞬間、ルサンチマンの能力により当哲学人に足枷が出現した。互いにやや気まずい空気が流れたが、当哲学人が宥めることにより緩和。
 当たり障りの無い世間話、研究所に来た経緯などを話し合う。互いに哲学人名で呼んでいる様子。
 ルサンチマンは次第に肩の力を抜き、表情も柔らかくなり、口数も増える。当哲学人は相槌を打つだけになる。
 会話内容が他の哲学人、職員、研究所の好意的な評価に移行する。ルサンチマンは笑みを浮かべている。
 ルサンチマンの能力暴走。隣室で様子を見ていた職員■名に移動不可能な重量の足枷が出現。内■名が足首に重軽傷を負った。当哲学人が冷静になるようルサンチマンを諭すが、ルサンチマンは満面の笑みで頷くのみ。当哲学人の足枷の重量が増加。
 ■■■研究員が足枷の破壊に成功。哲学人二名の居る部屋に突入。ルサンチマンを室外に連れ出すため組み付くと同時に転倒。倒れたルサンチマンの頭上から金ダライが降り、命中したため昏倒した。
 その後連絡を受け駆け付けた別部署の職員により■■■研究員は救助され、哲学人二名も収容室へ移送された。
 意識を取り戻した後、ルサンチマンは落ち着きを取り戻している。
実験後の哲学人:
ルサンチマンについて「手のかかる弟」「ニーチェ哲学の養子になった男だ。交流はほぼ無い」と発言。悪感情は無い様子。


事故記録:■■■■/■/■
 哲学人犯罪取締課から当研究所へ輸送途中に発生。
 これにより対象への不死性付与能力が判明。
 以下は事件発生時の記録映像です。
輸送車内の固定カメラ。
 当哲学人を取締課職員二名(■■氏と■■氏)が挟む形で座っている。雰囲気は悪いものではなく、雑談を交わしている。

 会話中、■■氏が所持していた拳銃(公式の装備)を咥え、自身の口腔内に向けて発砲。直前まで氏の表情は穏やかで、会話にも参加していた。

 ■■氏が外部へ連絡を取る。

 ■■氏は頭部を欠損しながらも生存しており、痛みにもがき、当哲学人の足を掴む。

 当哲学人は震えながら■■氏に向かって[データ削除済]。

 十分後輸送車が停止。■■氏は明らかな致命的状態に居るにも関わらず以前生存し続けており、悲鳴をあげ続けている。
 治療のため当哲学人から引き離し、車外に運び出すと同時に絶命。

 [データ削除済]中、「この病は死に至らず」と呟いていたと判明。
 今回の件を受け、当哲学人との接触時は自傷行為に繋がる物品の所持を禁止。



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