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物自体


名称:物自体 thing-in-itself

能力:対象が他者へ与える認識を変えることによる、実質的な変身と現実改編。

解説:現在の哲学人【物自体】は「サングラスと帽子を着用した緑の髪の成人男性」の姿です。
 人懐こい性格であり、自由を好み、束縛を嫌います。落ち着きのない面があり、指を回す、膝を揺らすなど、どこか体の一部を常に動かそうとする傾向があります。

 より多くの人間との対話を望んでおり、談話室や食堂にて研究員に話しかけることが多々あります。その時の機嫌と会話の流れによっては悪戯と称して職員の飲食物を異なる物品に変更する等が行われます。

 能力の使用に対する抵抗や欲求はなく、関係性を良好に築けているならば指示にも従います。しかし倫理観がやや乏しく、気に食わない相手の指示である場合は危険な現実改編行為を行うことがあります。

 《対象が他者へ与える認識》を変更することによる実質的な現実改編能力は、彼の証言が確かであるならば、能力に暴露した対象自体には何一つ影響を与えていないことになります。暴露した対象も、例え他者からどのように見られ、もしくは見えなくされていたとしても、自分自身の体は何一つ変化していないように感じます。しかし「誰にも見えない、触れられない」ように改編された対象は壁をすり抜けることが可能になり、「小型生物」に改編された対象は対象自身の主観では侵入不能だと思われる小さな穴を通り抜けることが可能になります。また逆に「身動きのとれない物品」に改編された対象は五感はそのままですが、視点は固定され、一切の身動きがとれないと感じます。疲労は感じません。
 これらの時に生じる主観と客観の矛盾は解消されず、感覚の差異があまりに大きすぎる場合は短時間の記憶・感覚喪失が引き起こされます。

 能力使用において予備動作は確認されていません。

 哲学人【イデア】との哲学的共通点をいくつか述べて自慢することがありますが、面識はなく、哲学人【ドクサ】との面会も可能です。

 現在の容姿は哲学人【存在するとは知覚されるということである】のものを模していると証言しています。
 該当哲学人は約三百年前のアイルランド哲学人研究所(現:英国哲学人研究所)における記録でのみ存在が確認されており、現在は捜索中です。

対応:■■大学附置哲学人研究所内収容所を居住地として提出。都合が合い次第研究に協力させることが可能。※協力申請は前日までに行うこと。
 話しかけられた場合は一般人同様に対応して構いません。万一に備え、機密情報の保護には気を付けてください。

 能力の性質上、完全な収容は不可能です。

20■■/■/■追記
 ■■■研究員、■■研究員、■■研究員は哲学人【物自体】に接触しないでください。機嫌を損ねます。

20■■/■/■追記
 ■■■■■■■研究員は哲学人【物自体】に接触しないでください。
 二人ともはしゃぎすぎです。
 大人しくしてください。
 隠れて会うのも禁止です。

 なんで社会人にもなって大人の人間関係を気遣わなきゃいけないんですか? ――■■■■■■研究員

発見経緯:20■■/■/■■ ■■県■■市の廃墟にて出没するという「神隠しの幽霊」の噂を調査した研究員が発見。
 「神隠し」に遭っていた近隣住民■名が廃墟内の備品に改編されていたことから事情聴取と今後の所属決定を行うため一時的に哲学人犯罪取締課へ引き渡す。
 その後哲学人犯罪取締課から脱走。
 近隣に住む大学生■■■■■・■■■■■■氏に強い興味を示したため、彼を■■大学附置哲学人研究所にて雇用し、担当研究員と任命した上で研究所に滞在を促す。

 「神隠し」被害者は全員生還。


対話記録
 哲学人【物自体】との友好的な関係を築く手段を確立するため、接触において極力記録を残しています。
20■■/■/■■
物自体「■■■■■さーん! 見てこれ見てこれ面白いの作っちゃいました」
■■■■■■「記録を録るから待って。ええと……これどこ押すんですか? あの……
物自体「終わったー? まだー?」
■■■■■■「まだ。あ、これもう動いてるんですか……はい」
物自体「終わった? はいこれ、現代アートでーす」
■■■■■■「原材料は?」
物自体「あ? あはっ、覚えてないですねぇ」
■■■■■■「誰か消えてませんか? 確認をとりますから、もうちょっと待っていてください」
物自体「あー、嘘嘘! そこにあった植木鉢! 覚えてないもなにも、僕から見たら物自体はなにも変わってないんでね? 人間の脳が感知する形とかが変わるだけ。あー、哲学には詳しくないんでしたっけぇ?」
■■■■■■「……幻覚にしては、しっかり触れますが」
物自体「どんな触覚を与えるかも知覚として操作範囲内なわけでして」
■■■■■■「そうですか」
物自体「やーだ、怖い顔しないでよー」
■■■■■■「元からこんな顔です」
物自体「嘘は絶対的な悪ですよ?」
■■■■■■「さっき貴方も嘘を吐いたじゃないですか」
物自体「だって僕、善人じゃないですし」
■■■■■■「私だってそうです」
物自体「……へーぇ?」
■■■■■■「はい? ああ……お揃いですね」
物自体「そーですね」
■■■■■■「はぁ……そうですね」
物自体「お兄さん、疲れた顔してますねぇ。どうされましたぁ? 元気だーしてー?」
■■■■■■「……子供の相手には慣れていません」
物自体「お疲れさまー」
■■■■■■「まあ、なんだ……あ、自己紹介でもしませんか」
物自体「今更?」
■■■■■■「記録に残しておくべきかと思ったんですけど、いらないかな……
物自体「んー……?」
■■■■■■「いや、自由にって言われても。よくわかりません、普通にってどう……
物自体「なにか作ります?」
■■■■■■「物作り、好きですか」
物自体「ぜーんぜん好きじゃないですね」
■■■■■■「そのわりには何か作っては持ってきますよね」
物自体「……何でだと思うー?」
■■■■■■「わからないから質問してます」
物自体「あっそ。じゃあ教えませーん」
■■■■■■「じゃあって何ですか……
物自体「それ、持って帰って考えたらわかるんじゃね?」
■■■■■■「いや、これ研究所の備品でしょう。元に戻してください」
物自体「えー? えー……
■■■■■■「……貰っても置場所に困るんですが」
物自体「むー……
■■■■■■「……あー、はい。そうですか。わかりました。持って帰ります」
物自体「駄目」
■■■■■■「は?」
物自体「持っていったら駄目でーす」
■■■■■■「えっ、ちょ、急にどうしっ!? おっも……!」
物自体「元の場所に戻しといてねー」
[哲学人【物自体】は退室。研究所内に用意した自室へ移動。植木鉢は落下し破損しました。]


20■■/■/■■
■■■■■■「……うん。ほら、今度こそちゃんと動きましたよ」
物自体「わーすごーい。パチパチパチー」
[拍手音]
■■■■■■「馬鹿にしてます?」
物自体「ううん」
■■■■■■「……まだ三日しか経ってませんけど、ここでの生活ってどうですか?」
物自体「僕から見たらどこも同じなもんでしてね。認識面でいいなら好きに変えられますし? 物質自体に意識を向けると知覚は働かないので飽きましたし」
■■■■■■「そうですか。研究員さん達とはどうですか?」
物自体「どうってなんです?」
■■■■■■「えっ。仲良くやってますかってことですかね?」
物自体「……えー? そーですねーどーでしょーねー」
■■■■■■「私、何か変なこと言いました?」
物自体「変じゃないけど、面白いこと言うなーって」
■■■■■■「あ、よく言われます」
物自体「■■■■■さんはどうなんです? 哲学人研究所生活」
■■■■■■「悪くないです。意外と普通の場所なんですね」
物自体「普通? これが? へーぇ」
■■■■■■「先輩方も優しいですし。なんか一人過保護な人がいて、ちょっと鬱陶しいですけど」
物自体「ふーん?」
■■■■■■「何ですか」
物自体「消しちゃおっか?」
■■■■■■「……嫌です」
物自体「そう」
■■■■■■「生き物を何かに変えるのは止めてください」
物自体「なんで?」
■■■■■■「私が不愉快だからです」
物自体「えー?」
■■■■■■「日常的に使っている道具が、もしかしたら人かもしれないし虫かもしれないと思うと気分が悪いんです。生活できませんよそんなの」
物自体「色眼鏡外して見たら問題ないですよ?」
■■■■■■「は? ああ……それ、人間は外せません」
物自体「でしょうねぇ」
■■■■■■「なので、生き物を何かに変えるのは止めてください。というか変えてもいいけど私のところに持って来ないでください」
物自体「じゃあさ、誰にも認識できない人を作るのは?」
■■■■■■「それの方がもっと気持ち悪い」
物自体「ほー」
■■■■■■「こっちは見聞きできないのに向こうから見られてるんでしょ。プライベートが侵されるのは嫌です」
物自体「ふーん」
■■■■■■「ちゃんと聞いてます?」
物自体「ふふ。聞いてる聞いてる」
■■■■■■「何が楽しいんです……
物自体「お話しするの楽しいですよ?」
■■■■■■「……そう。ならいいです」
物自体「良いの」
■■■■■■「貴方の機嫌を取るのが私の仕事らしいので」
物自体「そう」
■■■■■■「そもそも哲学人行動学は専門外ですからね。仕事を覚えようにも過保護な人が全部取っていくし……!」
物自体「ふーん」
■■■■■■「もう開き直って勝手に勉強してようかな。数学に興味あります?」
物自体「数学ですー? えー……
■■■■■■「無いならいいです」
物自体「いえいえ興味はありますよ。ただ、ほら、それ僕に言いますかーって」
■■■■■■「はい? あ、哲学的にですか」
物自体「ま、発想自体は悪くはないんじゃないですかね。どの程度か、今度見してくれません?」
■■■■■■「ええ、持ってきますよ。あ、そうだ、コーヒーって飲めますか」
物自体「なんで飲めないと思ったんです?」
■■■■■■「いつも勉強するときカフェオレ飲むんです、だから確認しただけです」
物自体「不味くても味変えられますし」
■■■■■■「じゃあ準備しますね」
物自体「……楽しそー」
■■■■■■「そりゃあ、数学は本業……にするつもりだったことですから」


20■■/■/■■
■■■■■■「私の机の上にリスの彫像を置いたのはアンタですか」
物自体「はいはーい、正解でーす」
■■■■■■「原材料が生き物なら許しません」
物自体「違いまーす」
■■■■■■「ならよし」
物自体「■■■■■さん、生き物嫌いなんです? アンタも生き物なのに変だなぁ不思議だなぁ」
■■■■■■「得意じゃないだけです」
物自体「犬とか猫も?」
■■■■■■「持ってくるつもりですか?」
物自体「質問には質問で返したら駄目って言われたことないんですかぁ?」
■■■■■■「……質問に質問で返してますね、アンタも」
物自体「前も言ったけど、僕は善人じゃありませんのでね」
■■■■■■「私もです」
物自体「おそろーい」
■■■■■■「……ペットを飼ったことがないので、扱いもわかりませんし。そもそも生き物は別種の生き物と馴れ合わないのが自然でしょ」
物自体「僕は?」
■■■■■■「はい?」
物自体「僕は、哲学人ですよ?」
■■■■■■「でも話が通じますし、多分、知性というか……
物自体「哲学人と人間の知性が同列とでも思ってるんですかぁ?」
■■■■■■「頭の良さはわかりませんけど、多分、感じ方というか。心のレベルというか、そういうのが似通ってる気がして」
物自体「僕は物自体なんですけど? 物体への認識が異なるんですよ? それでも精神は平等であると信じますかーそーですかー」
■■■■■■「でも……
■■■■■■■研究員「えっ今君達、間主観性の話してた?」
哲学人■■■■■■「クオリアの話してた?」
■■研究補助「箱の中のカブトムシでしたらこちらに」
■■■■■■「うわっ、話をややこしくしないでください! あっ、やめ」


20■■/■/■■
■■■■■■「今日は文句を言いたいんです」
物自体「どーぞ」
■■■■■■「アンタのおかげで私は人生が壊れましたよ」
物自体「へぇ、そう。そりゃ残念でしたね」
■■■■■■「人生設計とか、今までやってきた勉強とか、全部無駄ですよ」
物自体「全部無駄ですねー」
■■■■■■「やりたいことだってあったのに。私は確かに学者になりたかったですよ、でもそれは哲学人のじゃなくて……
物自体「うん」
■■■■■■「……という愚痴です」
物自体「怒んないの?」
■■■■■■「怒ってます」
物自体「そ」
■■■■■■「でも、まあ、この研究所居心地がいいんですよね。あと数学も哲学らしくて、関係する哲学人とも話せましたし、わりと満足してしまった」
物自体「■■■■■さん結構順応性高いですよね」
■■■■■■「大人ですから。環境に合わせます」
物自体「それはアンタが環境を変えられないだけじゃないですかぁ?」
■■■■■■「そうでしょうね。私は自分で決めた道に一度も進めてない」
物自体「そうなんですねー」
■■■■■■「そうなんですよ」
物自体「へー」
■■■■■■「話は変わりますが、いつまでもアンタ呼ばわりじゃよくないと思うので、モノって呼びます」
物自体「は?」
■■■■■■「哲学人物自体、って呼ぶの長いし、ややこしいし。簡略化した方がいい」
物自体「僕からの許可なしに勝手に呼び方決めるんですねー酷いですねーうわー」
■■■■■■「私の許可なく勝手に就職先決めた人に言われたくない」
物自体「それ決めたの僕じゃないから。拉致ったのは研究所の人達でーす、僕悪くないでーす」
■■■■■■「モノって呼び方嫌ですか?」
物自体「は? 嫌なんて言いました?」
■■■■■■「じゃあこれからよろしくおねがいします、モノ」
物自体「はーい、■■■■■さん!」


20■■/■/■■
■■■■■■「……で、どうしたんですか、モノ」
物自体「見てみて■■■■■さん、■■■■(某アニメキャラクター)の雪像でござーい!」
■■■■■■「おお……上手ですね」
物自体「当然でーす」
■■■■■■「原材料は?」
物自体「土!」
■■■■■■「ならいいか。溶けるまでここに飾っときましょう」
物自体「雪好きなんですよねー、冷たくてー、あるのかないのかよくわかんなくてー」
■■■■■■「私も好きです。この辺りは滅多に降りませんが」
物自体「降らしてほしい?」
■■■■■■「クリスマスに取っておいてください」
物自体「わあ、ロマンチックなこと言えるんですね。珍しいなぁ」
■■■■■■「ホワイトクリスマスくらいは知ってますから」
物自体「イベントとか知ってんの意外ですねー」
■■■■■■「五年前のクリスマスに雪が降って、それで聞いたんです。確かに何となく特別な感じがするなと思って」
物自体「へーぇ」
■■■■■■「まあただの天候なんですけどね」
物自体「そーですねー。でも■■■■■さんが嬉しいって言うなら張り切って降らせますよ」
■■■■■■「へえ、珍しい」
物自体「■■■■■さんが笑うのってかなり珍しいことじゃありません? すごいなーって思って」
■■■■■■「だって、確かに確率は低いですけど。たかが天気ではしゃげるなんて幸せそうな人達だなって」
物自体「■■■■■さん性格悪ーい」
■■■■■■「モノに言われると嫌ですね」
物自体「僕? ごめんねー、傷付けちゃった?」
■■■■■■「いや、アンタの方が性格悪いって意味です」
物自体「えっ」
■■■■■■「えっ」


メモ

・休息としての睡眠は可能であるようですが、好みません。長時間目を閉じ動かずにいることを嫌います。
・飲食も不必要であるようですが、こちらの行為は好んでおり、摂食可能量に上限はないようです。食の好き嫌いはありませんが、熱いもの、冷たいものは摂食にかなり時間がかかります。
・音楽を好んでいるようです。
・絵画を好んでいるようです。
・手を繋ぎたがります。
・アロマ等の香りを好みます。
・ぬいぐるみを抱えると喜びます。
・言動に悪意はないようです。
・過度に恐れられることを嫌います。
・嫌われることを嫌います。
・興味を引くためだけに現実改編を行うことがあります。多くの場合、褒めると満足して元に戻します。






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