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リヴァイアサン

全体公開 17903文字
2019-01-09 21:30:34


※特記事項
事案aを受け、担当者変更と資料の更新が行われました。
資料更新において、旧資料から引き継いだ記述部分を、記載した職員の派閥毎に色分けして残しています。このような感情的な資料作成は控えてください。
引継ぎ部分以外の資料は、哲学人行動学者以外の手によって作成されていることに留意ください。
 -■■研究補助(監修と指示:■■■■■■■研究員/ ■■■■研究員)

名称:リヴァイアサン Leviathan
外見:150cm 43kg 権利を持たない子供。外見年齢10代前半
能力:
人間の持つ権利の全てを奪い去り、抵抗の意思を削ぎ、その人格すら踏みにじる。
彼女は他者を操る能力を持っていない。彼女は一部の異常者から異様かつ不適切な敵意を向けられる。
おぞましい悪魔だ。この子供の言葉は意思の脆弱な人間を盲目か、能無しにする。
身の回りから欲望の所持者を暴き、その凶暴性を白日に晒し、人々の安全を守る力を持つ。
権力はどのような賢人も愚かにする。
彼女へ人類が全権利を譲り渡すのは我々の自由意志であり、世の摂理である。そこに異常な能力は関与していない。
非常に危険であり、すぐに処分すべきだ。

哲学人【リヴァイアサン】の主な能力は『忠誠心の植え付け』と『敵意の植え付け』、そして『論争の誘発』という三種類の精神汚染だと思います。
発動条件は不明です。
年齢が高い・地位が高い・信仰対象を持っていない人間ほど、精神汚染の程度が強くなります。

現在判明している能力影響者は、映像または音声により、哲学人【リヴァイアサン】の存在を認識することにより精神汚染が完了しています。汚染を受けた人は、哲学人【リヴァイアサン】本人を目の前にすると、または彼女について議論しようとすると正常な判断能力を失います。

職員の大半が成人であるため、研究員はほとんどが能力の影響を受け哲学人【リヴァイアサン】に対して研究行為を行えません。
その為、現在は精神汚染の程度が最も軽くなる条件に当てはまる■■研究補助が、研究員数名の監修の下、担当者として対応を行っています。

哲学人は彼女の能力の影響を受けません。
しかし、社会学系哲学人の場合はその哲学内容によって彼女を特別視する傾向があります。それが能力によるものなのか、哲学人の主義主張の兼ね合いによる自然な反応なのかは判断できません。

解説:
彼女は豊かな海を彷彿とさせる偉大さと、人ならざる神秘を漂わせる少女である。その権力に相応しい宝物を身に付けており、凡夫は彼女に対し頭を垂れる以外に取るべき手段を持たない。
見目美しい子供の振りをした醜い狼だ。
罵倒を目的とし、本題がおろそかになっているぞ。これ以上の冒涜を行えば、我々も危険思想は排除しなければならない。
怪物に屈する犬が。従順に腹を見せて媚を売る愚かな姿には呆れたぞ。
安全に社会生活を送りたければ互いの行動を侵さない契約と、その契約を管理する平等な第三者が必要となる。お前でも契約論には賛同だろう。
怪物に搾取されることの何が安全だ。

彼女は青色の巻き髪と青い肌、長く尖った耳が特徴的な女性です。布を巻き付けただけの簡易的な服の上に、左肩だけを覆うマントを羽織り、儀式用の剣と身の丈を超える牧杖を携えています。指にはいくつかの貴金属による装飾がされています。
彼女は身に付けているものを手放すことを酷く嫌がります。無理矢理に剥ぎ取ることは、彼女への忠誠心を持つ者の妨害と、彼女自身の強い抵抗により失敗に終わっています。
(20■■/■/■追記)指輪の一つを哲学人【イドラ】に譲渡しています。これは自主的に装飾品を手放した唯一の例です。

人間に対する敵意や悪意はなく、こちらが対話を試みれば友好的に返します。握手などのコミュニケーションにも応じ、触れても人体に影響はありません。
自身の能力に関して、彼女は「責任ある立場にあることを誇りに思う」と発言しています。

また、彼女は神と称される人物、または他の社会系哲学人に対し恐怖を抱いているようです。

哲学人【イドラ】、哲学人【社会契約論】の友人であるとの証言があります。
哲学人【イドラ】との面談は承認待ちです。

(20■■/■/■追記)承認されました。三回実施。対話記録に記載。

対応:
哲学人の無力化実験に転用。
■■大学附置哲学人研究所の規律をより良いものにするため、所内の全権を与える。
ふざけるな。
当研究所は哲学人の保護と研究を目的としています。理念を忘れ、私欲によって哲学人への暴行を制度により正当化した■■■研究員にはしかるべき処罰を求めます。当資料はその具体的根拠となり得るため、ここに記載しています。
■■は研究者としての誇りを失い、哲学人に人間を売り渡そうとしている。彼こそ処罰されるべきだ。当資料はその根拠だ。

■■大学附置哲学人研究所内、人型哲学人収容室で生活。居住室以外の全域に移動制限有。
対応担当者は未成年・職員権限レベル2以下・政治的でない信仰心を持つ者を採用し、哲学人化(融合・寄生含む)職員が監修を行う。
所持する装飾品は全て正しく装備させる。
(20■■/■/■追記)食後一時間の談話室利用が可能。面会制限の無い哲学人との対話を許可。

能力の一部削除・哲学人としての存在変更を目標とした研究を行う。

能力の影響を受けている職員が彼女と接触する際は、必ず3人以上で、忠誠派と敵対派を1:1になる様に調整したチームで接触すること。彼女を巡っての論争、喧嘩が発生しても、そのまま作業を続けること。
※特記事項
如何なる事案であっても、彼女直々の罰則は受けないでください。また、忠誠派の決めた罰則は全て却下されます。(事案aより)

発見経緯:
呈する恵智の会の引き起こした哲学人犯罪発生時、事件発生の主要哲学人として逮捕される。
その後、■■警察哲学人犯罪取締課内にて能力拡散が起き、取締課内の規律が崩壊。異変に気付いた研究員が■■大学附置哲学人研究所に連絡し、哲学人【リヴァイアサン】の身柄を譲渡、共に能力と対策についての研究を委託され現在に至る。

+事案a概要を見る


発生日時:20■■/■/■■
内容:■■■研究員・■■研究員・■■研究員の三名による哲学人【リヴァイアサン】への暴行事件と、哲学人【リヴァイアサン】による三名への殺傷事件
損害:職員三名の死亡。

監視カメラの映像は削除され、詳細不明。
騒ぎを聞き付けて現場に駆けつけた■■研究員ら(忠誠派)の発言により、「研究所内の覇権争いに負けることを恐れた■■■研究員がリヴァイアサンを殺害しようと暴行を加え、その罰として処刑された」ものと判明。
忠誠派の研究員は全員それを『反逆罪に対する当然の判決』と評価しています。


+インタビュー記録を見る

日時:20■■/■/■■
対象:■■■■■■■研究員
収容後、環境設備設計のために聞き取り調査を行った時のもの。
当時は彼女の能力が判明しておらず、組織の規律を乱し同士討ちさせるものであると認識されていた。よって、■■■■■■■研究員単独で対話室内に入り、万が一に備えた■■研究補助が室外で待機している。

■■■■■■■研究員:や、こんにちは! えー、君が取締課から来た、リヴァイアサンで名前は間違いない?
【リヴァイアサン】:そうじゃ。人類の権利を譲渡された者ぞ! おぬし、頭が高ぁい!
■■■■■■■研究員:その割には能力が同士討ちなのが気になるんだけどな。
【リヴァイアサン】:(焦る表情。明確な言葉は発していない)
■■■■■■■研究員:哲学のリヴァイアサンって国家じゃん? 国民を争いから遠ざけるために制定されるものである、ってのが社会系哲学の相場なんだけど。本来の目的と意味ずれてない?
【リヴァイアサン】:(言い淀む)……わしは、しかし。ほれ、どう見ても、国家で権力じゃろう!
■■■■■■■研究員:そう見えないから言ってるんだけどな?
【リヴァイアサン】:(押し黙る。俯き、■■■■■■■研究員から目を逸らす)
■■■■■■■研究員:あ、本題忘れてた。これから、君に暫く過ごしてもらう部屋を用意するんだけどね。どんな部屋がいいかなと思って。君って水生生物?
【リヴァイアサン】:陸で、歩いとるじゃろ。息もできる。
■■■■■■■研究員:カエル連れてて陸を歩いてるのに体から魚のヒレ生えてて、何故か食性が狼寄りな哲学人さんとかいるからね。一応確認するんだ。
【リヴァイアサン】:イドラか!
■■■■■■■研究員:へえ、ホントに知ってんの?
【リヴァイアサン】:ん? う、ん。イドラは知り合いじゃ。居るなら、会いたいのじゃがいいかの?
■■■■■■■研究員:いいよ。申請は出したげる。
【リヴァイアサン】:助かる!
■■■■■■■研究員:しっかし、思い違いや誤認識を意味する哲学人と知り合いな王様って、どうなんだろうね?
【リヴァイアサン】:えっ。
■■■■■■■研究員:あー、いや? 劇場のイドラが示すとおり、権威は真実を遠ざけるからね。うん、そうか。逆に考えれば納得納得。意図せずに、そして意図して民を騙すのが権力だ。それらと仲良しでおかしくないんだねー。
【リヴァイアサン】:なっ、て、哲学に関わりなき、個人的な交流じゃ! それにまで口出しされる筋合いはない!
■■■■■■■研究員:常に権威を行使し続けられるからこその悪魔だろ、リヴァイアサン。
【リヴァイアサン】:でも! 悪しき交流とは思わん!
■■■■■■■研究員:権威ある人間には責任が付きまとう。しかし人間にはどうしても公私の落差が生まれてしまう。そうでない絶対的な、理想的な、あらゆる時に人々を縛る契約であり国家をリヴァイアサンと呼んだ。
【リヴァイアサン】:知っとるわ! 言われずとも!
■■■■■■■研究員:君の能力ってさぁ! むしろそれを壊すようなことしてるんだよね。ああ、記録はリヴァイアサンでするけど。違うでしょこれ。何があったっけなぁ、人が闘争を選ぶのは。(舌打ち)ああもうどうでも良く、ないけど頭働かないなぁ悔しい。

(■■■■■■■研究員が苛立ちを露にする。哲学人【リヴァイアサン】は怯えた様子を見せる)

■■■■■■■研究員:まあ本件においては! 同定は僕の仕事じゃないから知らない! もういい! ほら、部屋の話しよ。この部屋の室温ってどう感じる? これでいいなら君の部屋もこれにする。なにか欲しい環境あるなら言って。考慮するから。
【リヴァイアサン】:(数秒の思案)……周りに、人が居ない場所がいい

(環境確認内容は省略。■■■■■■■研究員は時々口調を荒らげるが、極力冷静であろうとしている様が見受けられる)
(聞き取り調査終了。■■研究補助が室内に立ち入る。同時にリヴァイアサンが杖を倒す)
(■■研究補助が杖を拾って差し出す)
(■■■■■■■研究員が■■研究補助の手から杖を叩き落す)

■■研究補助:(■■■■■■■研究員への呼びかけ)
■■■■■■■研究員:(笑い。苛立ちを顕わにしている)……あのさ。(笑い)
■■■■■■■研究員:ああ[罵倒語]言いたくないけど人の信者盗るなよ[罵倒語]! (悲鳴)違う認めてない認めてないけどホントやだ! 君ホント何なのすっごい腹立つ! ごめんねもう無理僕これ無理精神汚染影響対象は個人だ記録取ってね!

(■■■■■■■研究員が■■研究補助の腕を引いて対話室から駆け出す)
記録終了

この後、状況を確認しに対話室に向かった研究員5名と、研究所内にいた職員■名が哲学人【リヴァイアサン】の能力に暴露。忠誠派と敵対派に分かれての論争に発展しました。これは騒動の中で研究所を迷子になった哲学人【リヴァイアサン】が忠誠派職員に確保されるまで続きました。

日時:20■■/■/■■
対象:■■研究員
収容後、能力実験のために事前聞き取り調査を行った時のもの。
当時は彼女の能力が判明しておらず、対象の敵意や憎悪を増大させるものであると認識されていた。その為、攻撃的な様子を見せない■■研究員が調査を担当している。

■■研究員:では、記録を開始します。
【リヴァイアサン】:うむ! なんでも答えようぞ!
■■研究員:我々は貴方の能力と、その哲学的思想について、まずは特定を行いたく思います。組織内での争いを起こす能力と推測されていたのですが、異なりますか?
【リヴァイアサン】:違うのじゃ! わしはあらゆる権力を持ち、多くの人間を従わせ、安全で平和な国を作る役割を持っておる!
■■研究員:なるほどなるほど。素晴らしいですね。
【リヴァイアサン】:うむ! 良き国となるよう、尽力するのじゃ!
■■研究員:貴方の統治する国であれば、犯罪も不正も起きないのでしょうね。
【リヴァイアサン】:そう! そうじゃ! 何故ならわしは、それを禁じるからの!
■■研究員:貴方様に逆らうだなんて畏れ多いこと、考える者はいない。圧倒的な権力と恐怖が、平和を生むのですね。
【リヴァイアサン】:うむうむ! よくわかっておるのぉ!
■■研究員:貴方様の存在と言う絶対的恐怖。やはり人間を従わせるには恐怖が相応しい。
【リヴァイアサン】:うむ!
■■研究員:その権利を持った貴方様だけが世界を統べるべきです。現在の政治は間違っている。民主主義は間違っている。絶対王政こそが至高。今すぐこの国は崩壊しなければなりません。その為に貴方様が来てから準備を進めていたのですが所長から何故か反対されてしまい武装準備を拒まれておりまして。
【リヴァイアサン】:う、む?
■■研究員:とりあえず所長殺しましょう。
【リヴァイアサン】:ひっ(怯え、息を呑む)
■■研究員:足りませんか?
【リヴァイアサン】:(言い淀む。困惑している様子)
■■研究員:他に何か?
【リヴァイアサン】:(言い淀む)……つ、疲れてるから、しばらくはこの研究所で休むのじゃ。いいかの?
■■研究員:勿論!

(研究所内の生活について雑談に移行。重要性が低い会話として削除)


日時:20■■/■/■■
対象:■■研究補助
事案aに伴う担当変更後、顔合わせとしての対話。
最も影響が軽微と判断された■■研究補助が担当している。非常事態に備え、研究知識を持つ哲学人【パーフィットのパズル】が遠隔で指示を行い、協力的な哲学人数名が室外で控えている。
■■研究補助の質問内容は、全て指示によるものです。

■■研究補助:本日から担当となりました。■■です。よろしくお願いします。
【リヴァイアサン】:(泣いている)……ごめんなさい。
■■研究補助:何に対する謝罪であるか、私は聞く必要があります。お答えいただけますか。
【リヴァイアサン】:(謝罪を繰り返す)
■■研究補助:研究員を殺した件ですか。
【リヴァイアサン】:(頷く)
■■研究補助:あれは貴方にとって、正当な刑罰ではないのですか。
【リヴァイアサン】:(首を振る)
■■研究補助:正当ではないと思っていますか。
【リヴァイアサン】:(頷く)
■■研究補助:何故、殺しましたか。
【リヴァイアサン】:(返答しない。俯き、涙を流している)
■■研究補助:質問を変えます。貴方は、貴方の能力について納得していますか。
【リヴァイアサン】:(首を振る)
■■研究補助:困っていますか。
【リヴァイアサン】:(頷く)
■■研究補助:誰かを傷付けたくは、ないですか。
【リヴァイアサン】:(頷く)
■■研究補助:能力の使用を止めることはできますか。
【リヴァイアサン】:(首を振る)
■■研究補助:どうすればいいか、わかることはありますか。
【リヴァイアサン】:(嗚咽)……殺して、ください。
■■研究補助:どのようにでしょうか。
【リヴァイアサン】:わた(嗚咽)……私が、自然権だから、こうなるから。私が本当の、王なら。本当の国王なら、もっと、良い国が、作れるから。そうして、ください。
■■研究補助:(指示を確認している)……どのようにでしょうか。
【リヴァイアサン】:本物のリヴァイアサンに、してください。
■■研究補助:どのようにでしょうか。
【リヴァイアサン】:(嗚咽)
■■研究補助:(指示を確認している)……哲学人については、未知の部分が多いです。貴方達は、哲学から生まれ、哲学の意味に従っており、時には元の哲学の変容によって貴方達も変容することがある。けれど、その原理は、まだ、わかりません。
【リヴァイアサン】:(頷く)
■■研究補助:何か、方法に、心当たりがありますか。
【リヴァイアサン】:私が、使ってる、王冠とか。杖とか、色々。これは、本物です。本物の、リヴァイアサンが残した、から。だから、これを受け継いだら、それは、王位継承で。
■■研究補助:はい。
【リヴァイアサン】:私の、元の能力だけが、邪魔なので。
■■研究補助:はい。
【リヴァイアサン】:誰も、私のことを、知らなくて。私のこと、忘れて。それで。
■■研究補助:はい。
【リヴァイアサン】:私が、私がレヴィを継ぐから。私より、レヴィのこと、皆、忘れないでほしくて。
■■研究補助:私たちは、その対象のことを知りません。
【リヴァイアサン】:私が、演じる。私が、これから、レヴィの代わり。
■■研究補助:はい。
【リヴァイアサン】:リヴァイアサンだって、思い続けて。それで、大丈夫。耐えるから。頑張るから。
■■研究補助:(指示を確認している)……現状では、研究員に被害が多く出ています。対応をしようにも、実験は行えず、生活環境を整え、貴方の能力が落ち着くかを測定する以外に取れる行動がありません。
【リヴァイアサン】:うん。
■■研究補助:貴方はリヴァイアサンである、として扱い続ける。それでいいでしょうか。
【リヴァイアサン】:うん。きっと、大丈夫。
■■研究補助:わかりました。よろしくお願いします。
【リヴァイアサン】:うん。

記録終了。


+哲学人【イドラ】との対話記録を見る

※哲学人【イドラ】の能力により、誤解と思い込みが誘発されます。この記録内の情報に対して行った推測は過ちを多く含む可能性に留意ください。

日時:20■■/■/■■
対象:哲学人【イドラ】
知人であるとの発言から、承認された面談。■■■研究員が哲学人【リヴァイアサン】の隣につき、■■■研究員が室外から通信機により観察している。

(哲学人【イドラ】が入室する。哲学人【リヴァイアサン】の姿を見て驚いた様子で硬直)
(哲学人【リヴァイアサン】は気まずそうな様子で笑みを作っている)
【リヴァイアサン】:や、やあ、イドラ……
(哲学人【イドラ】が椅子に座る。■■■研究員に挨拶をしてから哲学人【リヴァイアサン】に向き直る)
【イドラ】:どっから聞かれたい?
【リヴァイアサン】:いや、あのー。
【イドラ】:お前が誤魔化しできるタイプじゃねーのは知ってる。とりあえず肌と髪か。なんだその色。
【リヴァイアサン】:その、ほら、海の悪魔、だから?
【イドラ】:名前は。
【リヴァイアサン】:私が、じゃなくて。わしが、今の国を支えるリヴァイアサンなのじゃ! な!
【イドラ】:口調はスコットの真似かよ。日本語訳されてっからもうわけわかんねーぞ。
【リヴァイアサン】:(小さな呻き声)
【イドラ】:レヴィは?
【リヴァイアサン】:もう、居ない。
【イドラ】:(眉を寄せる。目を逸らし、歯噛みした。意図不明)
【リヴァイアサン】:ごめんなさい。
【イドラ】:ん。お前結構こういうの気にするよなぁ。(■■■研究員に目を向けた後、哲学人【リヴァイアサン】に向き直る)俺の前で何言ったって、意味ねぇのはわかってるだろ。必要な情報はお前から言えよ。落ち着いた後で良いから。
【リヴァイアサン】:(口籠る)……うん。
【イドラ】:言いづらいか?
【リヴァイアサン】:(俯く)
【イドラ】:ベル。お前、俺より強い狼なんだろ? 
【リヴァイアサン】:うん。
【イドラ】:よし、良い子だ。じゃあもう一個な。レヴィは何があった?
【リヴァイアサン】:(俯いたまま返答しない)
【イドラ】:知らないのか?
【リヴァイアサン】:ごめんなさい。
【イドラ】:いや、ガキ置いてどっか行く方がどうかと思うけどな?
【リヴァイアサン】:守れなかった。連れてかれた。私のせいだった。
【イドラ】:(沈黙)
【リヴァイアサン】:ごめんなさい。
【イドラ】:(沈黙)
【リヴァイアサン】:私が、弱くて。
【イドラ】:それでお前が引き継いだのか。その王冠と衣装。あいつが許可すると思えねーけど?
【リヴァイアサン】:勝手にやった。
【イドラ】:(ため息。姿勢を崩し、手を上げて伸びをする)……知ーらね! 俺の立場は変わんねーし。
【リヴァイアサン】:うん。うん、知ってる。
【イドラ】:でもさー。かなり無茶してんじゃねーの?
【リヴァイアサン】:大丈夫、じゃ。上手くやっとるぞ。杖と剣を賜った者だからの!
【イドラ】:ん。いつでも言えよー。

(研究所内の生活について雑談に移行。重要性が低い会話として削除)

補遺:
『レヴィ』とは共通の知人、『ベル』とは当哲学人の愛称と考えられます。
当哲学人は【リヴァイアサン】ではない可能性が示唆されています。
しかしながら、通常、哲学人は自身の哲学に反した行動を避けるものです。

日時:20■■/■/■■
対象:哲学人【イドラ】
効率的な情報収集の目的で実施された面会。■■研究員が哲学人【リヴァイアサン】の隣につき、■■■研究員が室外から通信機により観察している。

【リヴァイアサン】:やあ、イドラ! また話していいそうじゃ!
【イドラ】:おう。元気そうだなベル。(■■研究員に目を向けて挨拶をし、着席する)
【リヴァイアサン】:勿論なのじゃ! 国王たるもの、健康な生活で民の見本とならねばならんからの!
【イドラ】:はいはい。環境整えてんのはお前じゃねーがな?
【リヴァイアサン】:(頬を膨らませて不満を表す)
【イドラ】:(笑う)……ここでの生活は上手くいってそうだな?
【リヴァイアサン】:うむ! 色々あったが、皆よき民なのじゃ!
【イドラ】:へえ。ま、生活に困ってねーならいいや。
【リヴァイアサン】:む。何かあるのかの?
【イドラ】:いーや? そういやさ、ここの――

(施設案内を含む雑談。重要性が低いため省略)

【リヴァイアサン】:(笑い)イドラまたそんなことして! わっるいなぁ!
【イドラ】:ベル。
【リヴァイアサン】:ん?
【イドラ】:いつまでその真似続ける気だ?
【リヴァイアサン】:ずっと。
【イドラ】:お前がそこまでする意味は?
【リヴァイアサン】:レヴィは王の象徴だった。平民がそれに成り代わるなんて、したのだから。私には、責任がある。
【イドラ】:王制の国じゃねーぞぉ、ここは。
【リヴァイアサン】:王冠の重みはどこでも一緒!
【イドラ】:ふーん?
【リヴァイアサン】:レヴィは偉大な王だったから。
【イドラ】:(沈黙。肯定否定の意図は読めない)
【リヴァイアサン】:失ったのは、駄目だよ。
【イドラ】:(沈黙。肯定否定の意図は読めない)
【リヴァイアサン】:だから私が、継がないと。
【イドラ】:じゃあ俺の前ではベルな。
【リヴァイアサン】:(口籠る)……うん。
【イドラ】:せっかく時間貰ったんだ。俺が世界旅行してた時の話、聞いてくか?
【リヴァイアサン】:うん!

(雑談に移行。重要性が低い会話として削除)


日時:20■■/■/■■
対象:哲学人【イドラ】
事案aの後に実施された面会。■■研究補助が哲学人【リヴァイアサン】の隣につき、■■■研究員が室外から通信機により観察している。■■研究補助は■■■■■■■研究員の遠隔指示を受けている。
哲学人【リヴァイアサン】の精神状態安定目的で実施されている。

【リヴァイアサン】:(嗚咽)
【イドラ】:(■■研究補助、哲学人【リヴァイアサン】に目を向ける)お疲れ。やったな。
【リヴァイアサン】:(嗚咽)
【イドラ】:あー、まあ、俺から言えることとかあると思うか?
【リヴァイアサン】:(首を振る)
【イドラ】:ベル。俺がお前を責めると思うか?
【リヴァイアサン】:(数秒止まる。その後、頷く)
【イドラ】:俺の名前はなーんだ?
【リヴァイアサン】:(数秒の間)……イドラ。
【イドラ】:ん。じゃあ、責められるかもって思ってんのは真実か?
【リヴァイアサン】:悪いことしたら、怒るもん(嗚咽)……イドラだって。
【イドラ】:悪いことしてるって自覚あるんだな。上出来じゃねーか。
【リヴァイアサン】:でも、でも。私は王様になったんだもん。なったから、だから。
【イドラ】:王冠借りてるだけで王になれんのかねぇ?
【リヴァイアサン】:私、わ、わしは、リヴァイアサンに、なる。なるから。
【イドラ】:本気か?
【リヴァイアサン】:(頷く)……狼は、やめる。
【イドラ】:人は人に対して狼なんだろ?
【リヴァイアサン】:放棄、する。
【イドラ】:意味わかってんのか。
【リヴァイアサン】:うん。
【イドラ】:自分を作る要素を否定して、無事でいれると思うのか。
【リヴァイアサン】:無事、なくていい。無事じゃなくっても。
【イドラ】:死ぬ気か、ベル。
【リヴァイアサン】:うん。うん、死ぬ。
【イドラ】:そっかー。

(哲学人【イドラ】が■■研究補助に襲い掛かる。通信機が奪われる)
(警報が鳴り、制止用職員が室内に入る。哲学人【イドラ】の取り押さえを開始する)
(哲学人【イドラ】は通信機に向かい怒鳴る)

【イドラ】:お前は話通じるよなぁ! いいか、こいつの本性についてだ。国民どころじゃない、全ての人間そのものに根付いたものだ。生まれつき存在してると論じられたものだ。わかるな? ちょっと調べてこい。
【リヴァイアサン】:イドラ!

(哲学人【イドラ】は職員により取り押さえられる。哲学人【リヴァイアサン】は■■研究補助によって部屋の隅に移動)
(哲学人【イドラ】は苦悶の表情を浮かべる)

【イドラ】:(狼に似た唸り声)……この俺が、明言してやる! 人は人に対して狼! ベルは自然権だ! レヴィの衣装で力を譲渡されてるだけ! 俺の(不明)
【リヴァイアサン】:イドラだってレヴィの方がいいでしょ!

(哲学人【イドラ】が言葉を止める)

【リヴァイアサン】:やっぱり、そうなんだ。
【イドラ】:どっちも大切に決まってんだろ。

(哲学人【リヴァイアサン】が声を上げて泣く。哲学人【イドラ】は職員により退室)
面会終了

補遺:
面会直後、哲学人【イドラ】はストレス性の諸症状を発現。翌朝には緩解しています。
翌日から、哲学人【リヴァイアサン】と哲学人【イドラ】の関係は友好的なものに戻っています。愛称の使用は変わりません。談話室の利用ならびに対話が可能です。

当哲学人は【人は人に対して狼】であると考察されています。
しかしながら、本人の意思、哲学人【イドラ】の影響下での判断であること、哲学人【人は人に対して狼】が存在するのならば人間同士の争いが発生し続けてしまうこと、哲学人【リヴァイアサン】でなければ哲学人【人は人に対して狼】による闘争を止められないことから、この考察はこれ以上発展されません。
当哲学人は【リヴァイアサン】として扱われます。

日時:20■■/■/■■
対象:哲学人【イドラ】
談話室での対話記録より抜粋。哲学人【リヴァイアサン】が自身の持ち物を手放した唯一の例。

(最近協力した実験についての話題。機密性が高いため削除)
(哲学人【イドラ】が哲学人【リヴァイアサン】の頭を撫でる。哲学人【リヴァイアサン】は喜びを顕わにしている)

【イドラ】:ああそうだ、一個だけ。人差し指の指輪返してくれねぇ?
【リヴァイアサン】:え?
【イドラ】:それ、元は俺の。
【リヴァイアサン】:(困惑した様子で指輪を外す)……ごめんなさい。
【イドラ】:(笑って指輪を受け取る)ありがと。あいつずっと持ってたんだな。何十年前のだよ、これ。
【リヴァイアサン】:ずっと、持ってたのじゃ。大事って。
【イドラ】:へぇ。
【リヴァイアサン】:無くさないように、ずっと着けてて。
【イドラ】:ふーん。

(数秒の沈黙。同室を利用している他哲学人に声をかけられ、哲学人【イドラ】は返答する)

【リヴァイアサン】:それ。プレゼント、だった?
【イドラ】:さてなぁ。

(話題が切り替わったため、重要性が低いとして削除)

補遺:
この時回収された指輪は、その後発見されていません。





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